名劇SSブログ

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フレンズビスケット 終章:フレンズビスケット





今回で最終回でございます。長い間ホント、長文をすいませんでした。次回から…と申しましょうか、今日の19時30分、いわゆる名劇枠でパルメちゃんを新連載いたします。そちらの方も宜しくお願い致します。

それではどうぞ。








  終章 フレンズビスケット


 その年の夏、涼子は夏休みを利用し、東京へとやって来ました。もちろん、昭乃も一緒です。涼子はお盆の連休に開催されるイベント、『フレンズビスケット夏祭り』にスタッフとして参加するため、上京してきたのでした。
 涼子は新たに、フレンズビスケットのゲストキャラクターである小さなウサギのしらたまちゃんと、同じくゲストキャラクターである猫のミケ子、通称ミケちゃんの衣装を製作しました。
 涼子はしらたまちゃんを、昭乃はミケちゃんの衣装を着て、その会場でイベントスタッフとして参加したのです。ファンとの撮影や、握手等、様々な交流イベントに参加したりと、立派に仕事をしていました。
 そんな時、声優が主題歌と挿入歌を披露するため、ステージに上がってきました。声優はそれぞれが演じるキャラクターの衣装を着ており、涼子は必死になってラビちゃんの衣装を着た声優に声援を送っていました。
 昭乃はその横で、少し呆れながらもステージを楽しみ、同じく声優に手を振って声援を送っていました。
 やがてトークイベントに移り変わり、涼子と昭乃は会場のスタッフと一緒に、物販の売り子をしていました。するとその時、ラビちゃんの声優が「さっきねえ…」と、それとなく涼子のことを話し始めたのでした。
「コスプレをした子が凄い一生懸命に応援してくれてぇ…、どこ行っちゃったのかな?」と、その声優はそれとなく会場を見渡しました。
 涼子はスタッフとして来ていた為、手を挙げようとしたところ、隣に居た男性のスタッフに「そういうの駄目だから」と、少し睨まれてしまいました。
 涼子はしゅんとしながら、「すいません…」と、頭を下げることしかできませんでした。
 その隣に居た昭乃は涼子に、「仕方ないわよ…、気にしたら駄目よ?」と、優しく微笑むと、涼子は「うん」と、可愛らしく微笑みました。
 やがてイベントも終わり、物販の方も人が少なくなってきた頃、涼子と昭乃はスタッフから呼び出され、関係者しか入れない場所へと連れていかれました。
「きっと…さっきのこと怒られるんだわ…」と、涼子は不安そうな表情を浮かべていました。
 昭乃は涼子に、「大丈夫よ…きっと。私も一緒だから…」と、その手を優しく握り、微笑みを向けました。
 男性スタッフが二人を連れて、ある部屋の前まで来ると、「さあ入って」と、二人をその中へと迎えました。そこはなんと、声優の控室だったのです。声優はまだステージでの衣装を着ており、二人はその光景に唖然としました。
 声優達はその二人を笑顔で出迎えると、「あなたがさっきの?」と、ラビちゃんの声優が涼子に笑顔を向けました。涼子は呆然としながら、ただ黙って立っているだけでした。そんな涼子を昭乃が肘でつつくと、「へっ⁉」と、変な声を出してしまったのです。
 涼子は頬を染めると、小さく「はい…」と、その声優に返事をしました。
「応援してくれてありがとう。本当は…こういうこと良くないんだけど、あなたがスタッフだと聞いて…それで呼んだの。ごめんなさいね? お忙しいのに…」
「へ…はっ…いえ! そんなこと…、あ…あの! 好きです!」
 涼子の言葉に、その声優は目を丸くして驚きました。涼子はその瞬間、顔を真っ赤にして、「あ…いえ…、ラビちゃんが…好きで…」と、俯いてしまいました。
 声優は涼子に「ありがとう」と優しく微笑むと、その目の前で「ラビちゃんだよっ、よろしくね♪」と、演技をしてくれたのです。涼子はそれに大喜びし、声にならない声で「きゃ~っ」と、顔を両手で覆いました。
 昭乃もその光景に「凄い…」と、自分でも不思議なくらいに真顔で驚いていたのです。二人はそれぞれの声優と言葉を交わし、握手をすると、スタッフとして記念撮影に参加しました。そして、サインが書かれた色紙を貰うと、名残惜しそうにその場を後にしたのです。
 やがてイベントも終わり、二人は会社側が用意したホテルへと向かうと、その部屋に向かいました。
「凄い一日だったね~」と、ベッドに倒れこむ涼子。
「そうね~…もうへとへと…」と、昭乃も同じくベッドに倒れこみました。
「ねえ昭乃ぉ…、同じ部屋だねぇ…えへへっ」
「そうねぇ…、久しぶりに…一緒に過ごせるわね…」
「うん…。ねえ、シャワーしよっか…」
「そうねぇ…、お先にどうぞ?」
「え~…一緒に入ろうよ~…」
「狭いから無理よ…。それに…疲れてるから…、たぶん…お風呂の後…寝ちゃう…」
「そうねえ…私も…。お腹空いたっていうより…もう眠いもん…」
 二人はイベントの最中にも、スタッフからの差し入れであるお菓子等の食べ物を口にしていましたが、ちゃんとした食事はしていませんでした。しかし、二人は胸がいっぱいなのか、空腹感が全くありませんでした。
 涼子の後に昭乃がシャワーを浴び、持って来ていたパジャマに着替えると、それぞれ近況を話しました。特に涼子は、昭乃に東京での暮らしや、新しい学校でのこと、虐めに遭っていないかなど、細かく問いかけていました。
 昭乃は涼子に、優しく微笑みながら、その問いかけに応じていきます。
「…それで…、新しい友達とかできた?」
「ううん…、残念ながら…。でも…今のところ虐めとかはないから、安心して?」
「そう…良かったぁ…。それだけが心配だったの、虐められてたらどうしようって…そう思って…」
「ありがとう…涼子、心配してくれてるのね…」
「そりゃあ…そうよ…、恋人のことだもの…心配するよ…」
「涼子…、優しいね…」
「…えへへ…。それで昭乃? 新しいところはもう慣れた?」
「う~ん…、そんなに出歩かないから…分からない場所だらけよ…」
「そっか…。お父さんとは…相変わらず?」
「うん…、二人とも…相変わらず…」
「そう…」
「……ごめん涼子…」
「…え? どうして謝るの…?」
「…私…嘘つきだ…」
「え…?」
「私…、涼子に嘘言ってた…。学校には行ってるけど…馴染めなくて…。最初は行ってなかった…」
「昭乃…」
「やっぱり…私みたいなのは煙たがられるのね…、最初は酷いことされたわ…」
「え…? 酷いことって…大丈夫だったの?」
「うん…。私も色々と警戒してたから…私物とか…教科書とか、大丈夫なようにしてたけど…机とか椅子とか…、スプレーで落書きされて…」
「そんな…! 酷い! ほかには? 叩かれたり…悪口言われたり…されなかった?」
「叩かれるようなことはされなかったけど…、たぶん何か言われてたわね…。イヤホンしてたから何も知らないけど…」
「そう…。新しい学校とか行くと…そういうことってあるよね…可哀相に…。そんな風に心配することしかできないけど…ごめんね昭乃…」
「いいのよ…、そんな風に自分を思わないで? 私は…それだけで充分よ…」
「昭乃…」
「それに…、今まで黙ってたけど…、似たようなこと…あったから…」
「え…? それって…どういう…」
「…涼子を心配させてしまうから…黙ってたけど…、私…今までもそうだったの…」
「そんな…、それじゃあ…ウチの学校でも…」
「うん…。でも…そんなに酷いことはなかったわ? 私が…一応ではあるけど…、社長令嬢だったからでしょうね…、手は出されかなった…。教科書とかも全部スキャンして…タブレットに入れてたから…何かされるようなことはなかったし、靴とかも自分で隠しておいたから、自分で色々と守ってたのよ…」
「そんな…。ごめん昭乃…、気付けなくて…ごめんなさい…」
 涼子は昭乃の話しを聞き、泣いてしまいました。昭乃は涼子に優しく微笑むと、肩を抱き、「ありがとう…」と、額にキスをします。
「大丈夫だから…私は…。自分でも多少は分かってたし…。それに、遠回しに陰で仕返ししてたから…」
「ぐす…っ…、そう…なの…?」
「ええ。ウチの会社の社員の娘とか…息子とか居たから…校長と教育委員会に両親の名義で全部報告したの。だから色々と大変なことになってたわねぇ…」
「ぐすっ…、そうなんだ…。えへへ…、さすがはお嬢様だね…ぐす…」
「ええ…。わたくし、お嬢様ですのよ? こう見えても。うっふふっ♪」
 昭乃は涼子の頭を優しく撫でると、涙を指で拭いてやり、「でも…」と言葉を続けます。
「今の学校では…親切な先生が心配してくれてね、保健室で勉強してるの…。帰る時間はみんなと会わないように…って、保健室の先生が送っていってくれる…」
「そう…なんだ…」
「それに、私だって…黙ってやられてるわけじゃないの。スプレーで落書きされた机と椅子の写真をね、校長先生に見せたの。そしたら凄い騒ぎになって…。結局、その生徒が特定されてね、弁償騒ぎになったの」
「そうなんだ…。でもさ…余計に酷いこと…されなかった? 虐めってそういうのあるから…」
「平気よ、もうその教室には行ってないもの」
「昭乃…それじゃあ…、ずっと保健室に…ひとりで…?」
「うん…。でも心配しないで? その先生ね、女の先生で、お母さんより年上で…凄く優しいの。その先生の子供さんとも仲良しになっちゃった」
「そうなの? なんだ~、友達居るんじゃ~ん」
「ふふっ、お友達って言うより…弟って感じだけどね?」
「へ~え、じゃあ歳が離れてるんだ…昭乃と」
「うん。その子は中学に上がったばっかりの子でね、なんと、フレビスが大好きな子なの」
「え~っ⁉ そうなんだ~! ねえねえ、その子は誰が好きなの?」
「えっとねえ、シャムちゃんが一番可愛くて、でもラビちゃんが一番好きだって言ってた」
「へ~え…なんか複雑ねえ…。でもそっかぁ…男の子にも人気なんだね~」
「そりゃあそうよ~、あんな服装で、ほとんどの子がミニスカートだし、可愛いし、みんな好きになるわよ~」
「そっか~、そうだよね~、女の子可愛いもんね~…えへへへ…」
「…鼻の下…床についてるわよ?」
「そんなに伸びてないよっ。…あっははっ」
「ふふふっ…。憧れちゃうなぁ…、私も…あんな衣装を着て…いつか…」
「…昭乃…?」
「うっふふっ。ねえ涼子…、私の夢…見つかったかも…」
「ホント? …聞かせて?」
「う~ん…もう遅いし、そろそろ寝ない?」
「え~…、いやだ~。聞かせてよ~」
「タクシーの時間…厳守でしょう?」
「あぁ…そうよねぇ…」
 涼子が部屋の時計を見ると、もう既に日付が変わっていました。そのホテルのチェックアウトは午前十時となっており、しかも、会社が用意したタクシーに乗って、駅へと向かわなければなりませんでした。
 二人は同じベッドに入ると、頬を少し染めて、互いに微笑みあいます。
「じゃあ…、今度…聞かせてね?」
「うん…。じゃあ…おやすみ…涼子…」
「おやすみ…昭乃…」
 二人は見つめあうと、軽くキスをし、その目を閉じて眠りに身を任せました。
 次の日にはそれぞれの場所へと帰り、それぞれの生活が待っていました。涼子は家の手伝いをしながら、大学へと上がるために勉強を続け、昭乃もまた、自分の時間を精一杯に楽しもうと、お世話になっている先生の家で勉強をしたり、その家の子と遊びながら過ごしていました。


 涼子は高校を卒業後、無事に大学へと進学し、衣装製作の勉強を頑張っていました。一人暮らしを始め、その大学の近くに昭乃と二人でアパートを借り、そこで生活をしていたのです。
「それじゃあ、行ってくるわね?」
 昭乃はベッドで眠っている涼子に声をかけ、出かける準備を済ませました。
「う~ん…いってらっさ~い…」
「もう…涼子ったら~」と、小さく頬を膨らませる昭乃。涼子は相変わらず、布団にくるまってもぞもぞとしていました。
「早く起きないと~、時間いいの?」
「う~ん…、起きる…。昭乃も…お仕事頑張ってねぇ…」
「ええ。今日は午前中だけだけど…レッスンがあるから、ちょっと遅くなるわね」
「うん…。私も…今日は夕方まで…、ソーイングのバイト…」
「授業はないの?」
「うん」
 昭乃はフレビスのイベントで、その声優達と出会って以来、衣装を着て演じることに憧れはじめていたのでした。そしてついには、劇団の門を自ら叩いたのです。その劇団は小さく、人数も少なかったのですが、幼稚園や学童を中心に地域を巡業いたのです。
 昭乃はその劇団で仕事を学びながら、レッスンを受けていたのでした。
「そう、それじゃあ夕ご飯、どこかに食べに行きましょうか?」
「いいわね~、じゃあ私が考えとく」
「オッケー。それじゃあ、行ってきます」
 昭乃は涼子の頬に軽くキスをすると、仕事へと向かっていきました。
 昭乃は小さく手を振ると、玄関のドアを静かに閉めました。涼子はそのドアを暫く見つめると、大きく伸びをし、「さて、私も準備しますか」と、服を着替え始めます。
 姿見の前で服装を整え、「よしっ」と小さくガッツポーズをすると、小さなタンスの上に置かれている写真立てに視線を移します。そこには、フレビスのコスプレをした、あのときの二人が写っていました。その写真に小さく微笑むと、涼子は部屋を後にします。
 その日はとても穏やかな日で、空はとても青く澄んでいました。






終わり

 一次創作置き場

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