名劇SSブログ

世界名作劇場の二次創作SS(ショートストーリー)ブログです。※画像等の二次利用・無断転載はお断りしております。現在は「けものフレンズ」が中心となってしまいました。名劇関連は休憩中です(小説に出来そうなネタが無いです……スイマセン……)

フレンズビスケット 第八章:重なる心 重ねあう想い ※今回も百合表現が入ってますので、ご注意を。




※今回も百合表現が入っております。

はい、今回も百合小説でございます。ご訪問、そして拍手ありがとうございます。

もう皆さんこの文字数にウンザリという感じでしょうけれども、次週からパルメちゃんの連載を始められそうな雰囲気になってきましたので、次週までお待ち頂ければと思います。次週は土曜と日曜の午前中に「フレンズビスケット」アップして、その日曜日の、かつての名劇枠からパルメちゃんをスタートさせたいと思っております。

それではどうぞ。







  第八章 重なる心 重ねあう想い


 まだ陽も昇っていない、真っ暗な早朝。涼子は隣で眠っている昭乃に優しく微笑むと、そっとベッドから抜け出しました。台所へ行き、コーヒーを二つ淹れると、それを持って部屋へと戻ります。
 勉強机にそのコーヒーを置き、穏やかな寝顔を浮かべる昭乃に小さく微笑むと、そのベッドにゆっくりと歩み寄っていきました。
 そして、昭乃の耳元で小さく、「おはよう」と言います。
 昭乃は身をよじり、寝返りを打ってその声に少し抵抗をしました。涼子はどうしようかと首を傾げると。「早く起きて~」と、昭乃の体を揺さぶります。
「う~…ん…、なによ涼子…」
「フレビス始まっちゃうよ?」
「…え~…、もうそんな時間なの…?」
「うん…。コーヒーも用意しといたから、飲んで目を覚まそ?」
「う~…」
 昭乃は眠い目をこすりながら眼鏡を手探りで探し、それをかけると涼子に「おはよ…」と呟きます。
 涼子は昭乃にコーヒーを手渡すと、ベッドに腰かけました。
「先週観れなかったからさ、今日は楽しみだね?」
「う~ん…そうねぇ…。今日は何だっけ…」
「今日のお話しはねえ、ラビちゃんとシャムちゃんが山の長老の~、ヤギ仙人に会いに行く話しだよ?」
「そうだったわね。じゃあ、居間に行きましょうか」
 二人は上着を羽織ると、テレビが置いてある居間へと向かいました。
 そのテレビをつけ、昭乃は番組表を確認すると「今日は大丈夫よ」と涼子に微笑みます。
「よ~っし、今日こそラビちゃんとシャムちゃんを応援しようね?」
「ええ、そうね」
「あっ、そうだ、ねえねえ昭乃、コスプレしてから観ない?」
「ええ~っ? でも…もう時間ないよ?」
「あぁ…そっか…」
 涼子がそのテレビの画面に視線を移すと、そのすぐ後にオープニングが流れ始めました。
 二人で一緒にサビを口ずさみ、本編が始まると、じっと黙って一生懸命に観ていました。やがてアニメも終わり、二人で同時にあくびをすると、部屋へと戻っていきます。
 部屋は暖房が効いており、二人でもう一度ベッドに潜り込むと二度寝を始めました。二人が次に目を覚ました時は、時間はもうお昼前、二人は眠そうに眼をこすると、ベッドから起き上がりました。
「どうしようか…昭乃…」と、着替えながら話す涼子。
 昭乃は髪を整えながら、「そうね…。ねえ涼子、今日は出かけない?」と話します。
「出かける? いいけど…どこ行くの?」
「そうねえ…、まずはおっちゃんの店に行って…お昼食べて…、それから…、水族館へ行ってみない?」
「水族館? いいわね、それじゃあ…おっちゃんの店に行ったら、いったん帰ってもいい? カメラ取ってくるから」
「カメラだったら私のを使えばいいわ? あとでデータあげるから」
「そうだね、じゃあお父ちゃんとお母ちゃんに出かけること言っておくね?」
「うん」
 涼子が両親に電話をしている間、昭乃は身支度を済ませ、小さめの可愛らしいリュックにカメラとお財布を入れると、それを玄関のところへと置きました。
 その時、昭乃はなんとなく携帯を取り出すと、その画面を見ました。そこにはメールの通知が入っており、父親から一通、母親から二通入っていました。
 昭乃は父親からのメールを読むと、そこには、昭乃が元気にしているかどうかや、まだ仕事は終わりそうにないということが書かれていました。
それを読み終えると、その父親にメールを打ちました。それ送信すると、母親からの通知を消し、携帯電話を台所のテーブルへと置いて、自分の部屋へと戻ります。
「準備できた?」と、その部屋にひょっこりと顔を出す昭乃。涼子は「うん!」と笑顔で返事をすると、「じゃあ行きましょうか」と大きなリュックを「よいしょ」と背負いました。
「ねえ涼子…それで行くの?」
「ええ…、だってこれしか持ってきてないし…何か変かなぁ…」
「それじゃあ大変よ? 持っていくものって…お財布ぐらいよねぇ…?」
「でも…お土産とかさ…、色々と買うかもしれないし」
「それにしたって大きいわよ…登山に行くんじゃないんだから…。そうだ、私の貸してあげるから、ちょっと待ってて?」
 昭乃はクローゼットの中からそのリュックを取り出すと、それを涼子に見せました。
「どう? 可愛いでしょう?」
 それはピンク色の小さなリュックで、シンプルなデザインでしたが、ふたの部分の留め具にリボンがあしらわれていました。
「へ~え、可愛いの持ってるのね~」と、涼子は笑顔を見せると、昭乃からそのリュックを受け取りました。
「それじゃあ、使わせてもらうね?」
「ええ」
 二人は出かける準備を済ませると、早速出かけていきました。まずは商店街に向かい、二人がおっちゃんの店と呼んでいるラーメン屋、宮田食堂という店に行きます。
 そこは商店街が出来た時からある、創業五十年を超える昔ながらのお店でした。現在はラーメンを中心に提供しており、二人はそこのラーメンが大のお気に入りだったのです。
「ねえ昭乃、決まった?」と、隣に座る昭乃に問いかける涼子。二人はカウンターに座ると、お店のメニューを眺めていました。
「ええ、決まったわ」と、昭乃が涼子に視線を移します。
「じゃあおっちゃん呼ぶね?」と、涼子は右手を少し挙げると、「おっちゃん!」と元気な声を上げました。
「はいよ、決まったかい?」と、その店主が涼子に顔を向けました。
「えっとねえ、中華そばの、から揚げセットと~」と、涼子はそう店主に言うと昭乃に視線を移します。
「私は豚骨ラーメン、チャーシュー熱盛りで」
「はいよ!」と、威勢よく返事をする店主。注文を伝票に書くと、調理を進めました。
 涼子は昭乃に「え~…」と視線を向けると、「熱盛りって…いきなり凄いの食べるわね…」と話しかけます。
「ええ、お腹すいてるの、朝ごはん食べ損ねたし。それに、一回試してみたかったのよ」
 昭乃が注文したチャーシュー熱盛りとは、その店の特製であるチャーシューがどんぶりに山盛りになって提供されるもので、どのラーメンでも選べるオプションメニューでした。
 只でさえ大きく厚切りのチャーシューが、どんぶりに山盛り二十枚も乗っているのです。それは大の男でも、そう簡単には食べ切れないほどのものでした。
「へいお待ち!」と、二人の前に注文したラーメンが置かれ、早速そのラーメンを「いただきまーす!」と頬張ります。
 涼子はから揚げを中華そばのスープに浸すと、それを「はふはふ」と美味しそうに頬張り、昭乃は山盛りに乗せられたチャーシューを、麺と一緒にがっつきました。
 美味しそうな音を立てながら一生懸命に食べる二人。上着を脱ぎ、おしぼりで額の汗を拭く二人の食べっぷりに、店主は「相変わらず、いい食べっぷりだねえ」と感心します。
 やがて食べ終わり、水を飲み干すと、「ごちそうさま~!」と手を合わせました。
 少し食休みした後、代金を払ってそのお店を後にします。
 駅まで歩き、ホームに行くと昭乃はベンチに座りました。涼子はその様子を見て、「大丈夫?」と声をかけます。
「ええ、大丈夫よ。ちょっと食べすぎたわね…出かける前に食べるもんじゃないわね、あれは」
「そうねぇ…、どうする? キツイならまた今度にする?」
「ううん、平気。そこまでじゃないから」
「そう? 無理しないでね?」
「ありがとう」
 やがて、ホームにアナウンスが流れ、二人が乗る電車が滑り込んできました。その電車に乗ると、空いている席を探し、そこに腰かけました。
 少しして電車が走りだし、二人は軽くお喋りをしながら、目的の駅までの時間を楽しく過ごしていました。そして、その駅に着くと今度はバスに乗り換えます。
 駅から出て、バス乗り場へと向かうと、丁度よく、そのバスが止まっていました。二人は駆け足でそのバスに乗り込むと、運転手の「まもなく発車致しま~す」というアナウンスが響きました。
「ギリギリだったね~」と、ホッとする涼子。
「そうね~、これを逃すと一時間は来ないからねぇ…」と、昭乃もホッとした表情を浮かべます。
 バスのドアが閉まり、ゆっくりと動き出すと、二人は吊革に掴まります。
「楽しみだね~」と、昭乃に微笑む涼子。
「そうね~、水族館なんて…何年振りだろ…」と、昭乃は窓の外へと視線を向けました。
「そんなに行ってないの?」
「ええ…、中々ね…行く機会が無くって…」
「そうなんだ…。そういえば私も…去年に行ったっきりだ…」
「そうなの?」
「うん。お父ちゃんがね、くじで水族館のチケットを当ててね、三人で行ったの」
「そうなんだ…」
「うん。ウチって貧乏だし…忙しいし、あんな機会でもなきゃ行けなかったわ? 定休日も一日しかないしね…」
「涼子の家も色々と大変なのねえ…。じゃあ…そのときはどうしたの?」
「臨時休業にしたの」
「へえ…」
 二人がそう話していると、「次は水族館前です」という、自動音声のアナウンスが流れてきました。
 やがてバスはそのバス停に停車し。二人はバスから降りてきます。水族館前とは言え、そこから歩いていくのです。女の子の足で二十分は掛かろうかという距離でしたが、二人は楽しくお喋りをしながら、その道中を楽しんでいました。
 その水族館はイルカやアシカ、シャチなどの展示はされておらず、小さな規模のものでしたが、近隣の住民に親しまれ、休日には親子連れなど、地域の人々に愛されている水族館でした。
その水族館に着くと、二人は真っ先にペンギンを見に行きました。
「やっぱりペンギンを見ないとね~」と、涼子はそのペンギンを見ながら笑顔で話します。
 そこに展示されているペンギンはフンボルトペンギンという種類で、多くの水族館や動物園が飼育しているペンギンでした。
「ねえ涼子、ほら見てあの子、じっと目を閉じて…なにしてんのかしらねぇ…」
「ホントだ。きっとアレよ、瞑想してんのよ」
「め…瞑想…?」
「そっ。ああやって瞑想して、いつか空を飛べるように訓練してるのよ」
「…ぷっ…あっはははっ、面白いこと想像するのね~」
「えへへ~。でも、夢があっていいでしょ?」
「そうね、夢…かぁ…。ねえ涼子?」
「うん?」
「涼子にはさ…夢とかってあるの…?」
「そうだねえ…、あるにはあるよ?」
「どんな…?」
「えっと…、私ね、将来は舞台とかの衣装を作りたいと思っているの」
「舞台…」
「そう…。色んな衣装を作って…それを役者さんに着てもらうの…。できれば自分で着たいけど…演技とか無理だもん…」
「そっか…」
「ねえ、昭乃は? 何か夢とかってある?」
「私は…そうね…。分かんない…」
「そう…。でも…その内見つかるよ、きっと」
「うん…。ねえ、次…見にいかない?」
「ええ、次は何を見にいく?」
「そうねえ、クラゲ見にいこうよ」
 昭乃は涼子の手を引っ張って、そのクラゲが展示されている水槽へと向かいました。
「この水族館って、イルカとか…そんなのは居ないけど、こういうのを展示してあるから、落ち着いてて良いわよね」
 昭乃は涼子にそう話すと、ニッコリと微笑みました。
「そうね~ぇ、デートにはもってこいよね」
 涼子はその手を離すと、昭乃の腕に自分の腕を回しました。昭乃はそんな涼子に優しく微笑むと、二人でそのクラゲを眺めていました。
 小さな水族館なので、全て見終わるのさほど時間はかかりませんでした。二人はその水族館のレストランへと向かうと、席に座って少しの休憩を取ります。
「昭乃は何にする?」と、涼子はメニューを見ながら昭乃に問いかけました。
「そうねぇ、ペンギンアイスを」
「分かった、じゃあ私もそれにしよっと」
 涼子はカウンターに向かうと、そのペンギンアイスを注文し、それを持って席へと向かいます。
 ペンギンアイスとは、その水族館がオリジナルで提供するアイスクリームで、チョコとバニラがカップに入って、そこに生クリームがたっぷりとかけられたアイスクリームでした。
 二人はそれを頬張りながら、学校の授業のこと、課題のこと、それぞれのクラスの担任のことなど、他愛のない話しをして過ごします。
 そして、夕方の五時を迎え、館内に閉館のアナウンスが流れ始めました。
「もう閉館だってぇ…」と、涼子は昭乃に残念そうな表情を向けます。
「そうねえ…、来た時間が遅かったからね、今度は早めに来ましょう?」
「うんっ。それじゃあ、混む前に帰りますか」
 二人は売店でお土産を買い、水族館を後にします。そして、バス停までの道を腕を組んで歩いていきました。そのバス停の時刻表を見ると、バスが来るまでにまだ十五分ほど時間がありました。
「まだ時間あるわねえ…どうする昭乃?」
「そうねえ…待ってましょう? この辺にはコンビニも無いし…」
「そうねぇ…。ねえ昭乃? こんなこと聞くのはアレかもしれないけどさ…どうして急に水族館に行こうって誘ったの?」
「え? …え~っと…何でだろ…、涼子とどこか行きたいって…そう思ってて…」
「それで水族館?」
「うん…」
「そっか、えへへっ、ありがとう昭乃、誘ってくれて。楽しかったよ~」
「ホント? 私も楽しかった、また一緒に行こうね?」
「うんっ♪」
 二人で一緒に、笑顔で過ごしている内にバスがやって来ました。そのバスに乗り込み、電車を乗り継いで、自分達が住む町へと着いたのが夜の七時過ぎ。二人は夜の冷たい風に体を震わせながら家路を急ぎます。
「ねえ昭乃? 夕ご飯どうする? まさかこんな時間になるなんて思ってなかったよぉ…」
「そうよねぇ…、移動時間って…何故か帰りの方が時間取られるのよね…」
「うん…。もうさ、おっちゃんの店で済ませようか?」
「そうねえ…、でも、お昼と続けて…っていうのはちょっと…。スーパーでお弁当買わない?」
「う~ん…そしようか。今頃の時間だと割引シールが貼ってあるかもしれないし」
 二人は商店街へと向かうと、そのスーパーへと向かいました。お目当てのお弁当は“夕方出来立て”というシールは貼ってあったものの割引シールは貼られてはいなく、少々当てが外れてしまいましたが、美味しそうなお弁当を買って満足げな表情を浮かべる二人でした。
 涼子はから揚げ弁当を、昭乃はオムライス弁当をそれぞれのリュックに入れると、昭乃の家へと向かいます。
 家に着くと昭乃は涼子に、「お風呂にする? それとも食事を先にしようか?」と問いかけました。
 すると涼子は、「そうねえ…いっそ私にする?」と、昭乃にウインクをしました。
 昭乃は涼子に「お風呂にするわね?」と言うと、そそくさとお風呂場へと向かいました。
「ちょっと昭乃~、冗談だってば~。そんなに怒っちゃイヤっ」
「怒ってないわよ~? 涼子…と…するんだったら…、お風呂入っとかいないと…って思って…」
「えっ…? いや…そんな…、本気にされても困る…というか…、まだ早いっていうか…」
「…冗談よ」
「ええっ⁉」
「あんたの冗談に付き合ってたら、夜が明けてしまうもの」
「そんなぁ~、ひどいよっ」
 頬をぷっくりと膨らませる涼子に対し、昭乃は「ふふふっ♪」と微笑みます。
涼子は「も~」と、照れくさそうに微笑むと、二人で一緒に部屋へと戻っていきました。
着替えを用意し、お風呂場へと向かう二人。その脱衣所に着替えを置くと、昭乃は涼子に、「先に入ってて?」と言いました。
「うん、先に入って待ってるよ」
「違うわよっ、お弁当とか、お茶の用意とかあるから、先に入ってって、そういう意味」
「ちぇ~っ、一緒に入らないの~?」
「も~…気が向いたらね?」
 昭乃は涼子に頬を染めながらそっぽを向くと、そのまま台所へと向かいます。
 お弁当を袋から出し、お湯を沸かして紅茶を用意しました。
「緑茶の葉っぱがあればなぁ…」と、そう呟きながらヤカンを火にかけると、ふと、テーブルに置いた携帯電話に目をやりました。
 それを手に取ると、「メールが入ってる…電話も…」と呟きます。
「国際電話を…わざわざ…。お母さんからも入ってる…」
 昭乃はとりあえず、そのメールに目を通すと、大きくため息をつき、ガスコンロの火を止めました。
 同じ頃、涼子は湯船で鼻歌を歌いながら、ゆっくりと過ごしていました。
「あ~あ…昭乃と入りたかったなぁ…。まあでも…まだ早いよねぇ…、昨日は入っちゃったけど…、わきまえた方がいいのかな…。でも…中学の修学旅行の時、大浴場で女子のみんなと一緒に入ったから…それと同じよね…」
 涼子はそんなことをぶつぶつと言いながら、湯船に浸かっていました。するとそのときです、脱衣所の方から「何をぶつぶつ言ってるのよ」と、昭乃の声が聞こえてきました。
「あら、聞こえちゃった?」
「聞こえちゃった? じゃないわよ、…っもうっ」
 昭乃はそう言いながら、擦りガラスの扉を開けると、「私もお邪魔するわね?」と、涼子に微笑みました。
「ええっ? 一緒に…入らないんじゃ…」
「いいじゃないの…入りたかったんでしょう?」
「ええっと…まあその…」
「一緒に居るときぐらい…良いかなって思うけど…」
「昭乃…」
 昭乃は涼子に小さく微笑むと、シャワーで体を流し、涼子に体を預けるようにして湯に浸かりました。
「ふう…あったかい…」
「昭乃…、どうしたの?」
「うん? …何が?」
「うん…、なんか…積極的だなって思って…」
「そう…? そうねえ…、あのね涼子…」
「うん…」
「…お父さんとお母さん…、離婚するかも…」
「…ええっ⁉ ちょっと…待ってよ昭乃、いきなり過ぎるよ…!」
「でも…じゃあどうやって切り出せばよかったのよ…」
「そんな…でも…、そうよね…。でも…本当なの?」
「ええ。出かける前にね、お父さんに…お母さんのこと、メールで伝えておいたの。そしたら…余程気になったんでしょうね、メールがバンバン入ってたわ? 国際電話も入ってた…」
「えぇ~…、そりゃあ…誰だって気になると思うけど…。でも昭乃? 携帯を全然見てなかったじゃない」
「うん。だってウチに置いてきたんだもん、こうなるだろうって思ってね。だって…もう面倒じゃん…」
「昭乃…」
「色々と…、もう疲れちゃった…。お母さんからもね…メールが入ってたの…。これがもう…おかしくって悲しくって…、嫌になったわ…」
「そう…。それで…お母さんはなんて…」
「聞きたい? えっとねぇ…、おかしな冗談言わないで…だって…。東京の…なんとかって会社の社長と会ってたって言うのよ…それも家でよ? おかしくない?」
「ええ…。でも…実際に会ったのよね? この家で…。私も遠くからだけど見たもん…」
「うん…。だからそのことをお母さんにメールしといた…。お父さんは…何も言わないのがいい証拠だ…なんて、メールで言ってたけど…」
「そう…なんだ…。じゃあ…これからどうなるの?」
「分かんない…。こういう時…ゲームだと…、浮気した方がどこかへ出ていくんだけど…」
「えぇ~…ゲームでそこまでやるの…?」
「うん…、ゲームにもよるけど…」
「そうなんだ…。でも…大変なことになったわね…」
「ええ…、大変なことしちゃった…。でも…黙っておけないわよ…そんな卑劣なこと…」
「そうよね…」
「……ねえ涼子…」
「…うん?」
「…もしさ…、私がどこかへ行くことになったら…、その時は見送ってよね?」
「な…何でよ…、どこかに行くってそんな…」
「もしよ…、もしもの話し…。離婚したらどうなるか分からないじゃない…」
「それは…そうかもしれないけど…」
「ごめん…こんな話しをしちゃって…、ごめん…」
「…ううん…、いいよ…、むしろ話してくれてよかった…」
「涼子…」
「だって…、昭乃が一人で苦しんでるなんて…耐えられないよ…」
 涼子は昭乃の腰に腕を回すと、ギュッと抱きしめました。
 お風呂から上がり、ダイニングのテーブルで温めたお弁当を食べる二人。会話こそ無かったものの、二人の表情は幸せに満ちていました。
 ところがその時です。昭乃の携帯電話がテーブルの上で震えだしました。昭乃はそれを手に取ると、画面を確認します。
「お母さんからだ…」と、表情を凍らせる昭乃。涼子のその様子をじっと見ていることしかできませんでした。
 昭乃は、震える手でその携帯電話を握り締めると、通話ボタンを押し、「はい…」と、小さな声で電話に出ました。
 その様子をじっと見る涼子。箸を置き、電話の向こうの声に話している昭乃を心配そうに見つめます。
「…でも…お母さん! …え? 証拠…?」
 昭乃は電話から耳を離し、涼子に視線を移しました。涼子は黙って頷くと、手を伸ばし、昭乃から電話を受け取ります。
「もしもし? …はい、涼子です…ええ…、友達の…」
 昭乃は涼子の様子を、祈るようにしてじっと見つめています。
「…ええ…はい…。証拠なら…、写真とかではないですけど…、私が見ました…。はい…ええっ⁉」
 涼子はその、昭乃の母親の言葉に驚き、思わず立ち上がってしまいます。涼子こは悔しそうな表情を浮かべながら、少し瞳を潤ませていました。
「…はい…、でも…! 昭乃だって声を聞いているわけだし! …なんで…」
 涼子はうなだれながら椅子に座ると、昭乃に携帯電話を返しました。その電話は既に切れており、昭乃はその携帯電話を悲しそうに見つめると、テーブルにそっと置いたのです。
 二人は押し黙ったまま視線を落とし、その空間には重く暗い空気が漂っていました。
 涼子は、無理やり笑顔を作ると、昭乃に「えっと…、とりあえず…食べよ?」と、箸を取ろうとしました。
「…そんな気分じゃないわよ…」
「そう…だよね…」
「何よ…証拠って…、…何よ…」
 昭乃は悔しそうに手を握り締め、小さく震わせていました。涼子は昭乃の表情を窺うと、その瞳には涙が浮かんでいました。
 その涙が頬を伝い、テーブルにひとつ、またひとつと、落ちていきました。
「昭乃…!」と、涼子はすっくと立ちあがると、昭乃の背中をそっと包み込みました。
 その涼子に体を預ける昭乃。昭乃は涼子の腕をギュッと掴むと、声を上げて泣きました。

 それから暫くして、昭乃は次第に泣き止むと、涼子に小さく微笑みました。
「ぐすっ…、ありがとう…涼子…」
「うん…。大丈夫?」
「ええ、もう…大丈夫…。ごめんね…涼子…。食事…続けましょう…?」
「うん…」
 昭乃は涼子に、一生懸命な微笑みを向けると、冷めたオムライスを、冷たくなった紅茶で流し込みました。
 二人とも食事を済ませると、後片付けをし、部屋へと戻っていきました。涼子は、元気のない昭乃をなんとか励まそうと、リュックからお土産を取り出すと、それを昭乃に見せました。
「じゃじゃ~ん。水族館特製の、チーズケーキだよっ♪ 一緒に食べよう?」
「え? こんな時間に?」と首を傾げる昭乃。
 その時間を見ると、もう既に夜の十時を回ろうとしていました。
「あぁ…、じゃあ…えっと…、そうだ! フレビス観ようよ! コスプレしながらさ」
「え…ええ…。うっふふっ…ふふふっ」
「うん? なによ…どうかしたの?」
「ううん、ごめんなさい。一生懸命に励ましてくれてるんだな~…って、思って」
「むぅ…、そりゃあ励ますよ…だって心配だもの…」
「うん。ありがとう涼子…」
「うんっ。えっへへ…」
 二人は早速、そのコスプレ衣装に着替えると、居間へと向かい、フレビスを観始めました。
「やっぱりコスプレして観ると、臨場感が違うわね」
 涼子は呟くようにしてそう言うと、画面に釘付けになっていました。昭乃もまた、その言葉に「そうね…」と、呟くようにして返事をすると、涼子と同じように、夢中になって観ていました。
 ラビちゃんがシャム子と手を繋ぐと、二人も同じようにして手を繋ぎ、抱き合って喜ぶシーンでは、同じようにして、抱き合って喜んでいました。
 そして、そのアニメの話題のシーン、シャム子がラビちゃんを毛づくろいするシーンでは、二人はなんとなく恥ずかしそうに寄り添っていました。
「やっぱり…毛づくろいは無理よね…」と、苦笑いを浮かべる昭乃。
「そうよねえ…。シャムちゃんってさぁ…ヒトの姿をしてても、やっぱり舌はザラザラしてんのかしらね?」
「さあ…。その辺は涼子の方が詳しんじゃないの?」
「そうなんだけどさぁ…、設定書には何も書いてなくって…」
「そうなの?」
「うん…。あ…、ラビちゃんと鼻チュウしてる…」
 涼子の言葉に、昭乃がその画面に目を移すと、ラビちゃんとシャム子が鼻と鼻と近付け、互いに微笑みあっていました。
 そして再び涼子に視線を戻すと、涼子は瞳をらんらんと輝かせながら、昭乃を見つめていました。
「えぇぇ…っと…、するの…?」
「うん」
「そんな…もぅ…」
 小さく頬を膨らませる昭乃に、涼子は鼻を近付けていきます。二人は瞳を閉じ、ゆっくりとその鼻をくっ付けると、互いに恥ずかしそうに微笑みました。
「もう…涼子ったら…」と、頬を染めながら頬を膨らませる昭乃。
 涼子は「えへへ~」と照れ笑いを浮かべると、「今度はぁ…」と、唇を寄せていきました。
 すると、昭乃はその唇を右手の人差し指で止めました。
「え~…なんでぇ~?」と、残念そうな表情を浮かべる涼子。それとは対照的に昭乃は、「もうっ」と、そっぽを向いてしまいました。
「なんでも何も…ムードなんてなんにもないじゃない」
「ムード…? ムードがあれば良かったの?」
「ええっ…と…、そうじゃなくて…」
「ふ~ん…あっははっ」
「なによぉ…何で笑うのよぉ…」
「あはははっ、昭乃、元気になったね?」
「え…、あぁ…うん…」
「うっふふっ。ねえ昭乃? どんなことがあっても…私が居るから…、安心して?」
「涼子…」
「今のままじゃ…力も足りないと思うけど…、その時はお母ちゃんとかお父ちゃんが力になってくれると思う…たぶん…。だからさ…、大丈夫だよきっと、なんとかなるよ…」
「…うん…、ありがとう…涼子…。そうね…、落ち込んでたって…どうにかなるわけじゃないもんね…」
「うん…、でもさ…大変なことになったね…」
「ええ…。でも…一応だけど、お母さんとお父さんに謝っとく…」
「なんで? 謝るにしたって…どうやって…」
「ごめんなさいって…、メールするしかないわね…」
「そんなっ……でも…そうするしかないか…」
「うん…、だって…私達…まだ子供だもん…、大人達のことを…自分達でどうにかできないもの…。ましてや…会社の人が関係してると…余計にね…」
「そうよねぇ…。あ~あ…こういう時…早く大人になりたいなって…思うわよね…」
「そうね…。でも…私は…、そんな気持ちで大人になりたくない…」
「え?」
「…今回のことで…、私は…、人を愛せる大人になりたいと思った…。そりゃあ…お母さんのも…一種の愛かもしれないけど…、そういうんじゃなくて…、なんて言ったらいいのかなぁ…、つまり…その…」
 昭乃は、涼子の瞳を見つめると、「傍に居てほしい人を…傷付けたりしないように…生きたい」と、真剣な瞳を向けました。
「昭乃…」
 互いに唇を寄せ、深く重ねていく二人。ブルーレイの再生はとっくに終わって、画面は真っ暗なままになっていました。
 涼子はその画面に目を向けると、「止まってる…」と呟き、昭乃がテレビとデッキのスイッチを切りました。
 その真っ暗な部屋に、二人の体温と鼓動が重なっていき、互いの気持ちを確かめ合うようにして、心を重ねていきました。






続く

 一次創作置き場

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