名劇SSブログ

世界名作劇場の二次創作SS(ショートストーリー)ブログです。※画像等の二次利用・無断転載はお断りしております。現在は「けものフレンズ」が中心となってしまいました。名劇関連は休憩中です(小説に出来そうなネタが無いです……スイマセン……)

フレンズビスケット 第四章:変化




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  第四章 変化


 イベントも終わって、いつもと変わらない日常を迎えた涼子と昭乃。二人は普段と同じ様に学校で過ごし、その日のお昼休みも、涼子は昭乃と図書室へと向かいました。
「あれ…、お裁縫の本…誰かが持っていってるね?」と、涼子は本棚を探しながら、昭乃に話します。
「そう? それじゃあ…こっちの、キャラクターの描き方っていう本にする?」
「うん」
 その本を手に取ると、二人は机に並んで座り、それを眺めていました。
「へ~…こういう風に描くのねえ…」と、その本の内容に関心を示す昭乃。涼子はそんな昭乃を見て、「何か描くの?」と問いかけました。
「ううん、特にそういうわけじゃないんだけどね。ほら、同人誌を買ったじゃない? それを読んでたんだけど…、凄く上手だな~って思って」
「そうなんだ~。ねえねえ、その同人誌、私にも読ませて?」
「ええ良いわよ。それじゃあ帰ってからウチに来る?」
「うんっ、行く行く~」
「それじゃあ、おやつ用意して待ってるわね」
 昭乃は涼子に微笑み、再びその本に視線を移します。本を読む内に次第に距離が近付き、涼子も昭乃も、お互いの肩を寄せ合いながら読み進めていました。
「あ…、ねえ昭乃?」
「うん?」
「ほら、このページの女の子、すっごく可愛いね?」
「そうねえ、こんな風に描けたらなぁ…、少しは楽しいんでしょうけど」
「描けばいいじゃん」
「そう簡単に言いなさんな。それに、あんたの方が上手でしょう? 衣装を作るときのスケッチ、凄く上手じゃない」
「そ…そうかな…、えへへ。まあそんなことよりさ、次のイベント楽しみだね~」
「うん? そ…そうね…」
「シャムちゃんのコスプレした昭乃…きっと可愛いわね~…うふふ~ん」
「そ…もうっ、涼子ってば…」
「えへへ~。きっと似合うよ?」
「そ…そうかなぁ…」
「うんっ。実はもうスケッチも描いてあるんだ~」
「涼子ってば…もう、しょうがないわねぇ…」
「えへへ」
「でも…そうね、ちょっとだけ楽しみね」
「ちょっとだけ~っ?」
「うふふっ。それより、もう教室に行かないと。午後の授業始まっちゃうわよ?」
「まだいいよ~、十分ぐらいあるじゃない」
「あんた次の時間、移動教室でしょう?」
「あ…そうでした…。理科室へ行かないと…」
「全くもう…」
 涼子は本を棚に片付けると、昭乃と一緒に図書室を後にしました。
 移動教室の準備を済ませ、涼子は廊下で待つ昭乃に小さく手を振ると、その理科室へと向かって行きました。昭乃も教室へと戻ると、次の授業の準備をします。
 やがて授業が始まり、涼子は薬品の臭いが漂う理科室の窓から、先生の話しをよそに校庭を見下ろしていました。
 
「昭乃は体育かぁ…」と、なんとなくその光景を眺めていると、その授業を進めていた男性の先生が涼子を呼び、それにハッとした表情を向けます。
「聞いていたのかね?」
「いえ、聞いてませんでした」
「相変わらず正直だね君は…」
「はい、お父さんにそういう風に教えられてきましたから~」
「よろしい。もう一度話すから、立ったまま聞いてなさい」
「は~い…」
 その先生は再び教科書に視線を落とすと、その授業の続きを始めます。先生は黒板に、薬品の名前や注意点を書くと、涼子に「座ってよろしい」と話し、授業が淡々と進んでいきます。
 けだるい午後の授業を、なんとなく過ごしていく涼子と昭乃。少しの休憩時間にも廊下で会い、涼子は昭乃にコスプレの話しをし、それを昭乃は話半分に聞いて、なんとなく頷きます。そして、その日の授業も終わり、涼子と昭乃は一緒に下校していきました。
「楽しみだな~、同人誌読むの。ねえねえ、どんなお話しだった?」
 涼子は、その帰り道の途中で昭乃にそう話しかけます。
「そうねえ…、えっと…、ラビちゃんとシャムちゃんが、とっても仲良くするお話し…よ」
「ふ~ん…そうなんだ。って、それだけじゃ分かんないよ~っ」
「だってしょうがないじゃない…、自分で読んで確かめてよ…」
「うん…。それじゃあ、ちょっと電話するね?」
 涼子はスカートのポケットから携帯電話を取り出すと、家に連絡を入れました。
「あ、お父ちゃん? 今から昭乃んちへ行くから。…うん、閉店の手伝いはするよ~。うん、は~い」
 涼子は電話を終えると、携帯電話をポケットにしまって、「閉店までに帰れって」と、昭乃に微笑みます。
「そう。…そのまま来るの?」
「うん。だって、面倒くさいじゃん」
「う~ん…分かった。それじゃあ、スーパーで飲み物を買っていきましょうか」
「うん」
 二人は帰る途中で商店街のスーパーへと立ち寄り、そこで一リットルパックのオレンジジュースを買いました。
 やがて昭乃の家に到着すると、昭乃はその玄関を開けようとします。
「あれ、鍵が開いてる…」
「ええっ? 閉め忘れちゃったの?」
「そんなことないと思う、いつも確かめてるし…」
 昭乃はその玄関のドアを慎重に開けると、そこに置いてある靴を見て、ホッと良い作ため息を吐きます。
「お父さん帰ってた」と、昭乃は涼子に小さく微笑みました。
「そうなんだ。良かったじゃん」
「うん…」
 昭乃は「ただいまー」と、元気な声を出すと、涼子も「お邪魔しまーす」と、元気な声を出しました。ところが、何の返事も帰って来ませんでした。
 昭乃は小さく首を傾げると、涼子に「上がって?」と微笑みます。
「先に部屋に行ってて?」と、昭乃は涼子にそう言うと、そのまま台所へと向かいました。コップを準備し、台所の食器棚からおやつを探していると、後ろから「夕食のお金、置いておくからな」と、声が聞こえました。
 その声に振り向く昭乃。昭乃は「お父さん」と小さく言うと、その背中を追いかけ、玄関まで行きました。
「遅く…なるの?」
「戸締り、忘れずにな」
 昭乃のお父さん、利明(としあき)は昭乃の言葉に返事をせず、そのまま出かけていってしまいました。静まり返った廊下に、「カチャン」という音が小さく響きます。
昭乃は、その玄関のドアに向かって、小さく「行ってらっしゃい…」と、呟きました。

 昭乃は部屋に戻ると、涼子にジュースとおやつを渡します。
「ありがとう昭乃。わぁっ、このポテチ外国のやつだ~。ねえねえ昭乃、これって…、ねえ…どうしたの?」
「…え?」
「なんか…浮かない顔してるけど…」
「え…あぁ…、そんな顔してたかな…」
「うん…、何かあったの?」
「え…ええと…、本当に何でもないの。それよりさ、同人誌、読むでしょう?」
「うん…」
 昭乃は机の引き出しから同人誌を取り出すと、それを涼子に渡しました。涼子は「ありがとう」と笑顔を見せ、その同人誌を受け取ります。
「ホントに可愛い表紙ね~、私もこんな風に描けたらなぁ…」
「いいじゃない、涼子だって充分に上手よ?」
「そうかな…、えへへ。ねえ、一緒に読も?」
 涼子は隣に昭乃を迎えると、その同人誌を一緒に読み進めていきます。
「やっぱり可愛いなぁ…ラビちゃん」と、その絵柄に頬を緩ませる涼子。その同人誌の物語は、ラビちゃんがシャム子と一緒に森の中を歩き、その森の中で小さな泉を見つけるところから始まります。森の中は大変蒸し暑く、そこで水浴びしようと言うラビちゃん。水に入るのが苦手なシャム子は「え~…」と嫌そうな顔をするも、ラビちゃんに強引に服を脱がされ、その湖の中へと入っていきました。
 涼子も昭乃も、その描写に少し頬を染めながら読み進めていきました。
「ねえ昭乃…、なんだか…凄い展開ね…」
「ええ…、ここからもっと…凄くなるの…」
「えっ…、そうなんだ…」
 ラビちゃんと水遊びをする内に、次第に開放的になっていくシャム子。しかし、ラビちゃんは「少し休憩しようよ」と、木の木陰へと向かいます。ラビちゃんがそこへと腰を下ろすと、シャム子が「毛づくろいしてあげるよ~」と言い、ラビちゃんの耳や尻尾を毛づくろいしてあげました。
 その描写に益々頬を染める涼子と昭乃。エスカレートしていくシャム子の毛づくろいの描写に、涼子は「これって…私達が読んでも良いやつ…なのかなぁ…」と、昭乃に問いかけました。
「別に…良いんじゃないかしら…。特にそういう指定はされてないし…」
「そ…そう…よね…」
 涼子は恥ずかしそうに微笑むと、更に読み進めていきました。そして、その同人誌を読み終え、大きくため息を吐く二人。ジュースを飲んで、ホッとひと息つくと、涼子は昭乃に照れ笑いを向けます。
「いやぁ…凄い内容だったねえ…」
「え…ええ…」
「まさか…、シャムちゃんがラビちゃんを…ねえ…。まあ…大好きだっていうのは知ってたけどさぁ…」
「ええ…、でも…あの二人を見てると…、どうしてもそういう風に想像しちゃうわよね…」
「え…昭乃? そういう風って…」
「え…ええっ? えっと…いや、そうじゃなくて…、えっと…」
「へ~ぇ…、昭乃ってそういう…」
「だから違うってば~、もうっ。そういう涼子はどうなのよ~」
「私⁉ いや…えっと…、逆だと思ってた…」
「え…?」
「いや…、ラビちゃんの方からシャムちゃんに…、こう…ね…」
「え…ええと…、そういう意味で聞いたんじゃ…ない…」
「……しまった…」
「…エッチ…」
 涼子も昭乃も、互いに頬を染めると俯いてしまいます。どちらともなくジュースを飲み、互いに小さくため息を吐くと、照れくさそうに微笑みあいました。
 昭乃はポテチに手を伸ばすと、「とりあえず…食べましょうか?」と、その袋を開けようとします。
「よっ…、あれ…開かない…」
「貸してみて?」
「うん…」
 涼子は、通学バッグから小さなソーイングセットを取り出すと、小さなハサミでポテチの袋に切り込みを入れました。そして、その切込みから袋を破り、昭乃に手渡します。
「はい、開いたよ~」
「ありがとう涼子。それっていつも持ってるの?」
「うん。お母ちゃんにね、持っとけって言われてるの」
「そうなんだ」
 昭乃は涼子の言葉に小さく微笑むと、ポテチを皿に取り分け、それを涼子に差し出しました。
「はいどーぞ」
「ありがとう」
「ソーイングセットかぁ…、いまどき誰も持ってないわよねぇ」
「う~ん、そうなんだけどねえ。ボタンが取れたときとか持っとくと便利だからって、小学校の頃から持たされてるんだ~」
「そうだったんだ…」
「それからずっとそうしてきたから、持ってないとなんだか落ち着かなくって…」
「へ~ぇ…、でも分かる気がする。私もそういうのあるから」
「そうなの?」
「うん。これなんだけどね…」
 昭乃は通学バッグの中から小さな女の子の縫いぐるみを取り出すと、それを涼子に見せました。
「可愛い~! これは?」
「小学校に上がったときね、お母さんがお守りにって…作ってくれたの」
「そうなんだ。優しいお母さんね?」
「うん。それ以来ずっと持ってるの」
「へ~え。でも綺麗ね?」
「うん、自分で時々直してるの。でも…所々布が擦れちゃって、駄目になってきてる…」
「ホントだ…、これは直せないの?」
「ううん、直せると思うけど…、そうすると全部変えなきゃならないから…この子じゃなくなっちゃう気がして」
「そっか…、大事にしてるんだねぇ」
「うん…」
 昭乃はその人形に小さく微笑むと、涼子にも笑顔を見せました。と、そのときです。涼子の携帯電話が鳴り響きました。
「あ…、お母ちゃんからだ…」と、涼子はその画面を見ると、通話ボタンを押します。
「もしもし? お母ちゃん?」と話す涼子。昭乃はそんな様子を眺めながら、腕時計に目をやります。
「うん…、ちょっと待って~。ねえ昭乃?」
「うん?」
「夕ご飯ウチで食べてくかって、お母ちゃんが」
「あぁ…えっと…、ううん、今日は遠慮するわ?」
「そう? そっか、お父さん居るもんね?」
 涼子は昭乃に微笑むと、母親の春子にそのことを告げました。
「…うん、はーい。そんじゃね~」と、電話を切る涼子。涼子は昭乃に「もうそろそろ帰って来いってさ~」と、仕方なさそうに微笑みます。
「そう…。それじゃあ、このポテチ、おみやげに持っていってよ」
「いいの⁉ だってこれ、外国のだよ?」
「うん。まだ沢山あるから…」
「やったー、ありがとう昭乃!」
「え…ええ、ふふっ」
 昭乃は皿に残っているポテチを袋に戻すと、輪ゴムで止めて、涼子に渡しました。
「ありがとう昭乃」
「ううん、それじゃあ…玄関まで送るわ?」
「うん」
 昭乃が涼子を玄関まで見送ると、涼子はふと、利明の靴が無いことに気が付きました。
「あれ? お父さんは?」
「…ええ…、また…出かけていっちゃった…」
「そんな…。じゃあ…お母ちゃんに電話するね?」
「ううん、いいの。悪いし…」
「悪いとか…そんなこと…、遠慮しなくてもいいのに…」
「涼子…、でも…」
「いいからいいから、いつでも来て良いって言ったでしょう?」
「涼子…」
 涼子は春子に連絡を入れると、「今日のメニューはハンバーグだよ!」と、昭乃に笑顔を見せました。
「…ありがとう…涼子…」と、瞳を潤ませる昭乃。昭乃は「着替えてくる」と言い、部屋に戻っていきます。
 それから少しして、着替え終わった昭乃が戻ってきました。二人は家を出ると、夕暮れの中、手を繋ぎながら一緒に道を歩いていきます。
 涼子は自分の家に着くと、「ただいまー!」と元気な声を上げ、昭乃も「おじゃましまーす」と声を上げます。二人は「おかえりー」という春子の声を背にしながら、部屋へと向かいました。
「閉店の手伝いするから、ちょっと待ってて?」と、昭乃に話す涼子。
「フレビスのDVDを観てて良いからね? それとも何かほかの観る? 映画とか…アニメとか…、そこの本棚にあるから、適当に観ててね?」
「ありがとう涼子」
 昭乃は涼子に笑顔を見せ、部屋から出ていく涼子を見送りました。
「それじゃあ…、何を観ようかしらね…」と、その本棚を眺める昭乃。「あ…、名作アニメもあるのねえ…」と、その本棚から『赤毛のアン』を取り出すと、それをゲーム機にセットし、再生します。
 昭乃がそのアニメを観ていると、ドアがノックされ、その向こうから「入るよ~」と、涼子の声が響いてきました。
「どうぞ~」と、その声に昭乃が返事をします。
「お待たせ~」と言いながら部屋に入ってくる涼子。「あ、それ観てたんだ~」と、昭乃に微笑みます。
「ええ、『赤毛のアン』も持ってるなんて、意外ねぇ」
「えへへ~、そのアニメね、大好きな声優さんが出てるの。今はもうアニメに出てないんだけどね?」
「そうなんだ…」
「小さい頃に再放送で観てね、それで大好きになったの。DVDが出てるなんて知らなかったから、一生懸命にお小遣い貯めてね、集めてるんだ~。中古なんだけどね、えへへっ」
「そうなんだ~、でも凄く面白かった。よかったら貸してくれる?」
「うん、いいよ~。まだ途中までしかないけど、良いかな?」
「ええ、ありがとう涼子」
 涼子はそのDVDを本棚から取り出し、「袋がいるねえ」と、机の引き出しからスーパーの袋を取り出しました。
「はい、面白くて可愛くて、目が離せないから、たぶんあっという間に観終わっちゃうよ」
「ありがとう涼子」
「うんっ。それじゃあ…着替えてもいい?」
「え…あぁゴメン、どうぞどうぞ」
「ぱぱっと着替えちゃうから」という涼子の言葉を背に、昭乃は部屋から逃げるように出ていくと、小さくため息を吐きました。
 やがて、「おまたせー」と、涼子が部屋からひょこっと顔を出します。そんな涼子に小さく微笑む昭乃。
 涼子は昭乃を部屋に招き入れると、「夕ご飯だけど、もうちょっと待っててね?」と、申し訳なさそうに微笑みます。
「ええ、いいけど…。急にお邪魔しちゃったから…大変なのね? 手伝った方が…」
「ううん、違うの。お父ちゃんがお風呂入ってるから…」
「あぁ…そうなんだ…」
「うん。昭乃のこと気にしてんのよ、あれでも」
「え?」
「あっははっ、お父ちゃんったらね? 今日は泥で汚れてるから、先に入るぞ~って、お風呂に入っていっちゃったの。いつもは気にしないのにね~」
「そうなんだ…、気を遣わせちゃったのかな…」
「昭乃…。も~、そんなんじゃないってばぁ、気にしないで?」
「うん…」
「…どうしたの? 何か…あったの?」
「え…ううん、なんにもないけど…」
「…そう? …何か困ったことがあったら…相談に乗るよ?」
「…うん…、ありがとう…」
 昭乃は小さく微笑むと、「そうだ…」と呟き、「コスプレのことなんだけど…」と、涼子に問いかけます。
「コスプレ? なになに? する気になった?」
「え…ええと…、やっぱり…やるならシャムちゃんのコスプレをするんだよね…?」
「うんっ。もしかして…嫌だった?」
「ううん、嫌じゃないの、もしやるんだったら…その…、おへそ…出すのよね…」
「ええ…、そういう衣装だからねぇ…。恥ずかしい?」
「そりゃあだって……恥ずかしいわよ…」
「じゃあ…別のにする?」
「ええと…、でも…出来れば…、涼子とコスプレしたいから…、もうちょっと考えとく…」
「無理しなくていいのよ?」
「ううん、無理じゃないの…、ちょっと勇気がいるだけだから…」
「そう…。でも…嫌だったら言ってね? 無理にコスプレしても楽しくないもの…」
「うん、ありがとう涼子…」
 二人がそう話していると、階段の方から「ご飯だよ~」と、春子の声が聞こえてきました。その声に「はーい!」と返事をする涼子。
「じゃあ行こっか、昭乃?」
「ええ」
 二人は部屋を後にすると、台所へと下りていきました。

 台所へと行き、そのテーブルに並べられたお皿を見て、涼子は「おっきなハンバーグ!」と笑顔を見せます。
「もうこの子ったら、昭乃ちゃんが笑ってるじゃないの~」
 春子はそんな涼子を見て、困ったように微笑むと、昭乃に「恥ずかしいわよねえ~」と微笑みます。
「いえ、私もハンバーグが好きなので、大丈夫です」
「あらホント? それは良かったわ~。一応だけど、沢山作っといたから、おかわりいっぱいしてね?」
「はい、ありがとうございます」
 昭乃は春子の言葉に微笑み、涼子はその言葉を聞いて「やったー! 食べ放題!」と大喜びしました。
「まったくもう…食べ放題じゃありませんっ」
「え~、違うの~?」
 涼子と春子のやり取りに、台所は笑顔で包まれました。昭乃は、そんな光景を見て、寂しそうに微笑みます。
「さあ、食べよ食べよっ♪」と、涼子は早速、そのハンバーグを「いただきまーす!」と、口に頬張ります。
「あむっ…もぐもぐ…、う~んっ、美味しい!」
 涼子は昭乃に、「美味しいよ?」と微笑みます。
「うん、じゃあ私も、いただきます」
 昭乃もそのハンバーグを頬張り、涼子に笑顔を見せました。
 やがて食事も終わり、涼子と昭乃は部屋へと戻ろうとします。そのときでした、春子は昭乃に、「今日はどうするの?」と問いかけました。
「はい、お部屋で少しお話しした後、帰ろうかと思います」
「そう、それじゃあお父ちゃんに送っててもらいなさい?」
「いえ、そんな…ご迷惑じゃ…」
「いいのよ、どうせ野球観るか時代劇観るかしか用事はないんだし。ねえお父ちゃん?」
 春子は、テーブルで緑茶をすすっている義男に笑顔を向けます。
「お…おう…」
「ほらね?」
「あ…、ありがとうございます」
 昭乃は春子と義男に頭を下げると、涼子と一緒に部屋へと戻っていきました。
「帰っちゃうの?」と、涼子は部屋に入るなり、昭乃に問いかけました。
「ええ、だって明日も学校だし…」
「そっか…、じゃあさ、また週末にでも泊りにおいでよ。お部屋もお風呂も狭いけど…、それで良かったら、いつでも大歓迎だからさ」
「ありがとう涼子。狭いだなんてそんな…、羨ましいわ…」
「ええっ、狭いのが羨ましいの?」
「え…いや、そうじゃなくて…。賑やかで良いなって…そう思って…」
 昭乃はそう言うと、寂しそうに微笑みました。涼子はそんな昭乃にどうしていいか分からず、俯いてしまいます。
「…えっと…、ごめん涼子…、こんな話しをして…」
「え…、ううん…。それじゃあ、今度の金曜日に、ウチへおいでよ。ご馳走作るからさ」
「ええ、それじゃあ…、お願いしようかな…」
「うんっ♪」
 涼子は昭乃に笑顔を見せると、昭乃もまた、涼子に微笑みます。しかし…
「昭乃…? どうしたの?」
「え…」
 昭乃の頬に、涙が流れました。
「昭乃…」
「…ごめん…、ぐすっ…ごめん……」
「昭乃…」
 涼子は、ぽろぽろと涙を流す昭乃に、自然と手を差し伸べ、抱き締めてあげます。
「大丈夫…大丈夫だから…」
 涼子はそう言いながら、昭乃の背中を撫でてあげました。昭乃は涼子から体を離し、一生懸命に泣き止むと「ごめん」と、目を逸らします。
「謝ることないよ、私にだってそういうときあるもん…」
「涼子…」
「今度の週末、一緒に過ごそう? ね?」
「…うん…、ありがとう涼子…ぐすっ…。えへへ…」
 涼子は義男に、「私が送ってくから」と言い、家を出ようとします。
「平気なの?」と、玄関先で春子が涼子に声をかけ、涼子は「商店街の中を行けば大丈夫だよ」と話し、昭乃を送っていきました。
 商店街の中を歩く二人。もうすぐ店を閉めようかと、シャッターを下ろす店が多い中、帰宅途中の人や、買い物を終えた人がその中を歩いています。
「人がまばらだね? こんな商店街を歩くのは初めてだよ~」
 涼子は昭乃にそう言うと、笑顔を見せます。
「ええ、なんか…ちょっと寂しい雰囲気ね、でも…こういうのも悪くないかな…」
「そう?」
「うん…」
 昭乃は涼子に小さく微笑むと、自然と手が伸び、その手は涼子の手を握りました。
「あ…昭乃…」
「え…あっ、ごめん涼子…。その…なんか…自然に手が…」
「ううん…、いいよ昭乃、手を繋いでいこう?」
「……うん」
 二人は互いに微笑みあうと、商店街の中を歩いていきました。

 やがて、昭乃の家に着くと、二人は互いに小さく手を振り、「また明日ね」と別れました。
 昭乃はシャワーを浴び、寝る準備を整えると、自室で同人誌を眺めながら今日のことを考えていました。
「どうして…泣いてしまったのかしら…」
 そう呟く昭乃。同人誌を閉じ、ベッドに横になると、「コスプレ…良いかもしれないわね…」と呟き、目を閉じて眠りに身を任せました。







続く

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