名劇SSブログ

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フレンズビスケット 第二章:あたたかい食事





はい、今回もやっていきます。久々の一次創作ですけども、もう一週で二話載せても良いかな…という、そんな感じでパルメちゃんの原稿も出来つつありますが、この文字数でそれはどうなんだろうと思うわけで…。

前回では記事のタイトルと記事内のタイトルとで間違いがあったので(話と章)、今回から統一させました。それから、「続く」という表記は原稿にはなく、ブログ用に付け足しました。(前回のもそうですけども)

それではどうぞ。









  第二章 あたたかい食事


 次の日の朝、涼子はなんとなく目を覚ますと、おもむろに時間を確認し、布団からそっと抜け出しました。昭乃はまだぐっすりと眠っており、起きる気配が全くありません。
 涼子はヘッドホンをテレビに繋げ、テレビをつけると、フレンズビスケットのオープニングが流れていました。
「よかったぁ…間に合った…」
 涼子はホッと胸を撫で下ろし、そのオープニングを口パクで口ずさんでいます。そんなとき、涼子の肩を、つんつんと誰かがつつきました。涼子は少しビクッとすると、後ろを振り返ってみます。
「な…なんだ、昭乃だったの…ビックリした~。おはよう…、ごめんね、起こしちゃった?」
「おはよう。ううん、涼子が布団から抜け出したとき、なんとなく起きてた…」
「そうなんだ…」
「それより…録画してるのに観るの?」
「うん、私はラビちゃんを愛しちゃってるからね、観ないとラビちゃんに悪いよ」
「ああ…そう…」
「あ…、本編が始まるよ? 昭乃もほらほら、起きて一緒に観ようよ」
「うん…」
 涼子は、起きてきた昭乃に上着を羽織らせてあげると、音声を小さくしてヘッドホンを外すと、一緒にフレンズビスケットを楽しみました。辺りはまだ暗く、まだ誰も起きていません。時間はまだ、朝の五時を少し過ぎたところでした。
 二人はその放送を見終わると、大きなあくびをし、もう一度、どちらともなく布団に潜り込みました。
「ねえ涼子…、毎週こんなことしてるの?」
「うん…、だって観ないと…」
「そう…って、寝てるか…」
 昭乃は、隣で眠る涼子に小さく溜め息を吐くと、「私も二度寝しよう…」と呟き、目を閉じました。
 そのすぐあと、「朝ごはんだよ? 起きて?」という声に目を覚ます昭乃。昭乃は大きく伸びをすると、その声の主を見上げました。
「おはよう…涼子…」
「おはよう昭乃。もうすぐ朝ごはんだよ?」
「そう…、ありがとう」
 昭乃は布団から起き上がると、涼子に、「もう起きてたんだ?」と問いかけます。
「うん、朝の手伝いがあるからね~」
「へぇ…、何時ごろ起きたの?」
「う~んとねえ、七時前ぐらいかな?」
「え…、二度寝してすぐじゃない…。あれ? いま何時なの?」
「うん、えっと…八時ちょっと過ぎだね」
「そう…」
「じゃあ台所で待ってるから、着替えちゃってね?」
「うん…」
 昭乃は部屋から出ていく涼子を見送ると、パジャマを脱ぎ、服に着替えると布団を畳みました。そして、台所へと下りていくと、もう朝ごはんの準備が整っていたのです。
「おはようございます、おば様、おじ様」
 昭乃は丁寧に挨拶をすると、春子も義男も、昭乃に「おはよう」と言って、笑顔を見せました。
「さあさあ、早く食べよう?」と涼子。涼子は昭乃に「こっちこっち」と席に迎えると、「今日は私が作った、自慢の卵焼きと、お味噌汁だよ? 美味しいから食べてみて?」
 涼子はそう言うと、昭乃のお茶碗にご飯をよそってあげました。
「ありがとう涼子、あんたが作ったの?」
「そうだよ? ご飯も私が炊いたの」
「へぇ…。それじゃあ、いただきます」
 昭乃のその声に、涼子も「いただきまーす!」と手を合わせ、朝ごはんの時間が始まりました。
 昭乃はお味噌汁に口を付けると、「あら美味しい」と、目を丸くします。
「でしょう? 卵焼きもどーぞ? 美味しんだから~」
「はむっ…むぐむぐ……。ホントだ…美味しい!」
「でしょでしょ? 私お料理だけは得意なんだ~」
「へ~え、大したもんねぇ」
 感心する昭乃の横で、義男が「これで嫁の貰い手があればな~、この店も安泰なんだがよ」と、チラリと涼子に視線を向け、お味噌汁をずず~っとすすりました。
 そんな義男に、春子は「あんた…、まだ高校生じゃないか…早いよ…。それに昭乃ちゃんの前で…」と、困ったように微笑みました。
「お父ちゃんってばもう…、その内いい人見つけるからいいもん」
 頬を膨らませる涼子に、クスクスと笑う昭乃。昭乃はお味噌汁に視線を落とすと、寂しそうに微笑みました。
 やがて朝ごはんも終わり、涼子は後片付けの手伝いを、昭乃は部屋に戻って荷物を整理していました。
 その手伝いを終えた涼子が部屋に戻ると、昭乃に「少しゆっくりしようか?」と話します。
「そうねえ…、まだ慌てるような時間じゃないし、それにもう仕上げだけだしね?」
「うん、それにね、お父ちゃんに昭乃んちに行くって話したら、軽トラで送ってくれるって?」
「ホント? 一度乗ってみたかったんだ~。横に三人乗れるんでしょう?」
「うん。でも真ん中は少し窮屈だけどね?」
「そうなの? でも楽しみ。お野菜のキャラクターが描いてあって、トマトちゃんだっけ? あれ結構気に入ってるのよ?」
「そうなの⁉ あれ実は私がデザインしたんだ~」
「ホントに⁉」
「うん、お母ちゃんに頼まれてね。私が描いたイラストを業者さんにお願いして、シールにしてもらったの」
「そうなんだ~、凄いじゃない涼子」
「えへへへ~、それほどでもぉ…。それよりさぁ、もう明日なんだね、イベント」
「そうねぇ…、なんだかあっという間だったけど、始まってしまえばもっと早いわ? だから悔いのないように楽しみましょう?」
「うんっ、思いっきり楽しもうね、昭乃。でもさ…無理やり誘ったみたいで…なんだか悪いねぇ…?」
「ううん、私も…色々と手伝う内に、なんだか楽しみになってきちゃったから、大丈夫よ」
「そうなの? それじゃあ…次もお願いね?」
「じゃあ…課題もお願いね?」
「ええええ~…」
 昭乃の言葉に、涼子は嫌そうな表情を見せると、昭乃はそんな涼子にクスクスと微笑みました。
「うっふふっ、そんな嫌そうな顔しないでよ…。そうだ、どうせだったらウチに泊まってく?」
「ええーっ! いいの⁉」
「うん、どうせ…お父さんもお母さんも居ないし…」
「そう? 帰ってきてるかもしれないじゃん」
「…ダイニングのテーブルにお金が置いてあったの…、そういうとき…絶対に帰ってこないから…」
「そう…なんだ…」
「そ…それにね? 衣装の仕上げが遅くまで掛かっちゃうかもしれないし…、この辺暗いから…夜中に帰るのは危ないよ?」
「うん…、それもそうね…。それじゃあ…お泊りの準備しないと…」
 涼子はバッグに着替えを入れ、「あとは~…」と首を傾げていると、「お父ちゃんの準備できたから、下りといで」と、二人を呼ぶ春子の声が聞こえました。
 涼子も昭乃も、荷物を持って一階へと下り、玄関から外に出ると、そこには軽トラが止まっていました。その軽トラの窓から義男が涼子に手を振り、「さあ、早く乗りな?」と言いました。
「はーい。ねえお母ちゃん、昭乃んちに今日お泊りするね?」
 涼子は玄関先で見送る春子に、そう話しました。
「あらそうなの? 昭乃ちゃん、ご迷惑じゃなあい?」
「いえ、迷惑だなんてそんな。むしろ…嬉しいです…」
「そうなの? それじゃあ、娘をよろしくお願いしますね?」
「はい、おば様」
「ねえねえ昭乃、真ん中に座る?」
 涼子は軽トラに乗っている義男に、昭乃の家に泊まることを告げると、昭乃に振り向いて手招きしました。
「うん。一度でいいから真ん中から見る景色を見てみたかったの」
「そんなに変わんないと思うけどなぁ…、それに狭いよ?」
「いいの、だって滅多に乗れないんだもの」
「そんなもんかなぁ…」
 涼子は首を傾げながら、荷物を荷台に乗せると、昭乃を先に乗せ、涼子も乗り込みます。
 真ん中に座った昭乃は、義男に「シートベルトは…」と首を傾げると、義男は「ああ、これこれ、こいつを腰んところに回すんだ」と、昭乃にそのベルトを手渡しました。
「ありがとうございます」
 涼子は、昭乃がシートベルトのバックル(差し込むと、カチリと鳴る部分)を手探りで探していると、「ここだよ?」と、バックルに差し込んであげました。
「ありがとう涼子」
「えへへ。それじゃあお父ちゃん、しゅっぱーつ!」
「はいよっ!」
 義男が軽トラを走らせると、昭乃はそこから眺める新鮮な景色に、瞳を輝かせました。
 それから少しして、昭乃の家の前に到着しました。軽トラから荷物を下し、「それじゃあ昭乃ちゃん、娘をよろしく」と、窓から手を振る義男を見送ると、その家の中に入っていきました。
 門の鍵を開けると、「やっぱり…」と呟く昭乃。昭乃は涼子に「さあどうぞ?」と、その敷地内に招き入れると、玄関のドアを開けました。
 静かに重い音を立て、閉まるドア。玄関から僅かに差し込む明かりが、奥へと続く廊下の暗さを強調していました。
「ごめんね涼子、少し埃っぽいかも…」
「ううん、気にしないで? それにしても…暗いねぇ…」
「うん…、カーテン閉めっぱなしだから…」
「そう…なの…」
 昭乃は廊下の明かりをつけると、涼子をダイニングまで案内しました。昭乃はそのテーブルを見ると、相変わらずそこにお金が置いてあり、昭乃はそのお金と、置手紙を手に取り、それを読みます。
「会社に泊まりこむので、お金をここに置いておきます…、母より…」
 その手紙を読む昭乃を、肩越しから覗き込む涼子。そんな涼子に昭乃は寂しそうに微笑むと、「ほらね?」と、手紙を見せました。
「そうなんだ…、忙しいんだね…」
「うん…。さあ、お部屋に行きましょう?」
 昭乃は涼子を、二階の自室へと迎えると、荷物を解き、涼子に「洗濯してきちゃうね?」と言って、一階にあるお風呂場の脱衣所に向かいました。
 昭乃は洗濯機に洗濯物を放り込むと、スイッチを押し、深く溜め息を吐いて、音を立てながら洗う洗濯機を見下ろしました。


 昭乃が部屋に戻ると、涼子が床にぺたんと座りながら、衣装とにらめっこをしていました。昭乃はその隣に、同じようにぺたんと座ると涼子に話しかけます。
「どうしたの?」
「うん? う~ん…、もふもふ感が…足らないかなぁ…と思って…」
「もふもふ…?」
「うん…、設定書だとさ…、このお胸のところ、もうちょっとこう…もふっとしてんのよねえ…」
 涼子の言葉に、昭乃は「それは…」と言葉を詰まらせると、その設定書と、涼子の胸を見比べて、「仕方ないんじゃないかなぁ…」と、弱々しく言葉を続けまた。
「むぅ…、それってどういう意味よっ」
「いやだって…、そういうキャラクターのデザインなんだし…。それに、ラビちゃんの年頃で…あの胸は成長し過ぎだと思う…」
「う~ん……詰めものした方がいいかしら…」
「いや…それはやめときなさい?」
「…はい…」
 涼子はしゅんとしながら衣装を床に置くと、「そうだ…」と言って、昭乃に顔を向けました。
「歯ブラシとか持ってきてないよ?」
「歯ブラシ? あぁ…それだったら、使ってないのあると思うから、よかったらあげるわよ?」
「ホント? ありがとう昭乃。それじゃあ、衣装の仕上げをパパッとやっちゃいますか~」
「そうね、そうしましょうか」
 涼子は昭乃に教えてもらいながら、衣装を仕上げていきます。時折、設定資料を見て、ここはどうかな? こっちはどうかな? と首を傾げながら、作業を進めていきました。
 そして、お昼前にその衣装は完成し、涼子は昭乃に満面の笑顔を見せながら、その衣装を試着しました。
「ちょっと涼子ぉ…、着替えるなら空いてる部屋あるから…」
「ごめんごめん。でもホラ、見て? 可愛いでしょ?」
 涼子は着替えを終えると、昭乃にその姿を見せました。
「ラビちゃんだよっ♪」とポーズをとる涼子。昭乃はそんな涼子の姿に、思わず「可愛い…」と呟きました。
「やったー! 可愛いを頂きました! うっふふっ、嬉しいなぁ…、ありがとう昭乃っ♪」
「え…うん…。でも良かったじゃない、初めてのイベントで、納得できる衣装が出来て…」
「うんっ、これも昭乃が協力してくれたおかげだよ~、ありがとう」
「もう…、何回もお礼を言わないでよ…恥ずかしいじゃない…」
「えへへ~」
「ほんとにもう…涼子ったら…。さあ、汚さないうちに脱いじゃったら? 汚したら大変よ?」
「うん」
「隣の部屋を使っていいから、着替えたらお昼にしましょう?」
「はーい」
 涼子は昭乃に笑顔で返事をすると、服を持ってその部屋に行きました。一方、昭乃は、台所へと向かい、冷蔵庫の中を確かめています。
「…見事になんにも無いわね…」
 昭乃は冷蔵庫を閉め、溜め息を吐きました。「買い物に行かないと…」と呟くと、洗濯物のことを思い出し、脱衣所へと向かいます。
「これぐらいだったら…部屋干しでもいいわね。天気が良いけど…庭に干しておくと…忘れちゃうし…」
 昭乃は洗濯物を持って、誰も使っていない部屋へと向かうと、そこに洗濯物を干して、扇風機の風を当てました。昭乃は「さすがに今の時期は寒いわね…」と呟くと、部屋をそそくさと出て、自室へと向かいました。

「着替え終わったのね?」と、その部屋で衣装を丁寧に畳んでいる涼子に話しかけます。
「うん。それよりお腹減った~、ごはんにしよう?」
「うん…それなんだけど…、買い物してないから、冷蔵庫の中なんにも無くて…」
「そうなの? それじゃあ…お買い物に行かないとね?」
「ええ、コンビニ行きましょう? 置いてってくれたお金もあるし」
「う~ん…そうねえ…、コンビニって商店街のやつでしょう?」
「そうだけど…」
「じゃあさ、スーパーに行ってお買い物しようよ。そこで材料買ってさ、二人でごはん作ろう?」
「え…で…でも…、私…お料理したことないし…」
「大丈夫だよ、私が作ってあげる。そうだ、お野菜はウチで買おうね?」
「…あはは…ちゃっかりしてるわね。それじゃあ、行きましょうか」
「おー」
 涼子は昭乃と一緒に、まずは商店街のスーパーへと向かいました。昭乃の家のすぐ近くに商店街の出入り口があり、そこから奥の方へと入っていくとスーパーがあります。
 そのスーパーから少し歩くと、商店街の別の出入り口へと出ます。そこから更に少し歩いていくと、そこに涼子の家があります。そう、二人の家は商店街の端と端にあったのです。
 スーパーで買い物をする涼子と昭乃。涼子は昭乃に、「どんなのが食べたい?」と問いかけます。
「そうねえ…なんでもいいわよ?」
「う~ん…そっかぁ…、なんでも…ねえ…」
 涼子は昭乃の言葉に首を傾げると、値引きされた鶏の挽き肉と、特価品コーナーに置いてあったマッシュポテトの素をカゴに入れ、それをレジへと持って行きます。
「それしか買わないの?」と首を傾げる昭乃。
「うん、そんな持ち合わせてないから…」と、涼子は昭乃に、困った様に微笑みました。
「それだったら別にいいのに…。お金だったらこっちの使っていいから」
 昭乃は財布から、そのお金を取り出しました。それはダイニングのテーブルに置いてあったお金で、昭乃はそれを涼子に渡します。
「ありがとう昭乃、悪いわねぇ…って、あれれ? ゼロがいっこ多いよ?」
「うん?」
 昭乃は、涼子が差し出したそのお金をきょとんと見ています。
「…いっこ多いって…普通の一万円札じゃない…。何かおかしいの?」
「いやいやいや…、ごはん用のお小遣いに一万円はないでしょう…。間違えたんじゃない? イベントで使うお金を持ってきちゃったとか…」
「え? うっふふっ。イベントで使うのは家に置いてあるから、それはごはん用のお小遣いよ?」
「そ…そんな…。ウチなんて五百円玉さんなのに…、昭乃んちじゃ福沢さんを渡してくれるのね…ぐす…」
「ちょっと…涼子ったら…、ウチはいつもこんな感じよ? イベントで使うお小遣いも…それで余ったのを貯金したの」
「そう…なの? それじゃあ…ずっと帰ってきてないんだ…」
「うん…そうなるわね…。お金を置きに…ウチに寄ってく…って、そんな感じかしらね…」
「そう…。それじゃあ…、お夕飯の分も買ってこうか」
「ええ、そうしましょうか」
 涼子は昭乃から受け取ったお金を財布にしまうと、売り場へと戻っていきました。
 やがて、そのスーパーで買い物を終え、今度は涼子の家へと向かいます。その家の前にひょこっと顔を出す涼子と昭乃。その涼子の姿に、店で仕事をしていた義男は、「あれ? 帰ってきたのかい?」と目を丸くしました。
「えへへ~。でも帰ってきたわけじゃないんだ~、お昼ご飯の材料を買いにきたの」
「そうか、それで何が欲しいんだ?」
「えっとねえ…タマネギとキャベツが欲しいんだけど…、安くしてくれる?」
「バカ言ってんじゃないよ~、駄菓子をいつも買ってやってるじゃねーか。定価で買え、定価で」
「あ~そう、ふ~ん。ねえ昭乃、さっきのスーパーに戻ってさ、タマネギとキャベツ買ってこよ? あっちのは確か…タマネギが三割引きだったもんね?」
「え? ええ…確かそうだったわね…」
「それじゃあ行こうか昭乃」と、昭乃を連れて歩き出す涼子。そんな涼子の背中に「ちょっと待った!」と、義男の声が聞こえてきました。
「さ…三割引きだって? じゃあウチは…四割引きでどうだ?」
「袋にタマネギが五個入って三割引きよ? ウチは三つだったわね?」
「えぇ~い…それじゃあ六つだ! 六つで四割引きだ! 持ってけドロボウ!」
 義男はタマネギを袋に詰めると、それを涼子に渡しました。
「まったく…お前にはかなわねーな…。で? キャベツも安くしろってんじゃねーよな?」
「半分しかいらないから~…半額にして?」
「…あーもう…、まったくも~…最近の若いやつは…っとに…」
 義男はぶつくさと文句を言いながらも、キャベツを半分に切り、それを新聞紙で包むと涼子に渡しました
「えへへ~、ありがとうお父ちゃん。そうだ、駄菓子もおまけしてよ」
「調子に乗るんじゃない。全く…商売あがったりだ…。で? どれが欲しいんだ?」
「えっとねえ、ベビースターのチキン味」

 涼子は昭乃の家に帰る途中、買い物袋の中を見ながらニヤニヤとしていました。
「えへへ~、これで美味しいもん作ってあげるね?」と、昭乃に微笑む涼子。
「ええ、ありがとう涼子。でも…さ…」
「うん? どうしたの?」
「え…あぁ…うん、本当に駄菓子が好きなのね?」
「うん、大好き! でもね? このベビースターは別のことに使うんだ~」
「別のこと?」
「うんっ、それは帰ってのお楽しみ~」
 涼子は昭乃に満面の笑顔を見せると、昭乃は「それじゃあ、楽しみにしておくわね?」と、微笑みを返しました。
 やがて、昭乃の家へと着くと、その台所でお昼ご飯の準備をします。テキパキと準備を進める涼子を、昭乃は感心しながら眺めていました。
 涼子は、「まずは下ごしらえ~」と、タマネギをひとつ取り出すと、それをみじん切りにしました。そして、バターを溶かしたフライパンで、キツネ色になるまで炒めます。
 次に涼子は、鶏の挽き肉をボウルに入れ、炒めたタマネギをその中に入れて、玉子を落とし、よく混ぜていきました。
「凄いわねえ…涼子…」
「うん? なにが?」
「だって…、私そんな風に…出来ないから…」
「あぁ…、いつもお母ちゃんを手伝ってるからね」
「そう…。それじゃあ私…お米出してくるね?」
「え? ああ昭乃? お米…は…行っちゃった…」
 昭乃は涼子の言葉を待たず、台所を後にすると、階段下にある物置へと向かいました。その引き戸を開け、「確か…」と、薄暗い物置の中を手探りで探していきます。しかし…
「しまった…、ずっとコンビニのお弁当だったから…、お米…買ってないんだ…」
 昭乃は少し、しょんぼりとしながら台所へと向かうと、そこにはもう既に美味しそうな香りが漂っていました。
「あ…あの…涼子? お米…なんだけど…」
「あ、昭乃? お米は必要ないよ?」
「へ?」
「えへへ~ん、これを使うから、お米はいらないの」
 涼子は、買い物袋からマッシュポテトの素と、ベビースターを取り出し、それを昭乃に見せました。
 昭乃はそれをきょとんと見ると、「それを…どうするの?」と問いかけます。
「これはねえ…、えへへ~。答えが知りたかったら~…お手伝いして?」
 涼子は昭乃にそう微笑むと、昭乃は「ええ…」と、半信半疑で手伝いを始めました。
 昭乃がやかんでお湯を沸かすと、涼子はそのお湯をマッシュポテトの素にかけて、塩コショウをし、マッシュポテトを作ります。そして、ベビースターを少し細かく砕き、平たくまとめたマッシュポテトを溶いた玉子にくぐらせて、砕いたベビースターをまぶすと、それを油で揚げました。
 昭乃はその光景に少し驚き、「お菓子を使ったお料理なんて…」と、呟くようにして驚きます。
「へへ~ん、私が考えたの。でもね? ネットで調べたら、色んな人がやっててねぇ、やっぱみんな、やること一緒か~なんて思っちゃったよ~」
「へ~え、そうなんだ。でも美味しそうね?」
「うん。これね、時間があるときによく作るんだ~。名付けて、涼子ちゃん特製ベビースターコロッケだよ。ソースなしでも食べられるからね~」
 涼子はそう話しながら、油の中でカラカラと音を立てるそのコロッケの様子を、じっと見ていました。
「もうそろそろかな~?」
 そのコロッケをさい箸で鍋から取り出すと、余分な油を切るために、網の上に乗せました。そして、同じものを四つ揚げると、それを、千切りにしたキャベツと一緒にお皿の上に盛りつけました。
 昭乃はそれを見て、「おいしそう!」と笑顔を見せます。
「でしょう?」
「それでさ、さっきの…混ぜてた挽き肉は?」
「あぁ、あれね~。あれはね、冷蔵庫で寝かせてるの。夕ご飯のお楽しみ~」
「そうなんだ…。あ…でも…お米…」
「だ~いじょうぶ。冷蔵庫見たら食パンがあったからさ、それでサンドイッチにしようかな~って」
「サンドイッチ?」
「そう、名付けて! 親子サンド~」
「親子サンド…? へ~、そんなサンドイッチがあるんだね~?」
「いま考えたの」
「えぇぇぇ…」
「さあさあ、テーブルに持っていこ?」
 涼子はお皿をテーブルに運ぶと、昭乃はお盆に飲み物を載せ、同じようにテーブルへと運びました。
「ねえ涼子? これだけじゃ…足りなくない?」
「ふふ~ん、見た目に反して、これだけでもけっこう、お腹いっぱいになるんだな~」
「そう…なの?」
「うん。さあさあ、食べよ食べよ?」
「うん…」
 二人は「いただきまーす」と手を合わせると、そのベビースターコロッケを口に頬張りました。
 ザクリ、カリカリ、と、音を立てるコロッケ。昭乃はそのコロッケの美味しさに目を丸くし、涼子に満面の笑顔を見せました。
「どお? おいしいでしょ?」と涼子。
「うん! すっごくおいしい! こんなの今まで食べたことないわ!」
「でしょでしょ? これがもうおいしくてね~、ついつい食べ過ぎちゃうの」
「そうなんだぁ。でもさ? マッシュポテトがコロッケになるなんてねぇ…知らなかった」
「そうなの? 昭乃んちじゃこういうの作ってくれないの?」
「…うん…、お母さん…ご飯の支度とか…しないから…」
「あ…ごめん…、そうだったね…、忙しいもんね…ごめん…」
「いいの、気にしないで? お母さん…元々そんなにお料理が得意じゃないし…」
「そう…なんだ…。じゃあ…いつもご飯とかどうしてるの…?」
「…いつも…お金置いてってくれる…から…」
「あぁ…そうだっけ…」
「で…でも…、たまに自分で作るのよ? ご飯炊いたりとか…炊飯器が自動でやってくれるし…、スーパーのお惣菜とかで色々と…」
「そう……」
 涼子は箸を置くと、悲しそうな表情で俯いてしまいました。昭乃はそんな涼子を見て、同じく箸を置くと、「大丈夫だから…」と微笑みました。
「私…お料理とか覚えようと思う…。ねえ涼子、教えて?」
「え…?」
「お料理、教えてよ。その代わり、私が涼子の衣装作りを手伝う。ね?」
「昭乃…、うんっ。私が教えるからにはビシビシいくからね~、覚悟しといてね?」
「え~…それはヤだなぁ…」
 昭乃は涼子の言葉にクスクスと笑うと、涼子も微笑み、食事を進めました。
 やがてお昼も終わり、後片付けを済ませると昭乃の部屋へと向かいました。
「ねえ昭乃、これからどうしよっか…」
「そうねえ…、フレビス…観る?」
「うん! 観たい観たい! ブルーレイってどんなの?」
「う~ん…DVDと見た目は変わらないよ? 画質が…違うのなかぁ…?」
「そうなの?」
「まあ観てみれば分かるよ。じゃあ居間に行こう? そこにプレイヤーあるから」
「うん。ブルーレイか~、楽しみだな~」
「内容は変わんないよ?」
「分かってるよ~、それでも楽しみなの~っ」
 涼子は昭乃の背中を「早く早くっ」と押しながら、その居間へと向かいました。
 居間へと着くと、昭乃はプレイヤーにブルーレイのディスクを入れ、再生しました。
「お~! 大画面だね~!」と驚く涼子。自分の背丈ぐらいのテレビ画面に、ラビちゃんとシャム子が映し出され、涼子はその画面に夢中になりました。
「凄いね~! 映像も凄い綺麗! これがブルーレイなんだね⁉」
「ええ、テレビで流れてるのそのまんまな感じでしょう?」
「うん! 凄いなぁ~、私んちのテレビじゃこんな綺麗に映らないよ~…」
「そう……それじゃあさ…、いつでも…ウチに来て…観てもいいのよ…?」
「ホント⁉ それじゃあイベント終わってから行ってもいい?」
「いや…それは……帰ろうよ…」
「えええええっ⁉」
 そんなやり取りをしつつ、次第にアニメに夢中になる二人。ラビちゃんの一喜一憂に、同じように反応する涼子。シャム子の仕草や、表情に見入る昭乃。二人はそれぞれ好きなキャラで盛り上がり、ストーリーも一緒になって楽しんでいました。
 やがて、そんな楽しい時間も終わりを迎え、涼子は、「最初から今朝の分まで…いっきに観ちゃったね…」と、深く溜め息を吐きました。
 昭乃は、腕時計を確認すると、「もう真夜中よ…」と、涼子と同じように、深く溜め息を吐きました。
「なんじ~?」と、昭乃に問いかける涼子。
「…十二時過ぎ…」と、昭乃はウンザリとした表情を見せました。
「もうそんな時間なの⁉ 晩ごはん食べてないのに~!」
「観ながらずっとお菓子食べてたからね…」
「そっかぁ…通りでお腹が空かないはずだよぉ…。じゃあ…親子サンドは明日の朝ごはんにしよっか…。もう寝ないとね…」
「そうよ…もう寝ないと…、朝早いから…」
「在来線で行くんだよね?」
「そう、始発でね」
 涼子は昭乃の言葉に「やばいやばい」と言うと、「どうする? どこで寝るの?」と問いかけます。昭乃はプレイヤーからディスクを取り出すと、「客間が…ああでも、私の部屋で…って、その前にお風呂入らないと」と、涼子に顔を向けました。
「お風呂! 一緒に入る?」
「何を言ってるのよ…。半分寝てない?」
「寝てないよ~…その方が早いかな~って…」
「まあでもそうよね…、そうじゃなくて、準備するから、入っちゃって?」
「は~い」
 昭乃は涼子をお風呂場へと案内すると、「もう時間無いし…シャワーでいいよね?」と問いかけます。
「うん、別にいいけど…、もうそれだったら一緒に入っちゃおうよ。その方が早いよ?」
「えぇぇ~…でも…、恥ずかしい…」
「それは…そうだけどさ…。でも待ってるよりはいいよ? 寝る時間のことも考えるとさぁ…」
「う~ん…、分かったわ…、じゃあ…そうしましょうか…」
 涼子の言葉に昭乃は渋々頷くと、一緒に服を脱いでシャワーを浴びます。
「あらぁ…、昭乃ってば綺麗~…」
「ちょっと…! そんな風に見ないでよバカ」
 二人は互いに意識しながらも手早く体を洗い、パジャマに着替えると昭乃の部屋へと戻っていきました。
「あぁ…お布団どうしよう…」と、部屋に入るなり昭乃がそう言いました。
「お布団? あ…そっか…」と、どうしようかと首を傾げる涼子。そんな涼子に、昭乃は「もう…一緒に寝ちゃう?」と問いかけました。
「うん…別にいいけど…、いいの? 狭くならない?」
「うん…平気、客間のベッドとか…使ってもいいと思うけど…、お母さんが夜中に帰ってきたら…ちょっと面倒だから…」
「そう…。怒られる…?」
「…うん…」
「そっか…、それじゃあいっしょに寝よう?」
 涼子は昭乃に微笑むと、一緒にベッドに入りました。そして、互いに「おやすみ」と微笑むと、やがて眠りに就いたのです。







続く

 一次創作置き場

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