名劇SSブログ

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フレンズビスケット 第一話:親友




今回から新しく連載する一次創作です。百合成分が入ってますが、今回はまだ大丈夫です。AパートやBパートなどの区切りとかなく、また、一万文字以上あるので長く、原稿ほぼまんま載せてますので読みにくいと思いますが、よろしくお願い致します。

※名劇枠でやることもないだろうと思い、以降はこの時間帯で連載すると思います。








フレンズビスケット


  

 ずっと続くと思っていた関係、友情だと思っていたあの頃、それは次第に形を変え、その感情に気付いたときはもう…手遅れだった。

 私は宇佐美(うさみ) 涼子(りょうこ)。高校二年の秋…、そこからこの関係は始まった…。これは私と、その親友、昭乃(あきの)との物語…。


  第一章 親友


 冬も近付いてきた、ある秋の日のことでした。涼子は、この週末に開かれる、あるイベントに参加しようと、その準備を一生懸命にしていました。
 涼子は、その親友の昭乃に準備の手伝いを頼もうと、学校の昼休みにそのことを図書室で話します。
「ねえ昭乃、週末のイベントにさ…行くでしょう?」
「ええ…行くけど…。あんなに一生懸命にお願いされたらねぇ…、行くしかないじゃない?」
「えへへ~、それでね? ひとつお願いがあるんだけどぉ…いいかな?」
「なあに? あ…課題を手伝ってっていうのは無しよ?」
「むぅ…違うもん、イベントで着る衣装を作るの…手伝ってほしいの」
「衣装? あんたまだ作ってたの?」
「だってえ…お店の手伝いで忙しいんだもん…」
「しょうがないわねえ…いいわ、手伝ってあげる」
「やった♪ ありがとう昭乃」
「その代わり、課題手伝ってね?」
「えぇぇぇぇ…さっき自分でぇ、そういうのは無しって言ったじゃ~ん」
「それとこれとは別問題よ」
「同じですぅ~」
 涼子と昭乃は、他愛のないお喋りをしながらお昼休みを終え、それぞれのクラスへと帰っていきました。
 涼子の親友の猫田(ねこた) 昭乃。二人はいつも一緒に過ごしていましたが、悲しいことに別々のクラスでした。涼子は二年一組で、昭乃は二年四組と、教室は離れていましたが、休憩時間には互いに廊下でお喋りをし、お昼休みにはお弁当の後、図書室で会いお喋りをするなど、とても仲が良い親友同士でした。
 家は幸いなことに近く、通学路が途中で一緒になるため、いつも一緒に学校へと通っています。

 その日の授業を終え、涼子はその帰り道の途中、昭乃に「それじゃあ、また後でね?」と言うと、昭乃も「分かったわ」と言って、互いに小さく手を振り、それぞれの家へと帰っていきました。
 涼子の家は青果店を営んでおり、そのお店の名前は宇佐美商店。近所の人からは「うさちゃんの店」と呼ばれて親しまれています。
 その店内に、「ただいまー!」と、元気な声が響いてきました。その声に、お父さんは「はいよ、お帰り」と笑顔で言います。
 お父さんの名前は義男(よしお)といい、近所の奥さん達からはジュリー(沢田 研二)に似ていると評判でした。
「お父ちゃんただいま」と笑顔を見せる涼子。「今日の手伝いは…また今度でいいかなぁ…」と、涼子は義男に、困った様子で話します。
「また今度ってお前…」と、頭を抱える義男。そんな義男に、「まあいいじゃないかい?」と、話しかける声が聞こえました。
 その声に「お母ちゃん!」と笑顔を見せる涼子。
「また今度、イベントが終わってから手伝ってもらえばさ」
 涼子のお母さんが、笑顔で義男にそう話しました。お母さんの名前は春子(はるこ)。いつも元気で愛想も良く、「お春さん」と呼ばれて親しまれています。
「イベントが終わってからってなあ…お前…」
「いいじゃないのアンタ、この子が一生懸命にやってることなんだし。それに、その分の勉強も頑張ってるんだしさ?」
「う~ん…」と、頭を悩ませる義男。そんな義男の横で、涼子は「さすがお母ちゃん」と笑顔を見せると、「あとで昭乃も来るから、おやつ貰ってくね?」と言い、お店の棚にある駄菓子をいくつか取ると、それを義男に見せました。
「こらっ、涼子、お前また勝手に」と怒る義男。そんな義男に春子は右手を差し出します。
義男は「なんだよ…俺が払うのかよ」と言い、使い古されたガマ口を開けると、お金を払いました。
「まいどあり~」と微笑む春子。春子は涼子にウインクをすると、涼子もウインクをし、部屋へと帰っていきました。

 それから少しして、昭乃が涼子の家に遊びにやって来ました。涼子は昭乃を、二階にある自分の部屋へと通すと、早速その衣装作りの手伝いをお願いします。
「ここんトコが難しくてねぇ…、どうやって縫うのか分からないの」
 涼子はその衣装と、設定資料を昭乃に見せながら難しそうな表情を浮かべました。
 その衣装とは、涼子が大好きなアニメで、『ちょうじゅうぎが! フレンズビスケット』というタイトル。ウサギのラビちゃんと、猫のシャム子が互いに助け合いながら、その世界に蔓延する病気、イジワルンを退治するため大自然の王国『ワイルデン』を大冒険するお話しです。涼子は、そのアニメの主人公であるラビちゃんが大のお気に入りで、涼子はこのラビちゃんの衣装を一生懸命に作っていたのです。
 昭乃はその衣装を見て、「よく出来てるじゃない」と言いうと、「あぁでも…、ここはちょっと難しいかもねえ? 貸してみて?」と、その衣装を涼子から受け取ります。そして早速、衣装を縫い始めました。
 昭乃は手芸が大の得意で、ハンカチやマフラー、手袋やセーターを自分で作っていました。その甲斐もあってか、涼子の衣装作りに協力することになったのです。
「わぁ~っ、やっぱり昭乃は上手だなぁ…すご~い」
「ありがとう涼子。そのバッグの中に課題が入ってるから、お願いね?」
「…はぁ~い…」
 涼子は面倒そうに返事をすると、昭乃のハンドバッグから課題のプリントを取り出し、それを黙々とやり始めました。
「さすが涼子ね、スラスラと問題を解いていくわ」
「えへへ~ん、コスプレのためならドンとこいよ」
「ホント、趣味のために勉強してるようなものねぇ」
 昭乃は半分呆れながら、涼子に微笑みました。
 涼子は母親の春子から、「コスプレをやるなら、勉強もしっかりやりなさい」と言われており、涼子はそのために一生懸命に勉強をして、今では涼子のクラスの中で、一番優秀な成績を収めています。
 昭乃はどちらかと言うと勉強は苦手。メガネと長い髪がよく似合う、美人で頭が良さそうな雰囲気を持っていますが、成績はと言うと、全クラスで後ろの方という、残念な成績でした。
 そんな二人ですが、とても仲良しで、いつも一緒に過ごしていました。
「さあ出来たよ」と、涼子が昭乃にその課題を見せました。
 昭乃は涼子に「ありがとう」と笑顔を見せると、「こっちはまだかかりそう」と、申し訳なさそうに微笑みます。
「ううん、気にしないで? これバッグに入れとくね?」
「うん。そうだ、この…ラビちゃんの耳とか、リボンは出来てるの?」
「ううん、まだまだ全然…。衣装の方に手間取っちゃってねぇ…」
「そうなの? それじゃあ、私はこっちの衣装をやるから、涼子はそれを作っちゃって?」
「うん、分かった」
 涼子は昭乃に笑顔で返事をすると、その耳とリボンを作り始めました。
 おやつの駄菓子を頬張りながら作業を進め、いつしか辺りは夕暮れになっていました。
「あ…、もうこんな時間…。ねえ昭乃、続きはまた今度にしよう?」
「そうね、そうしましょうか。それじゃあ、また明日も来てあげるから…、課題の方、よろしくね?」
「え~…またやるの~?」
「ウソウソ、冗談よ。それじゃあ…、帰るわね?」
「うん、ありがとう。そうだ、余ったお菓子持ってっていいよ~」
「ありがとう」
 昭乃はまだ手が付けられていない、いくつかの駄菓子をバッグに入れると、玄関へと向かいます。それを見送る涼子。涼子は昭乃に小さく手を振ると、昭乃も小さく手を振り返し、家へと帰っていきました。
 そんな日が続いたある日、その学校の帰りに、涼子は昭乃に「今日は大丈夫?」と問いかけると、昭乃は「ええ、大丈夫」と笑顔を見せます。
「やった♪ ねえねえ、今日は金曜だし、どうせなら泊っていきなよ~…なんて、えへへっ」
「そうねえ…、それもいいかもね?」
「え? ホントに⁉」
「うん…、お父さんとお母さん…仕事で居ないんだ…」
「そうなんだ…、忙しいの?」
「ええ…、そうみたい」
「ふ~ん…」
 昭乃の両親は、カマド・ホールディングスという、レストランや冷凍食品を扱う総合食品メーカーで働いており、昭乃のお母さんが代表取締役社長で、お父さんが副社長をやっています。
 世間では大手の会社となっており、仕事も忙しく、その仕事で海外に行くことも珍しくはありませんでした。そんな忙しい両親なので、昭乃が家でひとりで居ることも珍しくはなかったのです。
「それじゃあ涼子、着替え持ってくるから、また後でね?」
 涼子と一緒に歩いて帰る昭乃。二人はいつも学校へ行くときに待ち合わせている場所まで来ると、互いに小さく手を振り、自分達の家へと帰っていきました。
 涼子は、歩いていく昭乃に振り返ると、その背中を少し見送り、自分の家へと帰っていきました。


 昭乃は自分の家に着くと、門を開け、玄関へと向かい、鍵を開けて家の中へと入っていきました。
 昭乃の家はお屋敷と言って良いぐらいの広さがあり、昭乃は両親が居ない間は、その家の家事をやっていました。しかし、昭乃ひとりでは掃除の手が行き届かず、所々に埃が積もっていたのです。昭乃はそれに構わず自室へ向かうと、着替えと裁縫道具を大きなボストンバッグへと突っ込み、玄関へと向かいました。
「あ…そうだ…、お菓子も持っていこうかな。涼子、きっと喜ぶわね」
 昭乃は玄関に荷物を置くと、台所へと行きました。その台所は居間と同じ部屋にあり、いわゆる、リビングキッチンと呼ばれるものでした。とても広く、明かりがついてないその空間にはひんやりとした冷たい空気が漂っています。昭乃はそんな空間に少し表情を曇らせると、台所の棚にしまってあるお菓子をどれにしようか選んでいました。
「えっと…、スナックは指が汚れるから…、そうね、チョコレート…は溶けるか…、えっと…」
 持って行くお菓子をどれにしようか迷う昭乃。昭乃は棚の奥に隠れていた『三ケ日ミカン味』と書かれたグミを取り出すと、その賞味期限を確認しました。
「いったい…いつのよコレ…。うん、まだ大丈夫ね」
 そのグミはまだいくつかあり、三つほど持って行きます。その途中、ふと、テーブルに何かが置いてあるのが見えました。
「なんだろう…手紙? それにお金まで…」
 昭乃はその手紙に目を通すと、またそこに置き、玄関へと向かいます。そして、先程手に取ったお菓子をバッグに詰めて、涼子の家へと出かけていきました。

 それと同じ頃、涼子は家の手伝いをしていました。制服のままエプロンをして、昭乃が家に来るまでの間、一生懸命にお店を手伝います。
「ありがとうございましたー!」と元気な声を上げる涼子。両親もそんな涼子の姿に頬を緩ませます。
 もうすぐ午後の三時になろうかというところで、昭乃がその店に顔を出しました。
「こんにちはー」と挨拶する昭乃。
「へいラッシャイ!」と、涼子は昭乃を出迎えると、「奥さん、今日はナスの良いのが入ってるよ~? それとも、イチゴがいいかな~? さあ、どれにする~? お安くしときますよ~?」
「そうねえ、それじゃあ…コロッケひとつ」
「え~、ウチにはないよ~…」
「そ~お? それじゃあ…アメリカンドッグ」
「ウチは八百屋さんだよっ」
「うっふふっ、あんたの冗談に付き合ってたら陽が暮れてしまうわ?」
「それもそうね? それじゃあ上がって?」
「うん、ごめんね? 手伝いの最中に」
「ううん、昭乃が来るまでは手伝うって約束だったから、平気♪」
「そうなの? それじゃあ、おじゃましま~す」
「はいは~い」
 涼子は両親に、部屋に行くと伝えると、エプロンを春子に預け、昭乃と一緒に自分の部屋へと向かいました。
 部屋に入ると、昭乃は涼子に「着替えないの?」と問いかけます。
「あ…、制服のまま手伝ってたんだっけ…。ゴメン、ちょっと着替えるね?」
「うん、その間に準備しておくわね?」
「うん」
 涼子はお風呂場の脱衣所へと向かうと、制服から、ウサギのプリントがされた、可愛らしいピンク色をした厚手の長袖に、可愛らしい白の長いスカートに着替え、部屋へと戻ります。
 その部屋では、昭乃がバッグから裁縫道具を取り出し、お菓子も取り出すと、涼子が戻ってくるのを待ちました。そして、その部屋に涼子が戻ってくると、その姿に昭乃は目を丸くしてしまいました。
「ちょっと涼子…乙女過ぎない?」
「そうかなぁ…、そんなに乙女かなぁ…」
「うん…。それに…そのウサギのプリント、どこでそういうの買ってくるのよ…」
「どこって…そこの商店街の服屋さんだけど。これねえ、最初見たときにね? これは私のために用意された服なんだと思ったわけよ。それで買ったの」
「そうなの? ホント…、ウサギ好きよね~」
「ううん、ラビちゃんが好きなの。ウサギだったらもうなんでもラビちゃんよ~」
「あはは…」
 昭乃は涼子に、呆れた様に微笑むと、「さあ、作業を始めてしまいましょう?」と話しました。涼子も「おー」と返事をすると、クローゼットから衣装を取り出し、それを昭乃に渡します。
「それじゃあ、おねげーします」
「うむ、心得た」
 昭乃はその衣装を受け取り、スイスイと作業を進めていきました。その作業に「お~」と感心する涼子。そんな涼子に昭乃は、「感心してないで、耳とか作んなくていいの?」と言います。
「あぁそうだった、えへへ~」
「もう、イベントは日曜日なのよ? しっかりしてよね?」
「へーい」
 涼子は昭乃に笑顔を見せると、自分の作業を進めました。
 昭乃が持ってきたお菓子を時々頬張り、衣装の製作を続けます。やがて夕暮れも近付き、涼子は昭乃に、「お母ちゃんに夕飯のお手伝い…断らないと」と言いました。
「え? でも…怒られない?」
「ううん、平気だと思う、だって昭乃が来て…あーっ!」
「な…なに? どうしたの?」
「お父ちゃんとお母ちゃんに、昭乃が泊まること話してない!」
「あぁ…あんたってばもう…。それじゃあ私もそのこと話してあげるから、一緒に行きましょう?」
「ふえ~ん、ありがとう昭乃~」
「もう…、泣くほどのことですか…」
 昭乃は涼子と一緒に、台所で夕飯の支度をしている春子のところへと向かうと、この家に泊まることを話しました。
「泊らせて頂くことになりました」と、頭を下げる昭乃。
「いえいえ、ウチで良かったらどうぞ、遠慮なく」と、春子も頭を下げます。それを見ていた涼子は、春子に「そういうわけだから、夕ご飯のお手伝いは無しってことで…」と、春子の表情を伺いました。
「まったくこの子は」と呆れる春子。春子は、申し訳なさそうにする昭乃に気付くと、「夕飯の支度だったら…心配しなくてもいいのよ?」と言いました。
 それを聞いた昭乃は、「でも…」と、申し訳なさそうな表情を見せます。
「いいのよ、三人も四人も、作る手間は一緒だから」と微笑む春子。昭乃は春子に、「すいません」と頭を下げます。
「いいのいいの、昭乃ちゃんは礼儀正しいねぇ、この子にも爪の垢を飲ませてやりたいわね?」
 春子は涼子に視線を向けると、涼子は、台所のテーブルに乗ったジャガイモの煮っころがしをつまみ食いしようとしていたのです。
涼子はしまったという表情を春子に見せると、申し訳なさそうに微笑みました。
 二人は部屋に戻り、作業を続けます。そんな時、涼子は昭乃に、「ラジオでも流そうか?」と問いかけました。
「そうねぇ…、ちょっと…しんとしてるわね」
「うん、それじゃ~あ…」
 涼子はラジオに手を伸ばすと、「そうだ」と呟き、「どうせならフレビス流そうよ」と話します。
「フレビス? CDとかあるの?」
「う~ん…主題歌のしかない…けど、そうじゃなくて、録画したの」
「録画? あんた…アニメ観ながら作業するわけ?」
「うんっ」
「う~ん…、出来るの? アニメの方に夢中にならない?」
「へーきへーき、いつも勉強しながら流してるから」
「へ…へぇ…そうなんだ…。器用ねぇ」
「へへ~ん、もっと褒めてもいいのよ?」
「呆れてるのよ」
「ひどいよっ」
 涼子は昭乃に頬を膨らませながら、CDケースに入ったDVDを取り出すと、それを、DVDも観れるゲーム機に入れ、再生しました。
 テレビから軽快な音楽と共にオープニングが流れ、それと共に作業をする涼子と昭乃。涼子は時折チラッとテレビの方を見ながら作業を進めていきます。その一方で、昭乃はテレビの方に釘付けとなり、作業が全く進んでいませんでした。
 それを見た涼子は「さっきから手が止まってるよ?」と、昭乃に話しかけます。
「えっ? あぁ…ごめん…」
「もう…昭乃が夢中になってるじゃん」
「うん…えへへ…。でもホント、面白いわよね、フレビス」
「でしょう? 観てて良かったでしょ?」
「うん、勧めてくれてありがとう」
「なんのなんの。そうだ、貸してあげようか?」
「ううん、ウチにもあるから。……ブルーレイが…」
「ブルーレイ! むむむ~…ここでファンの格差がぁ…」
「あのねえ…、ブルーレイレコーダーで録画したのよ。別に買ったわけではないわ?」
「そうなの? なんだ~…ビックリしちゃったよ~。ねえねえ、今度借りてもいいかな?」
「再生できるの? それで」
「さあ…分かんない」
「分かんないって…。じゃあ、今度ウチに来る?」
「モチロンさ~」
「ふふふっ、分かったわ。それじゃあ今度…、そうねえ、来週の土曜なんてどうかしら? あんたのことだからきっと、イベントも終わって、退屈してるだろうし」
「えへへへ…、来週の土曜日ね? ありがとう昭乃、流石は私の親友ねっ?」
「そんな…、大袈裟よ? それより、早く作業を進めましょうか」
「うんっ」
 涼子は昭乃に屈託のない笑顔を見せると、昭乃は涼子に微笑みました。そして、二人は春子に、夕ご飯だよと呼ばれるまで、その作業に夢中になっていたのです。
 夕食を食べに、台所へと向かう涼子と昭乃。その台所に入ると、美味しそうな香りが漂っていました。
 その日の夕食は、涼子が好きなジャガイモの煮っころがしと、焼いた塩サバ、それに油揚げのお味噌汁が付き、涼子はそのメニューに「塩サバ定食だー!」と大喜びします。
 春子はそんな涼子に、「昭乃ちゃんの前でこの子ったら…」と呆れ顔。お父さんの義男も呆れた表情で笑いました。
 そんな涼子達を、昭乃はどこか羨ましそうに見つめます。
「あら…昭乃ちゃん、やっぱり…こんな食事じゃ嫌だった?」
 春子は昭乃の様子を心配し、話しかけました。そんな春子に昭乃は「いえ…そんな」と首を振ると、「大勢で食事をするのは…久しぶりで…」と、少し恥ずかしそうに微笑みました。
「それじゃあ、いただきまーすっ!」という涼子の元気な声で、楽しい夕食の時間が始まりました。
 隣同士で食事をする涼子と昭乃。涼子は塩サバをほぐすと、それをご飯の上に乗せて豪快に頬張ります。一方、昭乃は丁寧に少しずつ口に運びました。
「もぐもぐもぐ…おいひーね?」と、涼子は昭乃に美味しい笑顔を見せます。
「ホント…、こんなに美味しい食事は久しぶり」と、昭乃も涼子に微笑みました。
 そんな二人の様子に、頬を緩ませる涼子の両親。やがて食事も終わり、昭乃は「ごちそうさまでした」と手を合わせると、食べ終わった食器を流し台へと持っていき、それを洗おうとします。
「昭乃ちゃん? そんなのいいよ~」と遠慮する春子。しかし昭乃は「いえ、これぐらいは…」と言い、食器を丁寧に洗いました。
「じゃ…じゃあ…私も…」
 そんな昭乃を見て、涼子も流し台へと食器を持って行きます。
「いつもやってくれると助かるんだけどな~」
「も…もうっ! お母ちゃんっ!」
 涼子のひと言で、台所は笑顔で溢れました。
 片付けを終えた二人は部屋へと戻り、涼子の両親がお風呂から上がるまで、ゆっくりと過ごしていました。
「ねえ昭乃? みんなで食べるのが久しぶりだって…言ってたけど…。そんなに…?」
「…うん…。お父さんとお母さん…、お仕事が忙しくて…、全然帰ってこないの…。だから…その…、あのとき以来…かな…」
「あのとき…って…、そんな…嘘でしょう?」
 涼子は昭乃の言葉に驚きました。昭乃が話した「あのとき以来」とは…。それは、昭乃が初めて涼子と出会った、高校一年生の頃の話しでした。
 昭乃がテスト勉強で困っていたとき、涼子が家でテスト勉強をしようと言い、そのとき、昭乃は涼子の家でお昼ご飯を食べたのでした。
 昭乃はそのとき以来、ずっとひとりで食事をしていたのです。
「…そんなのってないよ…」
 涼子は昭乃に、悲しそうな表情を見せました。
「仕方ないわよ…、お仕事なんだもん…」
「…うん…。ねえ、昭乃のお父さんとお母さんって…どんなお仕事してるの?」
「さあ…知らない…。電話で…その…、誰か会社の人と話してたのを聞いただけだから…」
「そう…、そのとき、なんて言ってたの?」
「えっと…、確か…ピザがなんとかで…、お寿司が…どうのって…。野菜の値段が…総菜が…とか、色々と言ってたわね?」
「ふ~ん…総菜…お寿司? スーパーの人?」
「ううん、会社だから…スーパーじゃないと思う」
「ふ~ん…。ねえ昭乃?」
「…うん?」
「いつでもウチに来ていいからね? みんなでご飯食べよ?」
「涼子…、うん…ありがとう…」
「えへへ~ん」
 涼子が昭乃に笑顔を見せると、昭乃も微笑みました。そんなとき、階段の方から「お風呂入っちゃってー」という春子の声が聞こえてきました。
 涼子はその声に「はーい‼」と大きな声で返事をすると、昭乃に「お先にどーぞ?」と、お風呂を勧めます。
「私が先でいいの?」
「うん、ウチは最後に入った人が片付けをやる決まりだから」
「そうなんだ…、なんだか…悪いわね?」
「ううん、気にしないで? 私はラビちゃんの大活躍を観てるから、ごゆっくりどうぞ?」
「もう…また観るの?」
「うん、何度でも観ますとも~」
 昭乃はそんな涼子に呆れながら微笑むと、着替えを持ってお風呂へと向かいました。その間、涼子は録画したフレンズビスケットを楽しみながら、昭乃が持ってきた三ケ日ミカン味のグミを頬張ります。
「このグミ本当に美味しいわねえ…、ウチも仕入れないかな…。そうだ、耳を作らないと…、リボンはたぶんこれでいいからぁ…」
 涼子はアニメを楽しみながら、ラビちゃんの耳を作っていました。そして、昭乃がお風呂から帰ってくると。涼子もお風呂に入り、後片付けを済ませて部屋に戻ります。
「あれ? 昭乃もフレビス観てたんだ?」
「うん、再生しっぱなしだったし」
「そうなんだ、ごめんごめん」
「ううん。それより涼子、このゲーム機、ブルーレイも再生できるわよ?」
「ホント⁉」
「ええ、だって…本体にそのマークが書いてある。この…ブルーレイのマークが書いてあるってことは、再生できるのよ」
「へ~え…知らなかった…」
「知らなかったって…、これあんたが買ったんじゃないの?」
「ううん、お父ちゃんが商店街の福引で当てたやつだもん」
「そうなんだ…。説明書は?」
「読まないよぉ…そんなの…」
「まあ…そうよね…。とにかく、ブルーレイが再生できるから、今度フレビス録画したの貸してあげるわ?」
「ホント~⁉ やったー! ありがとう昭乃!」
 涼子は昭乃に満面の笑顔を見せ、昭乃もその笑顔に微笑みを返しました。
 やがて、そのフレビスも観終わり、二人は夜中まで作業を続け、ようやく、衣装の試着が出来るまでになりました。昭乃は涼子に、「その衣装を試着してみてよ」と話します。
「うん、いいよ~。でも…もう遅いし、明日にしない?」
「そうねえ…、でも、今やっとかないと、もう明日しかないし、直せるところは全部チェックしないとね?」
「そうだね…って、もう土曜日⁉」
「そうよ、あんたなに言ってるの? ついさっきまで金曜だったじゃない…」
「え~…、イベントまでまだ時間があると思ってたのにぃ…」
「あんたねえ…。まあ…気持ちは分からなくはないけど…。そんなことより、早く着替えてきてよ」
「うん…、分かった…」
 涼子は衣装を持って、部屋を出ようとしました。ところが、もう真夜中過ぎ、廊下も階段もまっ暗です。お風呂場の脱衣所へ向かおうにも、怖くて行けませんでした。
 涼子は昭乃に振り向くと、「ここで着替えてもいい?」と問いかけます。
「う~ん…別にいいけど…」
「そう…良かった…」
「怖がりねぇ…」
「だってぇ…しょうがないじゃん…」
「まあいいわ? それじゃあ、着替えながらチェックしていきましょうか。その方が分かりやすいし」
「うん。でもちょっと恥ずかしいなぁ…」
「…そう言われると…こっちまで恥ずかしくなるじゃない…。さあさあ、着替えて着替えて?」
「は~い…」
 涼子は、パジャマからラビちゃんの衣装に着替え始めました。そのラビちゃんの衣装とは、ふわふわとした、セーターみたいな服に短いスカート。そして、白い二―ソックスをガーターベルトで留めるという、可愛さの中にも大人っぽさがある衣装でした。
 昭乃は、その衣装を着た涼子に少し頬を染めると、小さく首を横に振り、その衣装の具合を見ました。
「どう涼子、どこかきついところとかない?」
「ううん…大丈夫。あぁ…でも…、ちょっと大き過ぎるかも」
「そう、それじゃあ…ちょっとごめんね?」
 昭乃は涼子の腰に腕を回し、「この辺ね?」と問いかけ、涼子は「うん…」と頷きました。
「ちょっと余裕を持たせたから…、ポーズ取るとき大丈夫?」
「う~ん…大丈夫だと思う。もうちょっと腰のところをキュッてしても大丈夫だよ?」
「そう? それじゃあ…マチバリで目印するから、動かないでね?」
 昭乃は、マチバリで服に目印を付けると、「ほかは大丈夫?」と問いかけます。
「うん、大丈夫。ありがとう昭乃」
「それじゃあ…、気を付けて脱いでね、針が刺さるといけないから」
「うん」
 涼子はその衣装をゆっくりと脱ぐと、それを昭乃に渡します。
「ほかは大丈夫?」と昭乃。
「うん、大丈夫。これで耳とリボンを付ければカンペキだねっ」
「ええ、あとは明日にしましょう? もうだいぶ遅いし…」
「うん…、私もホッとしたら…、なんだか眠くなってきちゃったよ…」
「そうねぇ…」
 昭乃が部屋の置時計を確認すると、もう時間は真夜中の二時を回っていました。
 衣装を丁寧に畳むと、明かりを消して、二人は一緒に、布団の中に潜り込みます。
「ごめんね昭乃…、部屋が狭いから…布団を二枚も敷けないんだぁ…」
「いいのよ別に、気にしなくても…。お休み涼子…って、もう寝てるのね…」
 昭乃は涼子の、スヤスヤと眠る寝顔に微笑むと、自分も瞳を閉じ、眠りへと就きました。






続く

 一次創作置き場

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