名劇SSブログ

世界名作劇場の二次創作SS(ショートストーリー)ブログです。※画像等の二次利用・無断転載はお断りしております。現在は「けものフレンズ」が中心となってしまいました。名劇関連は休憩中です(小説に出来そうなネタが無いです……スイマセン……)

フレンズビスケット 第七章:重なる心 ※百合表現が入ってますので、ご注意下さい。




最近は寒い日が続き、こちらでも雪が降ってちょっと大変でしたね。そんな日曜日ですが、ご訪問、そして拍手ありがとうございます!

そんなわけで、小説の方なんですが、パルメちゃんは…そうですね、なるべく早い段階で公開したいと思ってますので、もしかしたらこの「フレンズビスケット」は土曜と日曜の掲載になるかもしれません。ご了承下さい。そして、今回も百合表現が…というか、百合の花園状態ですので、ご注意を。

それではどうぞ。








  第七章 重なる心


 衣装製作も、昭乃が毛糸で製作するものを仕上げるだけとなり、涼子はそれを一生懸命に支えていました。
 涼子は学校から帰ると、真っ先に昭乃の家に行き、お茶の支度やご飯の支度をして過ごします。両親には「衣装が出来上がるまでだから」と言って、放課後に手伝いをせず、昭乃と一緒に過ごすことを了承してもらっていました。
「それじゃあお父さん、いってきまーす」
 涼子は部屋に通学バッグを置くと、制服のまま家を飛び出していきます。
 義男の「気を付けてな」という声を背に、商店街へと向かう涼子。そのスーパーで夕食の材料を買うと、昭乃の家へと急ぎました。
 玄関のチャイムを鳴らすと、昭乃が涼子を出迎え、家の中へと迎え入れます。
「ごめんね毎日…」と、申し訳なさそうにする昭乃。
「ううん、気にしなくてもいいよ? お父ちゃんもお母ちゃんも、分かってくれてるから」
 涼子は昭乃に屈託のない笑顔を見せ、台所へと向かいました。
「今日は~、チキンカツにしようかなって思って、材料買ってきた~」と、昭乃に微笑む涼子。
 その材料を冷蔵庫にしまいながら、「もう衣装も完成するね~」と話します。
「ええ、あと少し…だいぶ時間が掛かっちゃったけど、今日中には出来上がるわよ?」
「そうなんだ。それじゃあ楽しみだね~、衣装合わせ」
「そうね…。ねえ…涼子…?」
「うん? なあに?」
「衣装が出来上がっても…、ウチに来てくれる?」
「そりゃあモチロンだよ~、何度でも来るよ? 来るなって言われても来るよ?」
「あはは…、そんな、来るな~なんて言わないわよ。課題もやってくれるしね?」
「そんな~あ…ひどいよ~ぉ…」
「うっふふっ、冗談よ。ありがとう涼子…」
「えへへ…。じゃあ…夕ご飯の支度しちゃうね?」
「うん。私は…」
「昭乃は衣装の方をやってて? こっちは下ごしらえをするだけだから」
「うん、分かった」
 昭乃は涼子に笑顔で返事をすると、部屋へと戻っていきました。涼子は制服の袖を腕まくりすると、材料の下ごしらえをしていきます。
 同じ頃、昭乃は「夕食…楽しみだなぁ…」と、嬉しそうな表情をしながら衣装を仕上げていきました。
 やがて、下ごしらえを終えた涼子が、台所から部屋へと戻ってきました。
「今日はデザートもあるからね~、期待してて?」
「デザート? それは楽しみねえ~。どんなのを出すの?」
「プリン♪」
「プリン? もしかして作ったの?」
「ううん、残念ながら買ってきたやつ。ほら、スーパーのデザート売り場にさ、特製の丼ぶりプリンがあるじゃない? 安かったから買ってきちゃった」
「あらま…。でもあんな大きいの…食べ切れないわよ?」
「大丈夫、半分こするからさ。私はぁ…一個でも良いんだけどね~」
「もう…涼子ったら…、太るよ?」
「太るの怖がってたら何も食べられないわよ~。それに、適度に動いてるから良いの」
 昭乃は、「えっへん」と胸を張る涼子に呆れたように微笑むと、再び手元に視線を集中しました。
 一方の涼子は、出された課題を一生懸命にやっています。時々頭を抱えながら問題を解いていく涼子。
部屋には昼下がりの日差しが差し込み、生活雑貨店が出しているCDのゆったりとした音楽も流れて、とても心地の良い時間を二人で過ごしていました。
「ねえ昭乃? この音楽良いわね~、なんていうの?」
「さあ…、お父さんが持ってきたCDだから…。ジャケットには店内用…ケルト音楽集…って書いてあるけど…」
「ケルト音楽? どこの音楽なの?」
「う~ん…分かんない、ジャケットにはなんにも書いてないから…」
「そっかぁ、でもきっと、外国の音楽なんだね~」
 涼子は昭乃にそう微笑むと、課題のプリントに視線を落としました。そんな涼子に、昭乃はキャンディーが入った入れ物を差し出すと、「食べる?」と微笑みます。
「ありがとう昭乃~。やっぱ甘いもの欲しくなるよねえ?」
「でしょう? そう思って買っといたの」
 二人はそのキャンディーを頬張りながら作業を進め、やがて夕食の時間になりました。
 課題を終わらせた涼子は台所に向かい、その支度を進めていきます。昭乃は部屋に残り、衣装の方を製作していました。
 部屋に漂ってくる美味しそうな香りに、思わず鼻とお腹を鳴らす昭乃。ハッとした表情でお腹に手を当てると、「お風呂の準備もしとこうかしら…」と、部屋を後にしました。
 台所に顔を出し、「ねえ、お風呂先にする?」と、涼子に声をかけます。
「うん。今日は体育があったからねえ、先に入りたいよ~」
「そう、じゃあ準備してくるわね?」
「はーい」
 お風呂場へと向かう昭乃を笑顔で見送る涼子。「さ~て…それじゃあ後は、揚げるだけにしときましょうか」と、夕食のおかずであるチキンカツを、パン粉をまぶした状態で冷蔵庫に入れました。
 涼子は先にお風呂を済ませ、昭乃が入っている内に夕食のチキンカツを揚げていきます。お風呂場にもその香りが漂い、昭乃は益々お腹を減らしながら、その時間を楽しんでいました。
 そして、待ちに待った夕食の時間。テーブルには出来立てのチキンカツと、炊き立てのご飯、そして油揚げとわかめのお味噌汁が並び、二人ともそれを美味しそうに頬張っています。
「おかわりもあるからねえ~」と、ごはんとカツを頬張りながら話す涼子。
「本当に美味しいわねえ~」と、昭乃も笑顔でカツを頬張っています。
「涼子はきっと、良いお嫁さんになるわね」
「そんな~、そんなことないよ~」
「相手が居ればの話しだけど…」
「ひどいよっ。まあでも…そうかも…。ねえ昭乃? もし…お嫁さんにしてくれる人が居なかったらぁ…お嫁さんにしてくれる?」
「そうねえ…って、何バカなこと言ってんのよもうっ…」
「えへへ~、冗談だよ~、冗談♪」
 テーブルに美味しい音が響き、二人の楽しそうな笑顔で溢れていました。
 しかし、そんな楽しい時間も終わりを告げ、夕食の後片付けを済ませると、時間はもう夜の八時を回っていました。涼子はそれを携帯電話で確かめると、「そろそろ帰らないと」と準備をします。
「それじゃあ、明日も来るからね?」と、涼子は玄関先で昭乃にそう話します。
「ええ。今日中には仕上がらなかったわね…。明日、来るまでには仕上がってると思うから、衣装合わせをしましょう?」
「うん! あ…言うの忘れてた…、明日はウチに来ない? 焼き肉をやるって言ってたから、一緒に食べましょうよ。衣装合わせもついでにやっちゃおう?」
「焼き肉? 良いわね、でも…良いの? 勝手に誘って…怒られない?」
「ううん、お父ちゃんに昭乃も誘ってきなさいって言われてるから、大丈夫だよ。次の日は学校もお休みだしね?」
「そうなの? それじゃあ…お邪魔しようかしら」
「うん! じゃあお母ちゃんとお父ちゃんにそう言っておくね? じゃあ昭乃、また明日ね~、バイバーイ」
「ええ、またね~」
 二人は手を振って別れると、それぞれの場所へと帰っていきました。

 次の日、学校を終えた昭乃は涼子の家へと向かうため、一旦、家へと帰っていきました。
 制服から私服に着替え、荷物を持つと涼子の家へと向かいます。
「もうすぐ衣装も出来上がるわね。出来上がったらやっぱり…イベントに参加するのよねえ…」
 昭乃は少し悩むような仕草をすると、涼子の家へと急ぎました。
 同じ頃、涼子はお店を手伝っていました。店先に立ち、夕食の買い物にくるお客さんの相手をして、一生懸命にお店を手伝っています。
「ありがとうございましたー!」と、元気な声でお客さんを見送る涼子。すると、その道の向こうから昭乃がやって来るのが見えました。
 涼子は昭乃に手を振ると、昭乃も手を振って駆け寄ってきます。
「いらっしゃい奥さん! 今日はなんにしましょうか?」
 涼子は昭乃に、ニヤニヤとしながらそう話しかけます。
「そうねえ…」と、首をかしげる昭乃。「じゃあ…ドリップコーヒーと、チョコチップクッキーを」
「え~、ウチには置いてないよ~…」
「じゃあ、バニラフラペチーノとシナモンロール」
「ウチは八百屋さんだよっ」
「うっふふっ、あんたの冗談に付き合ってたら陽が暮れてしまうわ?」
「えへへ~、じゃあ先に部屋に行ってて待ってて?」
「ええ」
 涼子は昭乃を家の中に迎えると、義男に昭乃が来たことを伝えると、エプロンを居間のハンガーにかけ、自分の部屋に向かいます。
 その部屋では、昭乃がもう衣装の仕上げに取りかかっていました。
「もうすぐ出来そう?」と、昭乃に声をかける涼子。
「ええ、もうあと…そうねえ、十分かそれぐらいで出来ると思う」
「そうなんだ。それじゃあ思ったより早く衣装合わせが出来そうね?」
「ええ。それはそうと涼子、ご馳走になっちゃって本当に良いの?」
「いいよいいよ、気にしないで? お父ちゃんが良いって言ったんだもん、だから大丈夫だよ?」
「そう…。だけど…何かお礼をしないと…」
「そんなぁ、いいよお礼なんて…気にしなくても」
「そんなの悪いわ? あ…そうだ、贈答用のお菓子がまだ棚にしまってあったと思うから、これを編んじゃったら持ってくるわね?」
「ええ~…悪いよそんなぁ…」
「いいからいいから、普段からお世話になってるんだし。それに、ここ最近は涼子にも…色々と気を遣わせてしまってるしね」
「昭乃…」
 昭乃は涼子に微笑むと、作業を続けました。涼子はそんな昭乃に「ありがとう」と微笑みます。
「ううん、こっちこそ…ありがとう」
 互いに優しく微笑むと、涼子と昭乃はなんとなく身を寄せ合い、その時間を大切に過ごしました。
 それから少しして、「出来た」と、昭乃が涼子に笑顔を見せました。
「ホント? わ~あっ、可愛い毛糸のパンツ~っ」
「もう…そんなマジマジと見ないでよ…、恥ずかしいじゃない…」
「え~? でも可愛いよ? 昭乃がこれを穿いたところを想像すると~…えへへ~ってなっちゃうよ~」
「何を想像してんのよバカ。それより…まだ時間あるわよね?」
「うん、まだまだあるよ?」
「それじゃあ、お菓子取ってくるから、衣装合わせはまた後でね?」
「うん。私も行こうか?」
「いいわよ、すぐ戻って来るから」
「分かった、じゃあフレビス観ながら待ってるね?」
 涼子は玄関先まで昭乃を見送ると、部屋に戻ってフレンズビスケットのDVDを観始めました。
 一方、昭乃は商店街を突っ切り、自分の家へと急いでいました。家に着くと、玄関を開けて中に入っていきます。
 ところが、その玄関にはハイヒールと、見慣れない革靴が置いてありました。
「お母さん…と…、誰だろ…。きっとお父さんね…。帰ってきたのかな…」
 昭乃は、その見知らぬ革靴に、自分でも分からないような不安を抱きながら、台所へと向かいます。
「誰も…居ない…? 泥棒…じゃないわよね…、でもお母さんの靴だったし…変ねえ…」
 少し首を傾げると、棚を開け、その中から先ほど言っていたお菓子を取り出します。
「おせんべい…かあ…。もっと何か持って行った方が良いわね…」
 昭乃は少し考える仕草をすると、お風呂場へと向かい、未開封の洗濯用洗剤と、ボディソープ。シャンプーやコンディショナーなどをコンビニの袋に詰め、それを玄関に置きます。
「やっぱり帰って来てるなら…、顔ぐらい見せた方が良いわね…。でも…なんで電気も付けず…時差ボケで寝てるのかな…。それとも…書斎でお仕事…?」
 薄暗い廊下に首を傾げると、母親と父親が使っている地下の書斎へと向かいました。
「お母さん…?」と、その部屋を開けるも、誰もいませんでした。
「寝室…かな…。やっぱり寝てるのね…」
 とりあえず一階へと上がり、二階へと続く階段を上がっていくと、その寝室へと向かいます。ところが、その部屋から小さく話し声が聞こえてきたのでした。
 昭乃は少し不安に思いながらも、寝室の前まで歩み寄っていきます。
 そして、ノックをしようと手を伸ばしました。ところが、その寝室から、聞いたこともない男性の声が聞こえてきたのです。
「やっぱり誰か帰ってきたんじゃないのか?」
 その声と同時に足音がこちらへと向かってきました。逃げようとするも、全身が固まってしまい、身動きが取れません。そのときです、母親の声がドアの向こうから聞こえてきました。
「馬鹿ねえ…、そんなわけないじゃない。アイツにはたんまりと仕事を与えておいたから、当分は帰ってこれないわ? あの子もまだ学校だろうし。そんなことよりさ…、早く続き…してよ…」
後ずさりし、廊下の壁に背中を押し付ける昭乃の耳に、容赦のない言葉が届きます。
「そうだなぁ…、仕事の為だけにお前と…っていうのは、勿体ないな…」
「うっふふっ、お上手なんだから…。もうこの際だから、あんな甲斐性無しなんか捨てて…アナタと一緒になっちゃおうかしら。そうすれば…」
「会社も大きくなるし…我々の未来も…ってね…」
 昭乃はその瞬間、ビクッと肩を震わせると、ドキドキと鼓動が早くなる胸を押さえ、玄関へと足早に向かいます。
 足音が聞こえたかどうかなど気にする余裕もありません。ただ懸命に足を動かし、玄関へと着くと、荷物を持ち、足早に出かけていきました。
 自分でも不思議なぐらい冷静に、玄関のドアに鍵を掛け、涼子の家へと向かう昭乃。しかし、商店街を少し入ったところで足が止まり、別の方向へと歩いて行ってしまいました。
 それと同じ頃、涼子の家では焼き肉の準備が進められ、後は昭乃が来るのを待つだけとなっていました。
「遅いなあ…昭乃…、どうしたんだろ…」
 涼子は居間の時計に目をやると、時間はもう夕方の六時を回っていました。居間の外からシャッターが閉まる音が聞こえ、義男が居間へと戻ってきます。
「何だ涼子、昭乃ちゃんまだ来てないのか?」
「うん…、すぐに戻って来るって言ってたんだけど…」
「そうか…」
「ちょっと見てくる、昭乃が来たら電話して」
 涼子は部屋に戻ると、上着を着て、そのポケットに携帯電話を押し込むと、玄関から飛び出していきました。
 商店街を突っ切り、昭乃の家へと向かう涼子。するとそのとき、昭乃の家のガレージから、いかにも高級そうな、大きなクルマが出てくるのが見えました。涼子は、その車がゆっくりと走り出していくのを遠くから見送ると、昭乃の家の前に向かいます。
「…電気…ついてない…。じゃあ…あのクルマに昭乃が?」
 涼子は道の向こうに目をやると、首を振り、「それだったら連絡入れてくれるよね…、黙ってなんて…」と、ポケットの中の携帯電話を握りしめます。
「あ…そっか…、これで連絡すればいいんだ」
 その携帯電話をポケットから取り出すと、早速、昭乃に電話をします。
 しかし、昭乃はその電話に出ようとしませんでした。
「どうして…?」
 涼子は不安になりながらも、昭乃を捜しました。商店街に戻り、辺りを見渡す涼子。しかし、昭乃の姿はどこにもありませんでした。
「いったい…どこに行ったんだろ…」と、俯いていると、花屋のおばさんが涼子に「どうしたの?」と声をかけます。
「あぁ…えっと…、昭乃を捜してて…」
「昭乃ちゃん? それだったら…公園の方に歩いて行ったけどねえ…。何かあったのかい?」
「いえ…、ありがとうございます!」
 涼子はそのおばさんに笑顔を向けると、その公園へと走っていきました。
 辺りはもう真っ暗。公園も、水銀灯が照らしていましたが薄暗く、辺りには人影も見当たりません。涼子はその公園の中に入ると、ブランコに乗っている黒い影を見つけました。
「昭乃…?」
 その影に駆け寄り、「どうしたのよ…」と、心配そうに声をかけます。
「涼子…」
 それは昭乃でした。昭乃はその涼子の声に悲しそうな微笑みを向けると、俯き、声を押し殺しながら、涙を流しました。
「昭乃…、どうしたの? 何かあったの?」
 涼子は黙って泣いている昭乃に歩み寄ると、そっと胸に抱いてあげました。
 昭乃はブランコの鎖から手を放し、涼子の背中に両腕を回すと、声を上げて泣いてしまいました。

 どれぐらいの時間が経ったのでしょう。昭乃が落ち着きを取り戻すと、涼子は家に電話をかけて、昭乃の無事を伝えます。電話で少し話し、ポケットにしまうと、涼子は昭乃に「もう遅いから、ウチに帰ろ?」と言って、手を差し出しました。
「ウチって…」
「私の家よ?」
「……うん…」
「大丈夫、このことはお父ちゃん達には黙っておくから」
「うん…」
 涼子は昭乃と手を繋ぐと、自分の家へと帰っていきました。
 夜の九時を回った頃、涼子は昭乃を連れて、家へと帰ってきました。春子も義男も、二人を心配し、居間でじっと待っていたのです。
 その二人に、頭を深々と下げる昭乃。しかし、義男は「腹減ってるだろ? さあ、上がんな?」と、昭乃を台所へと迎えました。
 春子も義男も、昭乃を気遣ってか、何があったのかを聞きませんでした。のんびりと焼き肉を楽しみ、他愛のない話しで盛り上がります。
 昭乃は、焼き肉を頬張りながら、涙を薄っすらと浮かべました。
 涼子はそんな昭乃を見ると、昭乃の皿にお肉をたっぷりと乗せ、優しく微笑みます。
「涼子…」
「えへへっ。ねえお父ちゃん、お母ちゃん。これから衣装合わせをしに昭乃んちに行っても良いかな~?」
 その言葉に、昭乃は「え…?」とキョトンとします。それは両親も同じでした。
「急に何を言い出すのこの子は」と、春子は涼子に呆れたような表情を浮かべました。
「ねえ良いでしょう?」と、両親にお願いする涼子。昭乃は涼子の袖を引っ張り、首を横に振ります。
「昭乃…、いいから。ね?」
「ね? …って…涼子…」
「ねえお願い、お父ちゃん、お母ちゃん」
 涼子の言葉に、義男はビールで顔を真っ赤にした表情を向けると、「まあ良いんじゃないか? なあ母さん」と、春子に酔っぱらった笑顔を見せました。
「まったくこの人ったらもう…。そうねえ…、失礼のないようにね?」
「やったー!」
 涼子はバンザイしながら喜ぶと、昭乃に満面の笑顔を見せました。昭乃はその笑顔に頬を染めながら頷くと、テーブルの下で涼子の手を握ります。
 やがて食事も終わり、春子がもう遅いからと、お店の軽トラで二人を送ることになりました。涼子は自分の荷物を大きなリュックに纏めると、それを荷台に放り込み、昭乃と一緒に軽トラに乗り込みます。
「それじゃあ、土曜と日曜は昭乃ちゃんの家で過ごすわけだね?」と、春子は隣に座る涼子に問いかけました。
「うん。衣装合わせをして~…二人で撮影会して~…、色々と、衣装の具合を確かめないとね?」
「ふ~ん…、色々と面倒なんだねえ、コスプレというやつは」
「そうなの、色々と手間がかかるの。だから最高のものが出来上がるのよ? 分かった? お母ちゃん」
「はいはい、まったくこの子は…。ごめんね~昭乃ちゃん、この子の趣味につき合わせちゃって」
「え…、あぁ…いえ、そんなことは…」
「それに、色々とお土産も頂いて、本当に悪いねえ?」
「いえ、こちらこそ、色々とお世話になってますから」
 春子は昭乃に優しく微笑むと、軽トラをゆっくりと走らせました。
 それから少しして、昭乃の家の前に軽トラを止めると、春子は涼子に「それじゃあ、日曜日の夜に迎えに来るから、電話してね?」と話します。
「うん、分かったー」と、軽トラから降りながら返事をする涼子。
春子は昭乃に、「それじゃあ、娘をよろしくお願いしますね?」と微笑むと、家へと帰っていきました。
 その軽トラを手を振りながら見送る涼子。その後ろで、昭乃は真っ暗な家を不安気に見つめていました。
「昭乃…。大丈夫だよ? お母さん…居ないから」
「えっ? ええ…と、そうなの…?」
「うん。ここから…えっと…、タクシーに乗って出かけるのが見えたから…」
「そう…」
 昭乃は意を決したかのように、その門のカギを開けると、玄関のドアへと向かいます。そして、鍵を開け、ゆっくりとそのドアを開けました。
 玄関はガランとしており、あのときに見た靴はもうどこにもありませんでした。昭乃はホッとしたような表情をすると、涼子を家の中へと迎えます。
 涼子を自分の部屋へと迎え、窓の外から庭の方を気にすると、カーテンを閉めました。
「ねえ昭乃? そんなに気にすることないよ…。お母さんと何かあったんでしょう? 向こうだって気にして…そっとしておこうって思ってるよ…」
「……無理よ…そんなの…」
「…え?」
「…何かって…何があったと思う…? 酷いことがあったのよ…」
「昭乃…。何があったのか…聞かせて? 話せないことなら…無理に聞かないけど…」
「……そうね…、とりあえず…コーヒーでも淹れましょうか…」
「うん…」
 二人は台所へと向かうと、お湯を沸かし、インスタントコーヒーを淹れました。そして、テーブルに向かうと、昭乃は涼子に、そのことを話したのです。
 昭乃の話しを、険しい表情をしながら耳を傾ける涼子。その表情は次第に、悲しそうな表情へと変わっていきました。
 昭乃は終始、表情を変えずに淡々と話しています。その部屋から聞こえてきた全てを、涼子に話したのです。
 そして、その話しを終えた昭乃は、テーブルに肘をつき、頭を抱えながら俯いてしまいました。
 そのテーブルにひとつ、またひとつと涙が落ち、やがて、声を上げて泣き崩れてしまいます。
 家に帰ってこない両親のことを、心のどこかで信じ、その、優しかった頃の両親の姿に、気持ちを委ねていた昭乃。その気持ちが音を立てて砕け散り、それが涙となってテーブルを濡らしていました。
 涼子は昭乃の背中を優しく包み込み、一緒になって涙を流します。
 コーヒーのカップから湯気が消え、完全に冷たくなった頃、二人はほんの少しだけ落ち着きを取り戻しました。
「ぐすっ…い…衣装…、合わせないと…」
昭乃は涼子にそう話すと、立ち上がろうとします。
「昭乃…、…うん…そうね…、ぐす…、気分…転換しよっか…」
 二人は寄り添いあいながら部屋に戻り、どちらともなく着替え始めました。
 昭乃はその衣装を着ると、涼子に一生懸命にニッコリと微笑みます。
「…どう…?」
「うん…、よく似合ってる…えっへへっ。可愛いよ…シャムちゃん…」
「…ありがとう…涼子…」
「えへへ…、ラビちゃんだよ…」
「そうね…、そうだったわね。ラビちゃん…」
「シャムちゃん…。おいで…シャムちゃん…」
「涼…、ラビちゃん…」
 昭乃は涼子の腕に抱かれ、その身を委ねました。涼子は昭乃の耳に、「私が居るから…」と囁き、その頬にキスをします。
「ラ…ラビ…ちゃん…」
「…大好きだよ…、シャムちゃん…」
 涼子はもう一度、昭乃の頬にキスをすると、昭乃も涼子の頬にキスを返します。そして、涼子は昭乃を見つめると、その、濡れた瞳に吸い寄せられるかのようにして、唇を重ねました。
 昭乃は、ほんの少しだけ抵抗をするも、やがて涼子の唇を受け入れ、自分からも求めるようにして深く重ねていきます。
 その唇をそっと離し、涼子は照れくさそうに微笑むと、「奪っちゃった…」と、頬を染めながら呟きました。
「…奪われ…ちゃった…」と、昭乃は呆然としながら、涼子を見つめました。
「ごめんじゃ…済まされないわね…」
 俯き、落ち込む涼子に、昭乃は優しく微笑むと、もう一度唇を重ねます。
「…気にしないで涼子…、嬉しかった…」
「昭乃…」
「ふふっ。ねえ涼子、お風呂…入ろっか…」
「うん…」
 二人はそのまま脱衣所へと向かうと、一緒にシャワーを浴びました。湯船にはお湯が残っており、昭乃はそのお湯を抜くと、涼子と一緒にその湯船でシャワーを浴びます。
「お湯…、抜いちゃっていいの?」と、首を傾げる涼子。
「ええ…、たぶん…入ってると思うから…」
「そっか…」
 二人で背中を流しあいながら、湯船にお湯が溜まるのを待ちました。やがて、湯船にお湯が溜まり、二人で一緒に入ります。
 涼子の胸に背中を預ける昭乃。涼子は昭乃の髪に頬を寄せると、腰に手を回し、優しく包み込みました。
「まさか…涼子とこんな風になるなんて…」
「そうねえ…。私も…なんとかしなきゃって思って…どうにか慰めないと…って…。でもね? 私…黙ってたんだけど…その…」
「うん? なあに?」
「私ね、アニメでも…女の子しか好きになれなかったの…」
「そう…なの?」
「うん…。前に貸した『赤毛のアン』でも…主人公の女の子を好きになちゃって…。フレビスでもそう、ラビちゃんが…好きなの…」
「そう…。でもそれって…、現実とは違うんじゃ…」
「そう思ってたんだけどさ…、私…どうも小さい頃からそうなんだよね…」
「え…?」
「幼稚園でも…綺麗な先生が好きになったりとか、小学校でも…可愛らしい同級生の女の子が好きになったり…。どうしても男の子のことが好きになれなかったの…」
「そうなんだ…。それで…、私のこと…好きになっちゃったの?」
「…え…っと…その…、初めて会ったとき覚えてる?」
「ええ。あれは一年のときだったわね…。私が図書室の窓際で本を読んでたとき、声をかけてきたのよね」
「うん。たまにコンビニとかで見かけるし、商店街でも見かけてたからさ、ちょっと…ナンパしちゃった…」
「学校でナンパって…あんたねえ…」
「えへへ…。昭乃が手芸の本を読んでたっていうのもあるよ? 私その頃からコスプレやってたからさぁ」
「そうだったわね。それを初対面の私にいきなり話すんだもん…驚いちゃった…」
「えへへ…、話す切っ掛けが欲しかったんだもん…。でも、昭乃と仲良くなれて良かったよ…。私、友達少ない…と言うより、居ないからさ…」
「そうなの? 涼子だったら人気が出そうだけど…」
「そんなことないよ…。これでもクラスでは一番の成績だからね…煙たがられるのよ…」
「そう…、それは大変ね…。私も友達居ないから…」
「うそっ⁉ 昭乃は美人だし、物腰も穏やかだからモテそうだけど…?」
「そんなことないわよ…。こんな見た目で頭が悪いんだもん…。眼鏡だって…ゲームのやりすぎでこうなったわけだし…」
「ゲーム? 昭乃ってゲームやるんだ~、知らなかった。でも家にゲーム機置いてないよねぇ…」
「ええ、押し入れの奥にね…しまい込んであるの。最近は面白いゲームないからさ…やらなくなっちゃった…」
「そうなの?」
「ええ…。戦争ものとか、ゾンビとか、そんなのばっかよ…」
「うわぁ…それはヤダなあ…」
「でしょう? あ…ねえ、そろそろ上がらない? のぼせちゃう…。それにもう遅いし…」
「そうね…、明日はフレビスだもんね?」
 二人は脱衣所へと向かうと、あることに気が付きました。涼子は昭乃と顔を見合わせると、「着替え…どうしよ…」と呟きます。そう、着替えを脱衣所に持って来ていなかったのです。昭乃は取り敢えず、バスタオルを涼子に手渡しました。
「そうねえ…、バスタオルは…あるから良いとして…、部屋まで寒いわよ?」
「…それはそうなんだけど…、部屋までバスタオル一枚なの…?」
「あぁ…そっか…」
「ヤダ昭乃ってば、大胆ねえ~」
「ちょっと…もうっ、涼子ってば…。まあでも…、一人で居るときなんかは…そうしちゃうこともあるわねぇ…」
「え…? そうなの?」
「まあ…、夏なんかはね、お風呂上りとか…けっこうやっちゃうわよ?」
「へ~…。まあ…ウチはお父ちゃんもお母ちゃんも居るしなぁ…そんなことしたら怒られちゃうよ」
「それが普通なのよ。じゃあ…部屋まで寒いけど、行きましょうか」
 二人はバスタオルを体に巻き、衣装を持って足早に部屋へと向かいました。
 部屋に着くと、手早く着替えて二人で髪を乾かします。涼子は昭乃の髪をブラシで解かしながら、「これからどうするの?」と問いかけました。
「これからって…そうねえ…。でもさぁ…、帰ってきたことをメールでも電話でも、何も話さないってことは…、帰って来てることを私にも知られたくないのよ…」
「そう…よねえ…。そういえばさ…、私が電話したとき、なんで出てくれなかったの?」
「あぁ…ごめん…。鳴ってたのは知ってたけど…出る気分じゃなかったの…」
「そっか…、そうだよね、ごめん…」
「ううん。私も…ごめん。でも…、本当にどうしよう…、お母さんと顔を合わせたくないよ…」
「そうよねえ…。昭乃のお父さんは…、あぁ…知ってるわけないか…」
「うん…たぶん…。まだ向こうにいるって聞こえてきたから…」
「そうよね…」
 昭乃は涼子に悲しそうに微笑むと、「どういようもないわね…」と呟き、時計を見ました。
「もう…寝ましょう…?」
「うん…」
 二人は互いに手を取り合うと、ベッドへと向かい、毛布にくるまります。そして、二人は小さく「おやすみ」と微笑むと、瞳をゆっくりと閉じていきました。
 それから、だいぶ時間が経った真夜中のこと。時間はもう午前の二時を回っていました。涼子は眠れず、隣で背を向けて横になっている昭乃に、小さく「ごめんね」と呟きました。すると、昭乃は振り向き、「なんで…?」と問いかけたのです。
「あ…、起こしちゃった?」
「ううん…、なんとなく起きてた…。ねえ、なんで謝るの?」
「だって…、私が一方的に好きになっちゃって…、それで…昭乃…、無理してるんじゃないかって思って…」
「…そうねぇ…、最初は驚いたわ? でも、嬉しかったのは本当…」
「昭乃…」
「私は…、言っては悪いけど…、涼子に対して今まで一度も…そういう感情は抱かなかった…。友達…だもの…」
「そう…よね…」
「でも…、フレビスを好きになって…コスプレのことを受け入れていく内に、涼子のことが眩しく感じられてね…。それで…惹かれていくようになったの」
「え…? それって…」
「ふふっ…。毛糸のパンツもね…本当はもっと早く編み上がるはずだったんだけど…。涼子と一緒に過ごしたくて…ゆっくりと編んでたの。わざと間違えたりして…」
「そ…そうなんだ…。なんか照れちゃう…えへへっ…」
「ねえ涼子、私まだ…告白されてないんだけど…」
「ええっ? そう…だっけ? 好きだよって言ったけどな…」
「あれはシャムちゃんに言ったんじゃないの、私はまだ告白されてません」
「あぁ…えっと…。面と向かって改めてというのは…なんとも恥ずかしいもので…」
「言ってくれないんだ…。ふ~ん、涼子ってそういう人だったんだ…」
「いや、ええと…その…。好き…」
「…うん? もう一回言って?」
「好き、好きよ…昭乃…」
「うん…、私も、涼子のこと好き…」
 互いに頬を染めて、クスクスと笑いあうと、互いの唇に軽くキスをし、瞳を閉じました。
 二人はやがて眠りに就き、幸せな時間と静寂な空間が、二人を包み込んだのでした。






続く

 一次創作置き場

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