名劇SSブログ

世界名作劇場の二次創作SS(ショートストーリー)ブログです。※画像等の二次利用・無断転載はお断りしております。現在は「けものフレンズ」が中心となってしまいました。名劇関連は休憩中です(小説に出来そうなネタが無いです……スイマセン……)

美沙子のメシ:6





ご訪問、そして拍手ありがとうございます!
今回でもう六回目ですよ奥さん……早いですね~。そんな感じですが、どうぞ。






  六杯目 ベーコンカツ丼


 冬も終わり、春の穏やかな日差しが降り注ぐ三月。私は会社の事務所で、パソコンと向き合いながら、ひたすらに数字やら文字やらを入力していた。
「外はこんなに良い天気だというのに……」と、ついつい呟いてしまう。しかし、この事務所には今は私ひとりだけ……。
 ぽつん……と、ひとりで仕事をしているのには訳がある。河合さんは別の支店にお使いに行き、加藤さんは子供が病気だと言うのでお休み。私だけがこの事務所でパソコン業務をやっているというわけ。
「はあ……こういうとき、もうひとり欲しいって思うけど……いつもは必要ないのよね」
 こういうときに手伝ってくれる便利なロボットって居ないもんかしら……。
 ひと通りの入力作業も終わり、河合さんが事務所に帰ってくる頃には陽もとっぷりと暮れていた。
「さて……と、河合さん、もう帰れるわよね?」
「はい先輩」
「それじゃあ帰りましょうか」
 タイムカードを押して、電気を消して、事務所に鍵を掛けて退社。建物を出たところでバイバイ……と思ったけど。
「ねえ河合さん?」
「なんですか?」
「その……バレンタインはどうだったの?」と、今更な質問をしてみる。
「ええそりゃあもう喜んでくれました!」
「そう、それは良かった」
「先輩、その節はお世話になりました」
「いえいえ。それじゃあね、お疲れさまでした」
「は~い、お疲れさまでした~!」
 そっかそっか……うまくいってるようで何より……っと。私もさっさと帰ろう。
 春になったとはいえ、夜はまだ冷え込む日もある。今日は少し風が冷たく、上着を持ってこなかったので寒く感じた。こんな日は……揚げ物よね。あぁでもちょっと待てよ……今はウチに、あの子が来てるんだっけ……。
 そう、春休みを利用して、まゆちゃんが遊びに来ていたのだ。あの年頃の子は色々と煩いからなあ……揚げ物なんか出して大丈夫かな……。まあいいか……。
 鳴海駅にあるスーパーヤマカワに寄って、材料の調達。
 お……ベーコンが安い。卵も補充して。キャベツはまだあるから……っと、おや、手作りパン粉発見。このスーパーで作ってるのねえ……これは買っとかないと。
 あとは~……そういえば明日はお休みか……。それじゃあ、お夜食のお菓子でも調達しますか。
 買い物が終わって、午後の七時前……今日は余裕だわね。
「ただいま~」
「おかえりお姉ちゃん」
 ただいまと言って、お帰りと返ってくる声があるのはありがたいものよね……。
「まゆちゃん、お腹すいたでしょう? すぐにご飯の支度するからね~」
「は~い。私も手伝う~」
「ありがと。今日は揚げ物にしようと思うんだけど……平気?」
「うん平気だよ? なになに? どんなもの作るの?」
「えっとねえ、ベーコンでカツ丼を作ろうかと……」
「ベーコンでカツ丼! なにそれ美味しそう!」
「ふふふ~ん、絶対に美味しいから、期待してて? それじゃあ着替えてくるから、材料を台所にお願い」
「はーい」
 自室に向かい、手早く着替えを済ませ、早速ご飯の準備をする。まゆちゃんがお米を炊飯器にセットしておいてくれたので、私はベーコンカツを作るだけ。なんて楽なんでしょう。
 ふふふ~ん♪ と、鼻歌を歌いながらベーコンのパックを開けていると、まゆちゃんが私に「キャベツの千切りは、私に任せといて?」と微笑んだ。
 まゆちゃんは張り切った笑顔で包丁を扱い、慣れた手つきでキャベツひと玉を千切りにしていく。
「包丁扱うの上手ね~。こんなことなら、前の時もお願いすればよかったかな?」
「えへへ~。でもね、練習を始めたの最近なんだよ?」
「そうなの? ふ~ん……誰かに教わってるとか?」
「ううん、漫画で覚えた」
「ま……漫画で?」
「うん。私が読んでる漫画でね、お料理の漫画があるの。それを読んで、見よう見まねで覚えちゃった」
「そうなんだ……」
 へ~…最近はそういう漫画もあるのねえ。
 さて、ベーコンカツを作らないと。まずは、ベーコンに胡椒を振りながら五枚重ねて……下ごしらえ。溶き卵に少し麺つゆを入れたら、そこに重ねたベーコンをくぐらせて、パン粉を付けたら~……揚げるっと。
 千切りキャベツのソースは、例の激辛ソースに、ケチャップを混ぜて……っと、これでソースはバッチリね。
 で、ここからが私流のカツ丼の作り方。溶き卵の余ったやつを、少しの油を引いたフライパンでさっと、片面だけ焼く。半熟の部分が残ってるのが丁度良い。それをごはんの上に乗せて、その上から、食べやすい大きさに切ったベーコンカツを乗せれば、私特製ベーコンカツ丼の出来上がり。千切りキャベツに特製ソースをかけて、召し上がれ。
「いただきます!」という声が重なり、夕食の時間が始まった。
 ではまず、出来立て熱々のベーコンカツから。はむっ。ザクザク……ザクザク……。うん! 美味しい! 味付けもバッチリだわね。ソースがなくても充分に味が付いてる。これはごはんが進みますな。あら? まゆちゃんがカツにソースをかけようとしてるわね……。
「待ってまゆちゃん。そのカツはソースなしでも食べられるから、かけないで食べてみて?」
「そうなの? それじゃあ……あむっ、もぐもぐ……。ホントだ! 美味しい!」
「でしょう?」
 ふふふっ、おいしい笑顔、頂きました。
 しかしこのベーコン……本当に美味しいわね。大当たりかも。胡椒も少し効かせておいたから、下の卵ともよく合う。私って実は、料理の天才だったりして? なんて。
 さて、千切りキャベツに手を出しますか。う~ん……まゆちゃんの包丁さばきも大したもんね、綺麗に切り揃えてある。そのキャベツに、特製ソースをたっぷりかけて、思いっきり頬張る。
 うん! やっぱりキャベツにもこのソースだわね……と、私が自己満足に浸っていると、「辛い!」というまゆちゃんの声が飛んできた。
「辛いよお姉ちゃん!」
「ええ? 辛い?」
「このソースっ。もう……すっごく辛い~!」
「あぁ……まゆちゃん、辛いの駄目だった?」
「別に駄目じゃないけど~……これは辛すぎるよ~。普通のソースはないの?」
「普通のソースねえ……」
 はて、普通のソースなんてあったかな……?
「ちょっと棚を見てくるわね?」
 私は急いで棚を漁りに行った。やっぱりないわね……。買ったきたそばから唐辛子入れちゃうもんな~……どうしましょ。
 ダメ元で冷蔵庫を漁ると、小物ケースの中に、何かのお弁当に付いてきたソースがあった。たぶん足らないと思うけど……無いよりはマシか。賞味期限は大丈夫ね。
「ソースあったけど……これで足りるかな」
「ありがとうお姉ちゃん。よくこんな辛いの平気で食べれるね?」
「辛いの好きだからねえ。でも、辛いのダメだなんて知らなかった」
「辛すぎるんだってば~。でも、慣れると美味しいかもしれない。じゃあこのソースと……辛いソースを一緒にかけてっと……」
 まゆちゃんは両方のソースで千切りキャベツを食べ始めた。でもやはり辛いのか、ちょっと辛そうにしながら食べてる。
 でも、次第に慣れてきたらしく、私の激辛ソースをかけて食べ始めたのだった。
「お姉ちゃん、このソース美味しいね?」
「そう? ありがと♪」
 あっという間に山盛りのキャベツを食べ切ったわね。
「このソース、どこで売ってるの? お土産に買って帰りたいんだけど」
「これは売ってないの。私が作ったから」
「お姉ちゃんが⁉ すご~い! ソースも作れるんだ~!」
「ふふっ。買ってきたソースに、一味唐辛子を入れてるだけよ」
「そうなの? でも思いつくだけでも凄いよ」
「そ……そうかな」
 やばい……こんな風に褒められたことがないから、どんな反応すればいいのか分かんないや……。
「さあ、食べよ食べよ?」
 私はどんぶりに視線を向け、ごはんをひたすらかき込むことに専念した。ベーコンカツと卵、そしてごはんの相性はバツグン。これで汁物があれば完璧な定食じゃないの。しまったな~……お味噌汁も作ればよかった。
 今日も綺麗に完食して、「ごちそうさまでした」と、二人一緒に手を合わせて微笑みあう食卓。たまにはいいかな?

 まゆちゃんと一緒に後片付けをして、食後のコーヒーを楽しむ。まゆちゃんは相変わらずソファーに寝転がってゲーム……か。家でもこんな風なのかしら?
「ねえまゆちゃん、家でもそんな風なの?」
「ええ? なんで?」
「なんでって……お父さんとか、何も言わないの?」
「言わないよ?」
「そうなんだ……。みっともないよ?」
「そう?」
「そう……って、人の家でそういうことしないの。ほら、ちゃんと座って。スカートもちゃんとして」
「も~……うるさいな~。お母さんみたいなこと言わないでよ~」
「お母さんって……あのねえ……。全くもう、困った子だこと」
「えへへ~。でも、お姉ちゃんがお母さんだったら良かったんだけどね?」
「冗談でしょう」
「今だけ娘になってもいいのよ?」
「バカ言わないで。まったく……あんたが娘だったら、いったい幾つの時の娘なのよ」
「えっとねえ……私が今年で十五だから~……、お姉ちゃんいくつ?」
「今年で三十六よ……」
「じゃあ~……二十一んときの子だ」
「そんな若いときに子供なんて……冗談じゃないわ?」
「え~、いいじゃ~ん。私が娘なのよ? 何か不満でもあるわけ?」
「そういうことじゃなくて……もう……」
「ふふふ~ん。お母さんも幸せだったのかな……私が娘で」
「まゆちゃん……」
 この子の母親は……離婚して、今は故郷の北海道で暮らしてるんだっけ……。
「幸せだったと思うよ? まゆちゃんいい子だもん」
「そっか……えへへ」
 まったくこの子は……この笑顔にはかなわないわね。さて私はっと、イラストでも描きましょうかね。
「ねえお姉ちゃん、今日も何か描くの?」
「ええ、描くの。だから邪魔しないでね?」
「描いてるとこ見てていい?」
「いいわよ?」
「じゃ~あ~……アレ描いてよ、あのキャラ」
「え~? リクエストか~……まあいいけど」
 こんな夜更かしも……悪くはないかな?
 今日も、楽しい時間を、ごちそうさま。






 次回「美沙子のメシ」は、「お家で焼き肉・前編」です。楽しみに。

 美沙子のメシ

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