名劇SSブログ

世界名作劇場の二次創作SS(ショートストーリー)ブログです。※画像等の二次利用・無断転載はお断りしております。現在は「けものフレンズ」が中心となってしまいました。名劇関連は休憩中です(小説に出来そうなネタが無いです……スイマセン……)

フレンズビスケット 第五章:衣装作り ※最後に拍手お礼もあります




はい、ご訪問、そして拍手ありがとうございます! それでは今回も始めていきたいと思います。今回は最後に拍手コメントのお礼もありますので、「長い!」と思われた際には、小説をすっ飛ばしてご覧頂くと楽だと思います(汗)

それではどうぞ。









  第五章 衣装作り


 その日の学校の帰り、昭乃は涼子に大事な話しがあると言い、涼子の家へと向かっていました。
「お話しって…なあに?」と、その道の途中で昭乃に首を傾げる涼子。
「それは…、着いてから話すわ…」
「そう…」
 涼子は家に着くと、自分の部屋へと昭乃を招き入れます。床に座り、駄菓子を差し出すと、それを口にしながら昭乃に話しを切り出します。
「それで…話しって?」
「ええ…。その…涼子、コスプレのことなんだけど、やってみようと思うの」
「ホント⁉ いいの⁉」
「うん。それでね…」
 昭乃は通学バッグの中から大きく膨らんだ封筒を取り出すと、それを涼子に渡します。
「これは…?」
「衣装を作るなら…必要だと思って…」
 涼子がその封筒を開けると、その中には紙幣が入っていました。一万円札や五千円札が数枚と、そして、千円札が何十枚も束になって入っており、涼子はそれに目を丸くして驚くと、昭乃に「こんなにいらないよ~!」と、その封筒を返します。
「でも…お金掛かるんじゃない? それに…作ってもらうわけだから…、お礼はしないと…」
「そんなぁ…。でも…確かにお金はかかるけどさぁ…、お礼なんていいよぉ…、そんなことされたら困るよぉ…」
「…涼子…」
「それに…、大事なお金だよ? 一生懸命に貯めたんじゃないの?」
「…ううん、貯めたとかじゃないの…。ほら、お金置いてってくれるでしょう? それも…必要ないのに…、あんな大金を…。だからいつも余ってしまって…。返そうとはしたのよ? でも…持ってろって言われて…」
「…そう…、でも…お礼のつもりだったら余計にいらないよ。だって私は昭乃と一緒にコスしたいんだもん、お礼をしなくちゃならないのはこっちだよ…」
「…でも…」
「う~ん…じゃあさ、こうしない? お金は材料を買いに行くとき、昭乃が払えばいいよ。お礼は…そうね、イベントでコスプレして、一緒に楽しもうよ、それで充分にお礼だから。ね? そうしよ?」
「涼子…、うんっ。ありがとう…」
「えへへっ。じゃあ早速、商店街に行って、材料を買ってこよう!」
「うん! あ…でも…、時間大丈夫? お手伝いとか平気?」
「へーきへーき、次のときに店番すればいいよ」
 涼子はそう言うと、昭乃と一緒に店へと下りていきました。
「ねえお父ちゃん、次のとき店番するからさ、今回は…ね?」と、涼子は義男にそう話すと、義男は「しょ~がね~な…。昭乃ちゃんも来てるし、今回だけだぞ?」と、涼子に微笑みます。
「ありがとうお父ちゃん」と、涼子は義男にお礼を言うと、昭乃と一緒に商店街へと出かけていきました。
 その商店街の手芸屋へと向かう二人。店の中に入ると涼子は早速、生地を選んでいきました。
「えっとぉ…、シャムちゃんは…っと…」
 メモ用紙を確認しながら、生地の色を確かめていく涼子。「基本白なんだけどぉ…こげ茶色のファーが付いてるのよねぇ…」と、呟きながら生地を見ていきます。
 一方の昭乃は、その衣装に使う小物類を作ろうと、リボンにする生地や、手袋の生地を探していました。
「えっと…、こげ茶色…の生地…っと…」
 昭乃がその生地を探していると、涼子が背中から「どうしよう…」と、声をかけました。
「え? どうしたのよ涼子…」
「うん…、生地はあったんだけどね、その…、スカートとか、首周りに使うファーがね、もの凄く高いの…」
「ええ…? いくらするの?」
「首周りのやつで六千円…、スカートに使う長さのやつを買おうとすると…、どうしよう…、三万円超えちゃうよ…」
「え…、そんなにするの…?」
「うん…」
「だって…偽物なのよね…、フェイクファーってやつ…」
「そうなんだけど、スカートの裾に使うやつって…けっこう長いじゃない? それでね、店員さんに聞いたらね、けっこうお高いの…」
「そうなんだ…。どうしよう…、三万円って高いわよね…」
「うん…、私のゲーム機が一万円とちょっとだから…、けっこう高いと思う…」
「そうよね…、私達みたいなのがそんな高い買い物して…平気かしら…。そういえばラビちゃんのときはどうだったの?」
「えっとね、確か五千円ちょっと…だったかな…。お母さんにいらない生地とか貰ってたから」
「そうなんだ…。あ…それだったらいけるかも…」
「え?」
「ウチにあるわよ、余ってる服。それもたくさん」
「ホント⁉」
「ええ。お母さんのお古だけど私じゃハデすぎるし、そもそも似合わないしね」
「でも…いいの? コスに使っちゃって…」
「平気よ、いつも勝手に部屋に置いてくんだから…」
「そうなんだ…」
「それじゃあ、今度のお休みにウチに来てよ、一緒に選びましょう?」
「うん。それじゃあまたお菓子とか持っていくね?」
「ええ、ありがとう」
 昭乃は涼子にそう微笑むと、二人は結局、何も買わずに店を後にしました。
 そのお店を出て、商店街の中を暫く歩いていくと、涼子が「あ…」と声を上げました。
「うん? どうしたの涼子…」
「夕ご飯どうする? ウチで食べてく?」
「え? ううん、家に帰るわ?」
「そう? そっか、お母さんもお父さんも帰ってくるもんね?」
「…ううん、家に帰ってもひとりよ…」
「そんな…。じゃあウチで食べなよ、遠慮なんかしないでさ」
「ううん、いいの。今日は…家で食べる…」
「そう…? 昭乃がそう言うなら…無理に誘わないけど…」
「…うん、ごめんね涼子、気持ちは嬉しいんだけど…、あまり迷惑はかけられないから…」
「迷惑だなんて…そんなこと…」
「ありがとう。その代わり、今度のお休みにご馳走作ってよ。親子サンドとか、コロッケとか」
「うんっ! 期待しててよ、今度も凄いの作っちゃうからさっ」
「ええ、期待してるわね」
 昭乃は涼子に微笑むと、涼子も可愛らしく微笑みます。そして、一緒に手を繋ぐと、涼子の家へと帰っていきました。
 昭乃は荷物を持つと、涼子に見送られながら家へと帰っていきました。涼子はその昭乃の背中を見送ると、夕食の手伝いを始めます。
「またコスプレでも始めるのかい?」
 春子は隣で手伝っている涼子に、そう問いかけました。
「うん。今度は昭乃もやってくれるって~」
「へえ、あの昭乃ちゃんがねえ。あんたまさか…無理を言ったんじゃないでしょうね?」
「言わないよ~。お願いしたのは確かだけどさ…」
「ふ~ん…。昭乃ちゃんをあまり困らせるようなことするんじゃないよ? あんたちょっと強引なところあるから」
「は~い」
 涼子は少しツンとしながら返事をすると、春子の手伝いを進めます。涼子は小気味よく音を立てながらネギを切っていきます。それをお味噌汁の中に入れると、油揚げも一緒に鍋の中へと放り込みました。
 それと同じ頃、昭乃はスーパーに寄ると、惣菜コーナーへと向かいます。そこで、値引きシールが貼ってある惣菜を選ぶと、レンジで温めるご飯を買い、家へと帰っていきました。
「今日は唐揚げ定食ね…」と、買い物袋を少し眺め、寂しそうに微笑みます。やがて家に着くと、誰も居ない真っ暗な玄関に「ただいま」と小さくつぶやき、廊下の明かりをつけました。
 自室に戻って荷物を置くと、お風呂の準備を済ませるついでに、電子レンジの中に買ってきた唐揚げを放り込みました。
 温め終わったのか、“ピッピッピッ”という音が、誰も居ない台所に響きます。その音が脱衣所まで響いてくると、昭乃は小さくため息を吐き、早く出せと言わんばかりに繰り返すその音を無視しました。
 暖房も付けず、暗い居間で厚手のパジャマに身を包み、テレビで涼子から借りた『赤毛のアン』を流しながら、レンジで温めた味気ない食事を口に運びます。
 昭乃はそのアニメを観ながら、「このアンって子…まるで涼子みたいね…」と、呟くようにして言いました。
 『赤毛のアン』とは、主人公である女の子、アン・シャーリーが、プリンスエドワード島へとやって来るところから物語が始まります。
 そこで、親友となるダイアナ・バリーと出会い、様々な体験をしながら成長していくという物語です。
 昭乃は『赤毛のアン』のDVDを一枚分観終えると、今度はフレンズビスケットのブルーレイを再生しました。
「…確かこの話しで…シャムちゃんが病気になっちゃうのよね…」
 昭乃が観ていたのは、ラビちゃんとシャム子が一緒に旅を始めて間もない頃のお話しでした。ラビちゃんとシャム子は“イジワルン”という病気を治すため、“フレンズビスケット”という、ビスケットの様な薬を、二人が住んでいる森の長老から預かり、冒険に出発します。
 その途中、シャム子はそのイジワルンにかかってしまい、ラビちゃんに辛く当たります。そう、イジワルンにかかってしまうと、意地悪になってしまうのです。
「ラビちゃんもシャムちゃんも…可哀想だったなぁ…。でも…治って良かった。このことがあってから、もっと仲良しになったのよね」
 昭乃はアニメを観ながら、両親のことを考えていました。幼い頃の記憶が蘇り、胸を締め付けます。
 画面では、ラビちゃんとシャム子がお喋りしたり、食事をしたり、仲良く過ごしていました。
「やっぱり…行けばよかったかな…、涼子…」
 床に寝転び、瞳を閉じると、「寂しいよ…」と呟く昭乃。やがてアニメも終わり、昭乃は部屋に戻ると、そのままベッドに潜り込んで眠ってしまいました。

 それから数日後の金曜日、涼子は学校から帰ると、義男に昭乃の家に行くと伝え、部屋に戻って着替えを済ませます。
「えっと…、持っていくものはっと…」
 涼子は大きめのリュックに裁縫道具や着替え、フレンズビスケットの設定資料と衣装のスケッチ、メモ帳を入れていきます。
「そうだ、お菓子も持っていかないと…」
 その荷物を持ってお店に降りていくと、涼子は義男に「お菓子ちょうだい?」と笑顔を見せます。
「ちょうだいじゃないだろ~。何が欲しいんだ?」
「えっとねえ…」と、涼子は売り場の棚から次々に駄菓子を選んでいきます。
「これとこれと…っと…、あとは…うまい棒のチーズ味」
「おいおい…、全部持ってくんじゃないよ」
「全部じゃないも~ん、棚のこっちから向こうだもん」
「同じだろうがよまったく…」
「じゃあお父ちゃん、お願いね?」
「お願いねって…全くお前は…。今日は泊りになるんだろ?」
「うん。昭乃に美味しいもの作ってあげるんだ~」
「そうか…。じゃあウチの野菜も持ってけ」
「いいの?」
「ああ、子供が遠慮すんな。で、何を作るつもりだ?」
「えっとねえ…」
 涼子は少し考えると、店に並んでいる野菜を選び、それを義男に渡しました。
「はい、お父ちゃん」
「おう。ジャガイモ、タマネギとニンジン? なんだ、カレーでも作るのか?」
「ううん、シチューにするの。お肉はスーパーで買うから…」
 涼子の言葉を聞いた義男は、「母さん!」と声を上げ、店に春子を呼びました。
「なんだいあんた、大きな声を出して」と、店に顔を出す春子。
「シチュー作るってよ、涼子のやつ。鶏肉あったろ、出してやんな」
「はいよ」
「そんな! いいよ買うから」
 涼子は春子をそう呼び止めましたが、「いいからいいから」と、春子は冷蔵庫から鶏もも肉を出してくると、野菜と同じ袋に入れてあげました。
「別にいいのにぃ…」
 涼子は袋の中を覗き込むと、両親に「ありがとう」と笑顔を見せました。そして、出かける準備を済ませると、両親に「行ってきまーす」と言って、昭乃の家へと向かって行きました。
 義男はそんな涼子の背中を見送ると、「少しは帰ってやれんのかねえ…、猫田さんトコのご両親は」と、大きくため息を吐きます。
「仕方ないよあんた、忙しいんだから」
「忙しいったってお前…」
「でも…、そうだねえ…、ちょっと可哀想な気もするねぇ…」
 春子は道の向うに消えていく涼子を見送ると、小さくため息を吐きました。

 涼子は昭乃の家に着くと、チャイムを鳴らして昭乃が出てくるのを待ちます。少しして、昭乃が玄関から顔を出し、門を開けました。
「さあ上がって?」と、昭乃は涼子を家に招き入れると、早速自室へと向かおうとします。
「あ、待って昭乃」
「うん? なあに?」
「えっとね、夕ご飯の材料を持ってきたから、冷蔵庫を借りて良いかな?」
「え…、ええ、ありがとう涼子…」
「うん、えへへっ♪」
 涼子は、冷蔵庫にその材料を入れると、昭乃と一緒に部屋へと向かいました。
「それじゃあ、早速始めましょうか」と、昭乃は涼子に笑顔を見せます。
「うん、いいけどぉ…、そのベッドの上のは…いったいなあに?」
 涼子は、昭乃のベッドの上に乗せられている服の山に目を丸くしました。
「うん、これ全部使っていいから、どれを使うか選んで?」
「ええっ⁉ これ全部使っていいの⁉」
「ええ、良いわよ?」
 涼子はその服の山に近付くと、「凄い…」と、呟くようにして声を漏らしました。
 涼子はその服を一着ずつ確かめていきます。どれもこれも高級そうな服ばかりで、涼子は少し心配になり、昭乃にもう一度問いかけました。
「ねえ昭乃? 本当に使ってもいいの? どれもこれも高そうな服ばっかじゃない…」
「ええ、お母さんのお古だから、高いのしかないわ?」
「そんなぁ…、なんか気が引けちゃうなぁ…」
「いいからいいから。さあ、どれを使うの?」
「そうねえ…」と、昭乃の言葉に涼子は首を傾げると、メモ帳と設定資料をリュックから取り出し、そこに書いてあるものと服を見比べていきました。
「えっと…、これは使えそうね…。これはっと…」
 次々と服を選んでいく涼子。昭乃はそんな涼子の様子を見て、「凄いわねぇ…」と、ため息混じりに呟きました。
「ええ? そんなでもないよ~。それよりさ昭乃、小物に使えるものとか探してよ~」
「あ…ごめん」
 昭乃もその服の山から、使えそうなものはないかと色々と探していきます。
「えっと…リボンと…手袋と、ファーと…耳よね? 涼子」
「うん。お願いね昭乃」
「分かった」
 涼子も昭乃も次々と服を探し出し、材料になりそうなものを見つけていきます。
「ねえ昭乃、こんな凄いの見つけちゃった」
 涼子はその服を手に取ると、それを広げて昭乃に見せます。
「これだったら特に工夫しなくても、シャムちゃんの服に出来ると思うよ?」
 その服は冬物のワンピースでしたが、ベージュに近い白色をしており、シャム子が着ている服のイメージに近いものでした。
「これを…おへそが出るようにして、ファーと、胸のところにリボンを付ければカンペキだねっ」
 涼子は嬉しそうに昭乃に微笑みました。
「そうねえ、それじゃあそれを使って、衣装を作りましょう。リボンとファーは見つけておいたから、あとは手袋を作るだけよ?」
「ホント?」
 昭乃は「ええ」と、それを涼子に見せました。こげ茶色のファーとリボンに瞳を輝かせる涼子。涼子は「これで手袋があれば完璧だね」と微笑みます。
「そうねえ…、手袋は私が編むから、涼子は衣装の方をお願いできるかしら?」
「うんっ。よ~し、ガンバって作ろ~」
「うん」
「も~、昭乃~。そこはうんじゃなくて、おーだよ」
「えぇぇ…」
「じゃあもう一回。ガンバって作ろ~」
「お…おー…」
 こうして、シャム子の衣装作りが始まりました。涼子はワンピースを上着とスカートの部分に切り分け、昭乃は毛糸で手袋を編んでいきました。
「手袋…大変そうだね…」と、昭乃の作業を見て呟く涼子。
「うん? そんなことないわよ? 設定を見ると普通の手袋みたいだから、これだったら一週間もあれば出来ると思う」
「そうなの⁉ 凄いねえ…」
「そんなことないわよぉ…。それより涼子、スカート…短すぎない?」
「え? 設定通りだと思うけど…」
「いやぁ、もうちょっと長く出来ない?」
「う~ん…、じゃあどれぐらいが良いか、見てみる?」
 涼子はそのスカートの部分を持つと、広げてみました。昭乃はそれを見て立ち上がると、涼子はそれを昭乃の腰に当てます。
「どれぐらいが良い?」
「えっと…、この辺かな…」と、昭乃は膝より少し下を指差しました。
「そう? 設定よりだいぶ長いけど…」
「だってぇ…、恥ずかしいわよ…そんな短いの…。それに…、声優さんもさ、同じ衣装を着てても…スカート長いし…」
 昭乃は、アニメ雑誌で特集されていた記事のことを涼子に話しました。すると涼子は、「声優さんだからねえ、レイヤーとは違うしなぁ…」と、少し悩む仕草を見せました。
「それはそうだけど…。だったらさ…短くてもいいから、見えても良いように何か穿かせてよ…」
「うん、それだったら良いよ? 設定でも、スカートの下は毛糸のパンツみたいな、そんなの穿いてるしね」
「そうなの? アニメ観てると…普通の下着みたいだったけど…」
「まあねえ…、CGだからねえ…しょうがないよ」
「そっか…そうなのね…。じゃあ私が編むわ、涼子はそのまま、衣装の方をお願いね?」
「オッケ~」
 二人はお菓子をつまみながら、一生懸命に衣装を制作していきました。そんなとき、昭乃の携帯にメールが届きました。昭乃は手を休め、そのメールを見ると、小さくため息を吐いたのです。
「どうしたの昭乃?」
「うん…、お父さんとお母さん、これから出張だって…」
「へ~…、どこに?」
「…ニューヨーク…」
「ええっ⁉ ニューヨーク⁉ それって…すっごい遠いじゃん…。それで…いつ帰ってくるって…」
「さあ…、いつ帰れるか分からないって…」
「そう…、でも…何で急に…」
「う~ん…そこまでは…。急に話しが来て…としか書いてないから…」
「そんな…、そんなのって…」
「涼子…、大丈夫、私は大丈夫だから…。さあ、作業を続けましょう?」
「昭乃…。うん…、でもさ…、食事とかどうするの…? お金…」
「うん、私の口座にまとめて振り込んでくれるって…」
「そう…、それじゃあ心配ないね…」
「うん……。さあ、続きをやっちゃいましょう」
 昭乃は涼子に小さく微笑むと、再び衣装作りに集中しました。涼子もそんな昭乃を見て、手を動かします。
 それから少しして、涼子は部屋の時計を確認すると、昭乃に「夕ご飯の準備しないと」と話します。
「え? もうそんな時間なのねぇ…。ねえ涼子、今日は何を作るの?」
「うん、今日はねえ、シチューを作ろうと思って」
「シチュー? いいわねそれ、でも…難しくない?」
「ううん、案外簡単よ? じゃあお台所借りるね?」
「うん。私も手伝うわ」
「うんっ、ありがとう昭乃」
 二人は一緒に台所へと向かうと、涼子は早速、その準備に取り掛かりました。
「そうだ…、ねえ昭乃、圧力鍋ってあるかな…」
「圧力鍋? う~ん…どうだろ…、たぶんあるかも…。その棚に鍋とかいっぱい入ってるから…」
 昭乃が指差した棚を開けると、そこには確かに鍋が入っていましたが、どれも箱から出していなく、新品の状態でした。
「あらぁ…、全部新品なのねえ…」と、目を丸くする涼子。昭乃はそんな涼子を見て、「料理とか…しないから…」と、寂しそうに微笑みました。
「あ…ええと…、それじゃあ、私が使っちゃうね?」
「うん、使って使って?」
 涼子はその棚の中を探し、「あった!」と、圧力鍋の箱を取り出すと、「サンプル品って書いてある」と、その箱を昭乃に見せました。
「大丈夫かなぁ…使っちゃって…」
「いいんじゃない?」
「そうね、使っちゃおう」
 圧力鍋を箱から取り出し、綺麗に洗うと、材料を調理していきます。
 鶏肉から皮を取り除き、それを細かく切っていきます。鶏肉はひと口大より少し大きめに切り、それに塩コショウを振りました。
一方、昭乃は慣れない手つきでジャガイモやニンジンの皮をピーラーという道具でむいていきます。
「皮をむいたら私にちょうだい? 切っちゃうから」と、涼子はタマネギをみじん切りにしながら昭乃に話します。
「うん」
 昭乃は皮をむき終えたジャガイモとニンジンを涼子に渡すと、涼子はそれを軽快に切っていきます。
「大したもんねぇ…」と、感心しながらそれを眺める昭乃。涼子は「いつもお手伝いしてるからね。でも誰でもすぐに出来るようになると思うよ?」
「そう?」
「うん、昭乃もやってみる?」
「え…ええ…」
 昭乃は恐る恐る、その包丁を手に持つと、残りの材料を切っていきました。見るからに危なっかしい手付きで切っていく昭乃。涼子はそんな昭乃の背中に回ると、「ちょっと貸してみて」と、包丁を握る昭乃の手を握りました。
「え…涼子…」
「えへへ…、ちょっと恥ずかしいね…。えっと…力抜いて?」
 涼子は昭乃の手を取りながら、包丁の使い方を丁寧に教えていきます。
「えっと…、こうやって…、押さえる方は猫ちゃんの手で押さえて…、そうそう…、そうやって切っていくと危なくないの」
「えっと…」
 昭乃は一生懸命に包丁を握り、材料を切っていきます。涼子は昭乃の手から自分の手を離した後も、昭乃の背に寄り添い、その作業を見守っていました。
「…っと、できたっ、できたわ涼子」
「うん、それじゃあ、フライパンでその材料を炒めていくね」
「うん。…あの…涼子…」
「…あ…ごめん…」
 涼子は頬を染め、昭乃から離れると、フライパンを手に取りました。
「じゃあこれで、材料を炒めていきます」
 涼子はまず、刻んだ鶏の皮をバターで炒めていきました。充分に焼き色が付いたところで、今度は玉ねぎのみじん切りをそこに入れ、炒めていきます。
「こうするとね、美味しいんだ~。お母さんが教えてくれたの」
「へぇ…」
 昭乃はそのフライパンを覗き込むと、眼鏡を曇らせてしまいました。そんな様子に微笑む涼子。
涼子は次に、そのフライパンの中に切った野菜を入れていきました。充分に炒めたあと、最後に鶏肉を入れて炒めます。
「お肉は硬くなっちゃうといけないから、最後に炒めるの。少し焼き色が付いたら、今度はお鍋にこれを移して…っと…」
 フライパンからその材料を圧力鍋に移すと、そこに牛乳と固形のコンソメ、水とローリエを入れて鍋を火にかけました。
「これで、少し煮ていくの」
「そうなんだ。これで完成?」
「ううん、アクを取りながら煮ていくから、手は離せないかな…」
「そうなんだ…。じゃあフライパン洗っちゃうね?」
「うん、ありがとう。まだ時間かかるから、その間に…って、しまったぁ…」
「どうしたの?」
「うん…、ごはんどうしよ…、それか…パンの方が良い? どっちにしたって買ってこないと無いけど…」
「そうね…、パンだったらあるわよ確か」
「そうなの?」
「ええ、缶詰のだけど…、貰ったのがあるから」
 昭乃はフライパンを手早く洗うと、床下の倉庫から、その缶詰を取り出しました。
「これもサンプル品だけど、食べちゃってもいいと思う」
「ホント? ありがとう昭乃。それじゃあ、これをオーブンで焼きましょうか」
「そうね。じゃあ私が焼いておくわね、ついでにジュースでも出しましょうか。ちょっとひと息入れましょう?」
「うん」
 昭乃はオーブントースターにそのパンを入れると、コップを二つ出してジュースを入れました。
 パンの様子を見ながら、ジュースを飲む昭乃。涼子も同じ様に、鍋のアクを取りながらジュースを飲んでいます。
「衣装作り、案外早く終わりそうね?」と、昭乃がオーブンの中を覗き込みながら、涼子に話しました。
「そうねえ、付けるもん付けて、仮縫いして、試着して…だから、早く終わるかもね?」
「じゃあ…、次のイベントにはそれを着るわけね…私は…」
「もちろんよ~、なんと言ってもフレビスのオンリーイベントだしね。文化会館でやるって話しだし…、そんなに規模は大きくないと思うよ? 人もそんなに来ないと思う…」
「文化会館? バスでしか行けないじゃない…」
「うん…。だからたぶん、前に行ったところよりも人は少ないと思う。不安…かなぁ…?」
「そりゃあ…だって、初めて着るんだもん…、不安よ…」
「そっか…、そりゃあ…そうそよね…」
「ねえ涼子、涼子が初めてイベントに参加したのって…いつなの?」
「うんっとねえ…、高校に入ってからだから、まだ昭乃と知り合う前だったわね」
「そうなんだ…」
「あ…、そろそろルーを入れないとね」
 涼子はシチューのルーを鍋に入れると、圧力鍋の蓋を閉め、弱火で煮込んでいきました。
「こうやってねえ、圧力鍋を使うと、短時間ですっごく美味しいシチューが出来るんだ~」
「へえ、そうなんだ。じゃあ…カレーも出来るわね?」
「うん。今度はカレーにする?」
「え…そうね…、うん。カレーがいい」
「えへへ~、じゃあまた材料持ってくるね?」
「ありがとう涼子」
 昭乃はオーブンから焼き上がったパンを取り出すと、それを皿に乗せ、テーブルへと運びました。
「それじゃあ昭乃、煮えるまでちょっと時間もあるし、先にお風呂入る?」
「そうね、そうしましょうか。じゃあ準備してくるから、涼子、先に入る?」
「ううん、鍋を見てるから、昭乃から先に入っちゃって?」
「そう? じゃあ…悪いけど先に入るわね?」
「うん」
 昭乃はお風呂場へと向かうと、お風呂の給湯器のスイッチを入れました。部屋に戻り、着替えを用意すると、台所の方から美味しそうな香りが漂ってきました。
「……なんだか…、懐かしい…」
 昭乃は廊下から台所の明かりに微笑むと、脱衣所に着替えを置いてきました。
 その台所に戻ると、涼子の姿を見て微笑み、それに気が付いた涼子も、昭乃に微笑みます。
「ねえ涼子、まだ少し時間があるから、何か手伝いましょうか?」
「そうねえ、じゃあお皿をお願い」
「ええ分かったわ」
 台所の棚からお皿や食器を取り出すと、それをテーブルに並べます。先程飲んだジュースもテーブルに置くと、皿に乗ったパンに視線を向けました。
「パン…、食べる前に焼けばよかったわね…」
「え? …あぁ…そうね、冷めちゃうからね。でも、シチューは美味しいから、期待してて?」
「うん」
 そうこうしている内に、給湯器の「ピー」という音が鳴り響き、昭乃はお風呂へと向かいました。
 その間に涼子は、「もう大丈夫かな~」と、圧力鍋の蓋を取り、「よっしゃよっしゃ」と微笑むと、仕上げに塩コショウをして、更に煮込んでいきました。
「お待たせ、上がったわよ」と、昭乃がパジャマに上着を着て、台所へと姿を見せました。
「うん。じゃあ私も入っちゃうね~。あとは弱火で煮込んでいくだけだから、ちょっと見ててね?」
「ええ、分かったわ」
「蓋は外しちゃダメよ? つまみ食いはメっだからね?」
「はーい」
 涼子と昭乃は互いに微笑みあうと、涼子はお風呂場へと向かいました。
 やがて、涼子もお風呂から上がり、台所へと向かうと鍋の様子を見ます。
「ありがとう昭乃」と微笑み、圧力鍋の蓋を外す涼子。すると、美味しそうな香りと共に、湯気がもわっと上がりました。
「うんっ、上出来上出来っ。それじゃあご飯にしよっか」
「ええ、もうお腹空いちゃって…」
「私も~。さっきお風呂でね、ぐ~ってお腹が鳴っちゃったの」
「まあ、うっふふっ」
「えへへ~」
 二人はテーブルに着くと、早速食事を始めました。テーブルには出来たばかりのシチューと、少し冷めたパンが並んでいました。
 涼子はそのシチューを皿によそうと、昭乃に手渡します。
「はい、どうぞ?」
「ありがとう涼子」
 涼子も自分の分をよそうと、二人で一緒に「いただきまーす」と手を合わせ、そのシチューを口に運びました。
「美味しい!」と、笑顔を見せる昭乃。涼子も「ホント! 美味しいわね!」と、笑顔を見せます。
 シチューにパンを浸し、味気ない缶詰のパンを存分に楽しむ涼子
「こうすると美味しいよ~?」と、笑顔を見せる涼子。昭乃も涼子に微笑むと、同じ様にしてパンを食べます。
「ホントだ、こうすると美味しいわね」
「でしょう? ウチではねえ、古くなって硬くなった食パンを、こうやって食べてるの」
「そうなんだ、古いパンかぁ…、あ…」
「うん? どうしたの?」
「ええと…その…、確か部屋に何か月か前のロールパンが転がってた気がする…」
「ええっ⁉ さっき来たとき、ぜんぜん気付かなかったよ?」
「うん…、机の下にあったと思う…」
「えぇぇぇ…、じゃあ…ご飯終わったらお掃除しよっか…」
「うん…ごめん…」
 涼子は申し訳なさそうにする昭乃に小さく微笑むと、そのテーブルからダイニングを見渡してみます。
「…ここも…、明日お掃除しようか…?」
「そんな…、悪いわよ…」
「いいからいいから、気にしないでよ。明日、午前中にお掃除しちゃいましょう?」
「…ごめんね涼子…、掃除…してるんだけど…ひとりじゃ中々出来ないの。でも…本当にいいの?」
「うん、遠慮しないで? 衣装を作るときもゴミとか出るからね、そのついでに掃除しちゃいましょう?」
「…ありがとう、涼子」
「うん」
 二人は互いに微笑みあいながら食事を進めます。やがてその食事も終わり、後片付けを済ませてひと息ついていると、昭乃が「このあとも作業する?」と涼子に問いかけます。
「そうねえ、そんなに急がないけど、早く見たいもんね、昭乃がシャムちゃんのコスをしたとこ」
「もう…涼子ったら…」
「えへへっ。じゃあ…そろそろ始めよっか」
「そうね」
 二人は部屋に戻ると、衣装作りの続きを始めました。
せっせと衣装を作る涼子と昭乃。なんの変哲もないラジオの音声が部屋に流れ、たまにジョキジョキという音が響くぐらいの、そんな静かな作業が続きました。
 そんなとき、昭乃がふと、置時計を確認します。
「ねえ涼子…」
「うん?」
「ごめん…、時計止まってた…」
「え…?」
 見ればその時計は、六時を少し回っていた状態で止まっていました。「いつの六時なのかしら…」と首を傾げる涼子。
 昭乃は、ベッドの頭のところの、小物を置く場所、つまり、ヘッドボードに置いてある腕時計を確認しました。
「えっと…、もうすぐ日が変わるわね…」
 その言葉に、涼子は「えーっ?」と目を丸くすると、「じゃあもう寝ないと…」と話します。
「そうね、どうせなら観たいでしょう? フレビス」
「モチロンよ~」
 涼子は昭乃に笑顔で返事をします。二人は部屋を簡単に片付け、一緒にベッドに入ります。
「ごめんね昭乃…、狭いよね…」
「ううん、お布団を敷けるような状態じゃないしね」
 部屋は製作途中の衣装が広げられており、そのゴミや、材料も床に広げられています。そんな状態なので、二人で一緒にベッドに入ったのでした。
 それから暫くして、二人は眠りに就きました。

 それからどれぐらいの時間が過ぎたのでしょう、涼子がふと目を覚ますと、隣で眠っている昭乃が泣いているのに気が付きました。
「昭乃…?」と、反対側を向いている昭乃の表情を見ようと、覗き込みます。
「……寝ながら泣いてるの…?」
 その言葉に昭乃は目を覚ますと、「涼子…」と、涼子に悲しそうな表情を向けます。
「昭乃…どうしたの…?」
「うん…、なんだか…もの凄く寂しい夢を…見てた気がする…」
「昭乃…」
 涼子は昭乃に手を伸ばすと、そっと優しく包み込みました。何も言わずに昭乃の頭を撫でてやる涼子。昭乃は涼子の腕の中で、安心したかのように眠りに就きました。







続く







拍手コメントのお礼

ハッサク様

拍手コメントありがとうございます! 可愛いと言って下さってありがとうございます!いや~も~なんでしょうな、自分がニヤニヤできるものを描いたらこうなったという…なので、自分で描いといてアレなんですが、ニヤニヤですよ(黙れ)。お祝いはたま~に忘れてしまうのですが、やはり大好きな作品ですからね、忘れずにお祝いしたいです。でも…もうそんなになりますかという作品ばかりで、どれもこれも時代を感じさせないクオリティですから…そうなってしまうのですが、○○年前という数字を見ると、驚くと同時に「怖いわ~」って思ってしまいます(苦笑)。

交流会はホント…そうですよね、ただのファンイベントに収まらないゲストが多数来て下さいますので、本当に驚きますよ。私なんかもうどうしていいのか分からないですもん…目の前に居るのにっていう…、もう凄いです。私からしたら神様ですからねぇ…特に佐藤先生なんて…。佐藤先生の絵や作品で育ってきたと言っても過言ではないですから、ええ…もう…、交流会は凄いですよホント…(汗)。いつもあまりお話しできずに終わってしまうのが残念ですが…、今度また、お話しできるチャンスがあれば、ポリさんや若草ナンのお話しをじっくりとお聞きしたいです。

オフ会のレポートも読んで下さってありがとうございます! そうなんですよ~…凄いですよね、もう何十年も前のものが現存しているって、奇跡ですよ…。残しておいて下さるというのは本当にありがたいことで、なのでこうして実際にお目にかかれて本当に幸せですよ。ええ…あの頃、あの時代、あのシーンの数々…ですからね…。しかも実際にスタジオで制作された本物…これは凄いことですよ。今でも信じられないぐらいです…。

長くなってしまうのでこの辺で…(汗)。それでは、拍手コメントありがとうございました :)

 一次創作置き場

0 Comments

Leave a comment