名劇SSブログ

世界名作劇場の二次創作SS(ショートストーリー)ブログです。※画像等の二次利用・無断転載はお断りしております。現在は「けものフレンズ」が中心となってしまいました。名劇関連は休憩中です(小説に出来そうなネタが無いです……スイマセン……)

美沙子のメシ:3





今夜もやってまいりました。ご訪問、そして拍手ありがとうございます!

それではどうぞ。






  三杯目 お正月定食


 さて、明けましておめでとうのご挨拶も今は昔。三が日もあっという間に過ぎ去って、残りの正月休みを家でダラダラと過ごしているわけですが……挨拶回りはいいのかというと、これがいいんだな~。
 地元で一人暮らしをしているし、両親は離婚してるし、お母さんの恋人は会いたくもないタイプだし……。そういえば海外に行くって言ってたっけ……。挨拶回りと言ったって離婚騒ぎで疎遠になってるし、まあいいかなと思うわけで……。
 しかし、ひとりで過ごしているのかと言えば……違うわけでありまして……。なんと、お母さんの恋人の娘さんが来ているのだった。
「ねえねえお姉ちゃん、もうこのゲームクリアしちゃった」と、ソファーでごろんと寝転がりながら、プレイギアという携帯型ゲームをやっているこの娘……きっと性格は父親似に違いない。名前は「尾崎 まゆみ」。中学二年生の冬休みを私の家で謳歌しているわけなんだけど……。
「とりあえずさ……まゆちゃん、ミニスカートでソファーにごろ寝はよくないよ?」
「どうして?」
「見えちゃってますけど……」
「いいじゃん別に、女同士だし。それにお父さんなんにも言わないよ?」
 どういう教育をしとんのじゃまったく……。
「それで、今度はどんなゲームをやりたいわけ?」
「う~ん……ゲームはもういいや、どっか遊びに行こうよ」
「遊びに行くったって……どこへよ。どこに行っても人ばっかだよ?」
「え~! つまんないっ! そうだ、大須行こうよ!」
「は~あ⁉ 大須⁉ 人混み地獄じゃないの! 死にに行くようなもんだわ」
「え~、いいじゃ~ん、けちぃ~。東京からわざわざ遊びに来てんのよ? 遊んでくれてもいいじゃない」
「まったくもう……この子は……。でも何で大須なのよ」
「大須のメイド喫茶に行ってみたいの」
 メイド喫茶⁉ そういえばそんなのもあったわね……。
「アキバのメイド喫茶には行ったことあるけど~、大須のはないの。ねえお姉ちゃ~ん、連れてってよ~」
「まったくもう……」
 でも……悪くはないか。
「じゃあ出かける準備をして? しょうがないから連れてってあげる」
「やったー!」
 こんな風に喜んでくれると、可愛いもんだわね。さて、その大須に向かうには……ウチからだとバスが最適ね。その大須に向かうバスが出ているバス停は幸いにも歩いていける距離だ。だいぶ遠いけど……。歩いて四十分とかそれぐらいになるのかな? まあ、そこまで歩けば後はバスで一直線だし、楽なもんよね。
「お姉ちゃん、準備できたよ~」
「それじゃあ行こうか」
「はーい」
「バス停まで歩くけど、いいわよね?」
「いいけど……どれぐらい歩くの?」
「三……四十分ってとこ」
「そうなの? じゃあすぐだね」
「あら……文句のひとつでも出るかと思ったけど……」
「そう? みんなそれぐらいだったら歩くよ。名古屋の人は歩かないの?」
「さあ……私も歩く方だから……。でも、この辺の人は三十分歩いてっていうとビックリするよ?」
「そうなの?」
「ええ。じゃあ行きましょうか」

 バス停まで三十分と少し、そこからバスで約一時間半……。大須に着くのは三時過ぎってところか……。まあ、メイド喫茶でお茶するには丁度いいかな? と考えてたら、バスが来た。バスの運ちゃんに「二人分ね」と言って料金を払うと、二人掛けの座席が空いていたのでそこに座る。
「ねえまゆちゃん、メイド喫茶に行った後はどうするの?」
「う~んとねえ……特に考えてない。どこかいいお店とかあるの?」
「さあ……。アキバに行けるんだったらそっちの方が良いんじゃないかしら? 大須にあるんだったら、向こうにもあるんじゃない?」
「そりゃあそうだけど……。あ、ねえねえ、甘口抹茶パスタのお店は? 大須にもあるの?」
「えぇ……何よその店。そんなもん出すお店なんか知らないわよ……」
「お姉ちゃん知らないの~? 東京でも有名だよ?」
「さあ……知らない」
 知ってたとしてもそんなもんを出すお店に興味はない。
「それが……食べたいの?」
「食べないよ~、そんな趣味ないもん。お店に行ってみたいだけ」
 まあそうだよね。
 携帯電話でその店のことを調べると、「喫茶ハイキング」という店が出てきた。大須からも地下鉄で行けるらしいことが分かったけども……。
「連れてけって言わないわよねえ?」
「今日は大須で我慢する。明日連れてってよ」
「マジか……」
 まあ、せっかく東京から来たんだし、冬休みの思い出に連れてってやるか……。来年は受験生だしね。
「来年は来れそうにない?」
「う~ん……なんで?」
「だって高校受験があるじゃない。あんた来年は受験生よ?」
「あ~……ウチそういうのないから。幼稚園に入るときにやらされたけどね、お受験とか言って。ウケる~」
 なるほど……エスカレーター式か……。まったくそんな風に見えないのがこの子の凄いところなのかな……。
 そんなこんなで、大須の近くのバス停、矢場町に着いた。ここから歩いて五分ぐらいと言うか、信号を渡ってすぐのところが大須だ。その大須のメイド喫茶までは少し歩くけど……。でも、確か三軒ぐらいあったような?
「まゆちゃんの行きたいメイド喫茶って?」
「えっとねえ、確か……エムズオルゴールっていうお店。大須が発祥で、大須にしかないの。行くとしたらここしかないよ~。ほかのお店とは違って、ちゃんとしたメイドさんが居るお店なんだよ?」
「そうなんだ……。まゆちゃんってさあ……もしかしてアキバ系?」
「アキバ系じゃないよ~。池袋によく行くから~…ブクロ系かな? ああでも、そう言うとそっち方面の誤解を受けるから、単純にオタクでいいよ」
 そっち方面の誤解ってどっち方面の誤解なのよ……。でも堂々とオタクって言うのねぇ。
 そのエムズオルゴールに辿り着くと、さっそくお店の中へと入った。へえ……凄く綺麗なお店じゃないの……と、店内を見渡していたら、メイドさんの格好をしたお姉さんがこちらにやって来て「お帰りなさいませ、ご主人様」と頭を下げるではありませんか。
「ご……ご主人様?」と驚いている私の横で、まゆちゃんは「おぉぉ……」と、同じく驚いていた。
 そりゃあそうよね~……ご主人様だもん、ビックリするわ。
「本物だ~……雑誌でしか見たことないよ~」
 えっ? そっち? そっちで驚いてたの?
 メイドさんは私達を席まで案内すると、メニューを手渡してくれた。もの凄く丁寧な接客だこと。きっと教育も厳しいのね。頑張れ若者よ……なんてね。
「お決まりになられましたら、そちらのベルでお呼びください」
 ベル! 徹底してるわね~。
「ねえまゆちゃん? 何にするか決まった?」
「ええ、ここに来る前からね」
「へえ……そうなんだ。じゃあ……ベル、鳴らす?」
「うんっ!」
 まゆちゃんが優雅にベルを鳴らすと、メイドさんがおしとやかに、且つ優雅に歩いてきた。そして、丁寧にお辞儀をし、「お呼びでしょうか、ご主人様」と優しく微笑んだ。
 うむ、苦しゅうないと言いたいところだけど……やめておこう……。
「えっとねえ、ケーキセットを、ホットの紅茶で」とまゆちゃん。私は「ホットのカフェオレと、ケーキのセットで」と注文すると、そのメイドさんは丁寧にお辞儀をし、「かしこまりました」と言うと、メニューを下げてお店の奥へと消えていった。
「凄いもんだわねえ……」と私が感心していると、まゆちゃんが「私と同じものを頼めばよかったのに」と言ってきた。
「え? なんでよ……」
「だって、紅茶にすると最初の一杯はお給仕してくれるんだよ?」
 はあ……そういうサービスもあるのね~……。
「そうなんだ……知らなかった」
「じゃあ、カフェオレを飲み終わったら紅茶を頼みなよ」
「そんなに飲めないわよ……。それよりまゆちゃん、さっき本物だって驚いてたけど……メイド喫茶には入ったことないの?」
「何回かあるけど、あそこまで丁寧にお出迎えしてくれないよ。それにねえ、メイドって言ってもミニスカートなの。どこの世界にミニスカートのメイドさんが居るのよ……。それに変な風に話すし。語尾にね、にゃんとか付けるの。ふざけてるわよまったく」
「ああそう……」
「私はねえ、メイドさんが大好きなの。ねえお姉ちゃん聞いてる?」
 私は話し半分でまゆちゃんのメイド談義を聞き流していると、そのメイドさんが銀色のカートを押してやって来た。随分と本格的なのねえ……。
 メイドさんは丁寧にお辞儀をすると、まゆちゃんにケーキセットを差し出してカップに紅茶を注いだ。あらまあ、まゆちゃんの嬉しそうな顔、凄い喜びようだわね。それに写真をバシャバシャ撮って……帰ったらお友達に自慢でもするのかしら。
 私のケーキセットもテーブルに置くと、メイドさんは「それでは、ごゆっくりお楽しみ下さい」と、これまた丁寧にお辞儀をして店の奥へと入っていった。
「えへへ~……写真撮っちゃった~。帰ったらみんなに自慢するんだ~」
「やっぱりね」
「やっぱりねって?」
「ううん、なんでもない」
「ケーキの写真も撮っとこ~っと」
 私はそんな楽しそうなまゆちゃんを見ながらケーキセットを楽しんだ。う~ん……こういうのも悪くないかな。
 エムズオルゴールでお茶した後、腕時計を見ると時間は午後の五時になろうとしていた。今から帰ると夕ご飯の時間ねえ……。あぁでも、材料を買って帰らないと……。どうしよう……。
「そういえば……この近くにスーパーがあったわね。ねえまゆちゃん、お買い物して帰ろうか?」
「え~、帰るの~?」
「夕ご飯の支度とかあるでしょう? 夕ご飯いらないって言うんなら、帰らなくてもいいわよ?」
「それは困る……。お姉ちゃんのご飯おいしいもん」
「でしょう? じゃあ、お買い物に行きましょう」
 商店街の中に入ると、暫く奥へと進み、やがてその通路に沢山の自転車が駐輪しているのが見えた。あれがそのスーパーの目印だ。
 そのスーパーは狭いけど品揃えはいいのよね~。それに安いし。買い物カゴとか足元に置いてあって邪魔だけど……これがここの雰囲気だから良いじゃないかと思うわけで……。
 で、肝心の材料はっと……エビのうま煮が安いわねえ。お正月も三が日が終わったから、もう安くなってるのね。焼き豚も安くなってる……そんでもって卵もか……。そういえば冷蔵庫に田作りが残ってたわね……よし!
「今日はお正月定食ね」
「お正月定食?」
 私は首を傾げるまゆちゃんをよそに、次々と材料をカゴに放り込んだ。そして、会計を済ませて買い物袋へと詰め替える。
「ねえねえ、お正月定食って?」
「帰ってからのお楽しみよ。それじゃあ、帰ろっか」
「うん」
 矢場町まで歩き、帰りのバスへと乗り込む。そしてバスに揺られながら私に寄りかかって眠るまゆちゃんに微笑み、その向こうの窓を眺めた。
「もうあっという間に暗くなるわねえ……」
 バス停に着く頃には夕暮れをとっくに過ぎており、空はもう真っ暗になっていた。風も冷たいし、早く帰りたいわね……と思いながら、二人で手を繋いで一緒に帰る。
 こういうのも……悪くないわね……。

 家に着くと買ってきた荷物を台所のテーブルへと置く。
「さあ、ご飯の支度やっちゃおう。まゆちゃん、先にお風呂入っておいで?」
「はーい」
 まゆちゃんがお風呂に入っている間に、夕ご飯の支度に取り掛かる。まずご飯を炊いて、田作りにはクルミを入れて、混ぜる。エビのうま煮はオーブンで焼くっと……。で、その間にお味噌汁ね。具は……簡単でいいか。増えるワカメを入れたら~、油揚げを手でちぎって~……投入。そんでもって、焼き豚を程よく刻んで、それを具にして玉子焼きを作って……と。お漬物も出しておこう。確か冷蔵庫にたくあんが……あった。これで完璧。
 それらが出来上がった頃に、まゆちゃんがお風呂から「上がったよ~」と、台所に顔を出した。
「それじゃあ、ご飯にしましょうか」
「うん!」
 まゆちゃんもテーブルに着いたところで、いざ、「いただきます!」
 真っ白いごはんにお味噌汁。焼き豚入り玉子焼きとクルミ入り田作り。エビのうま煮を焼いたものと、そしてたくあん。一汁三菜おしんこ付きの完璧な定食だ。
「エビは殻ごと、頭から食べられるからね」
 まゆちゃんは私の言葉に少し驚くと、「ホント?」と首を傾げる。そんなまゆちゃんの目の前で、私はエビを頭からバリバリと頬張った。
「殻ごといけるように、オーブンで炙ったのよ。おいしいわよ?」
「へ~……。じゃあ私も……」
 まゆちゃんはエビの目玉を取ると、私と同じように頭から頬張る。バリバリと音を立てて、もぐもぐとおいしそうに食べるまゆちゃん。私はよく食べる子が大好きだ。
「おいしいでしょう?」
「うん! 凄く香ばしくて、おいしい!」
 ふふふっ、そのおいしい笑顔、頂きました。
 出汁巻き卵とごはんを頬張って……っと。うん、安っぽい感じがとっても上出来。こういうのでいいんですよ、こういうので。田作りにクルミを入れたのは正解だったわね。クルミと、醤油とみりんで作ったタレが凄く合う。ごはんにも当然……合う。いいじゃない、お正月定食。最高。
 惜しむらくは昆布巻きか……買ってこれば良かったかな……。
「昆布巻きも欲しかったわね?」
「昆布巻き? う~ん……私はパス。昆布嫌いだもん」
「そうなの? おいしいのに……」
「ネチョっとするのが嫌なの」
「そうなんだ……」
 確かに独特の舌触りはするけど、あれがごはんに合うんだけどな~……勿体ない。
 お味噌汁は簡単なものにしておいて正解だったわね。おかずが引き立って、相性も良い。これで高級な出汁とか、お味噌とか、具材にこだわったら舌が疲れてしまう。そういった意味では、私はグルメにはなれないのかもしれないわねえ。
 そしてこのたくあん。定食にお漬物は欠かせないわよね。あって良かった。
 今日もおいしかった……ごちそうさま!
 夕ご飯も食べ終えて、デザートにアイスクリームを食べているとまゆちゃんが私に色んなことを話してくれた。
「私ね、お姉ちゃんか……お兄ちゃんが欲しいってずっと思ってたの。お父さんが……お姉ちゃんのお母さんと再婚すれば、お姉ちゃんは私の、本当のお姉ちゃんになるんだね……」
 私は複雑な心境だった。ごめんねまゆちゃん……、あなたのお父さんは……好きになれそうにないよ……。
 言っては悪いけど、四十過ぎて大学生みたいにウェ~イとかやってんだもん……。笑い方も下品で馬鹿笑いするし……、気を遣わない話し方でイラっとすることが多いし……色々と無理だわね……。
 その夜、布団で眠るまゆちゃんの可愛らしい寝顔に癒されると、私も眠りへと就いたのだった。いい夢を見てね、まゆちゃん。
 可愛い寝顔を、ごちそうさま。






次回、美沙子のメシは「激辛ソース焼きそばサンド」です。お楽しみに。

 美沙子のメシ

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