名劇SSブログ

世界名作劇場の二次創作SS(ショートストーリー)ブログです。※画像等の二次利用・無断転載はお断りしております。現在は「けものフレンズ」が中心となってしまいました。名劇関連は休憩中です(小説に出来そうなネタが無いです……スイマセン……)

美沙子のメシ:12





今回で最終回です。続編も考えていたのですが……美沙子さんがお仕事を辞めてタイかベトナムを渡り歩くという……そんな感じのやつ……。でもねえ……っていう、ね。ちょっと思うことがありイラストの方を集中してやっていきます。絵本の修行にもなりますし……という感じで、最終回、どうぞ。






  十二杯目 見送りのおむすび弁当


 ゴールデンウィークもあと二日となった今日、まゆちゃんと私は家でゆっくりと過ごしていた。ここ数日、二人で一緒に科学館へ行ったり美術館へ行ったり、博物館や動物園に行ったりと随分と遊びまわった。後半の二日ぐらいはゆっくりとしようってことで、家でのんびりと過ごしているのだ。イラストも仕上げちゃわないとね。
 自室でラジオを流しながらイラストの作業を進める。まゆちゃんはというと、居間で色んなアニメを観て過ごしている。最近のお気に入りは「とんでブーヤン」という、豚の姿をした魔法使いに変身する女の子が主人公のアニメ。もう二十年以上も前のアニメなんだけど、これが妙に気に入ったらしく、時間さえあれば観ているという状況。
 いや……私も好きな方なんだけど、あそこまでガッツリとハマられると、なんだか気が引けちゃうわね。
「さて、私は私で仕上げちゃいますか」
 あとは水彩で色付けするだけ。水彩色鉛筆の先に、水筆という道具の筆先をちょいちょいと付けながら……色を付けていく。
 芯を削って水で溶いてもいいんだけど……この方が後始末をしなくて済むので、私はこうやっている。
 赤系と青系、それから黒系と、三本の水筆を使いながら線画に色を付けていく。本当は筆先の色が混ざらないように、もっと細かく使い分けた方が良いのだけど……。
 理由は、水筆が高いのと、赤と青と黒……という分け方で使っていれば、色付けしたときに意図しない色になったりしないという、そんな感じかしらね。
 人物に色付けして……さて背景の色をどうしようかと悩んでいると、ドアをノックする音が聞こえた。
「はーい」
「お姉ちゃん、お昼どうする?」
「うん? もうそんな時間?」
「うん。もうすぐ一時だよ?」
「あら……早いもんだわねえ。そうねえ……何か簡単なものでも作りましょうか?」
「うん! 何を作るの?」
「う~ん……台所を見てみないとね」
 一旦イラストの作業を中断し、台所へと向かう。しかし、特にこれといって何もなく、買い物に出かけるしかなかった。買い物から帰ってきたらすぐに食べられるように、炊飯器をセットしておく……っと。
「さあ、買い物に出かけましょう」
 まゆちゃんと二人で、鳴海駅にあるスーパーヤマカワへと向かい、総菜売り場を色々と眺めていく。
 とんかつ……やきとり……酢豚。う~ん……どれもピンとこないわねえ。取り敢えず、卵をカゴに入れて……っと。
「お姉ちゃん卵が好きなんだねえ?」
「ええ。卵がなきゃ始まらないからね」
「そうなの?」
「白いごはんと、玉子焼きとかね。目玉焼きもいいわね~。それからねえ、卵は目にも良いのよ。イラストを描いてる人に教えてもらったの」
「へ~……そうなんだ。でもいいな~そういうの」
「うん? なにが?」
「家じゃ誰も作ってくれないもの……」
「あぁ……」
 そうだった……まゆちゃんはいつもコンビニのものか、お店のものしか食べたことがなかったんだっけ……。
 お母さんは全くと言っていいほど、料理ができなかった。私のときも、スーパーの惣菜とか……そんなのばっかだったっけ……。
「よし……それじゃあ、お昼は玉子料理のフルコースといきましょうか!」
「玉子料理のフルコース?」
 卵を二パック買い物カゴに入れ、揚げ玉と乾燥桜エビもカゴに放り込む。
「きざみ海苔もいるわね」と、それもカゴに放り込んだ。
「それからあとは~」と考えるも、玉子料理のフルコースって言ってもそんなに知ってるわけでもなく……。紅茶やらコーヒーやら、お菓子やらを買い込んで帰宅することにした。
 自宅に着き、台所に入って料理の準備に取りかかる。まゆちゃんも手伝ってくれて、この分だと思ったよりも早く、お昼を食べられそう。
 私が作ったのは桜エビの出汁巻き玉子。まゆちゃんはゆで卵と温泉玉子を作り、それぞれを台所のテーブルで食べながら、次の料理に取りかかる。
 二人分のオムレツを作り、まゆちゃんがそれを見学。「やってみる?」という私の言葉に笑顔で頷き、フライパンをまゆちゃんに託した。
 手取り足取り教え、出来上がったのはスクランブルエッグなのかオムレツなのか、なんだか分からないものがお皿に乗った。
「失敗しちゃった……」と、悲しそうな表情を見せるまゆちゃん。でも一生懸命に作ってくれたんだからと、私はそれを笑顔で頬張る。
「お姉ちゃんっ、それ私が食べるから!」
「いいからいいから。あむっ……もぐもぐ。うん! 美味しいじゃないこのオムレツ!」
「ホント?」
「うん」
 私の笑顔に微笑んでくれるまゆちゃん。なんでこんな可愛い子を放っておけるのかしらと、私の母親の顔を思い出す……。私も……あまり構ってもらえなかったわね……。一緒に出かけたりとか、そういうことは殆どしなかった。貧乏だったとか、そういうことはなかったんだけど……一緒に居る時間は無かったと言っても過言じゃない……。
「どうしたの……お姉ちゃん?」
「うん? ううん、なんでもない。それじゃあ、最後の料理を作りましょうか」
 最後は白いごはんと一緒に食べたいわねと、思い付いたのがほかでもない……母親が作った玉子焼きだった。料理が下手でも、これだけは作ってくれたお母さん……。これがお弁当に入る日がすごく楽しみで仕方がなかった。そんなことを思い出しながら、まゆちゃんのために玉子焼きを作る。
 卵をよく溶いて、そこに醤油を入れて、ほんの少しお砂糖を入れる。それをよく混ぜて、玉子焼き用のフライパンで焼いていく。砂糖が入って甘くなったおかげか……なのかは分からないけど、表面が程よく焦げて、これが実に美味しそうなのよね。
 その中に、揚げ玉ときざみ海苔を入れて、巻いていく。焼き上がったらお皿の上に乗せて、完成。これが実にごはんと合うのよ。
「さあ、食べてみて?」
 まゆちゃんにごはんをよそってあげて、一緒に手を合わせて「いただきます!」と玉子焼きを頬張る。
「もぐもぐ……。どうまゆちゃん、美味しい?」
「もぐもぐ……うん! 美味しい! すっっごく美味しいよお姉ちゃん!」
「そう、良かった」
 確かに、凄く美味しく出来たわね。中心が程よく半熟で、揚げ玉もほんのりとカリカリとした歯ごたえ。きざみ海苔が凄く良い感じ。これはごはんが進む。本当は揚げ玉入りの玉子丼をと……思ったのだけれど。
 この玉子焼き……いつも私のお弁当の主役だった。ごはんと、この玉子焼きだけ。小学校のお弁当の日とか、遠足とか、凄く楽しみだった。この玉子焼きだけでお弁当が食べれるんだもの……幸せしかなかった。
 おかずが玉子焼きしかないって、笑われた日も少なくはなかったけれど、私はこれだけで満足だったのよね……。でも、そんな日も長くは続かなかったわけで……って、いかんいかん、こんなことを考えててはせっかくの食事がマズくなってしまう。
 あっという間にお皿の玉子焼きは無くなり、食事も終わった。後片付けを一緒にして、あとは夕食までの時間をそれぞれで過ごす。
 イラストの仕上げをしなくてはと、部屋に戻って作業の続きをする。そんなとき、まゆちゃんが部屋に入ってきた。
「あら……どうしたの?」
「うん……観たいもの観ちゃったからさ、一緒に居ていいかな……」
「ええ、いいわよ?」
「えへへ」
 まゆちゃんは私の傍まで来ると、イラストの作業をじっと見ていた。
「凄いね~……やっぱり上手だな~。プロになればいいのに~」
「そんなに甘くないわよ……。でも、小説の挿絵なら描いたことがあるわよ?」
「ホント⁉ ねえねえ、どんなやつなの?」
「う~ん……っとねえ」と、引き出しの中からその小説を取り出す。
 同人活動をしている方が私のイラストをピクぞうで見て、メッセージを送って下さったのだ。表紙の絵と挿絵を私が担当し、文章はその方が書いて下さった。その本をまゆちゃんに渡すと、「どうフレの本だ~!」と笑顔を見せる。
 いいのかしら……こんな純粋な子を同人誌の世界に引き込んで……。しかし、そんな心配とは裏腹に、まゆちゃんはとても楽しんでくれた様子。良かった良かった。
 ホッとしたのも束の間、まゆちゃんは壁を背もたれにしてぺたんと座ると、おもむろに話し始めた。
「ねえおねえちゃん……、私ね……嘘をついてたんだ……」
「え? 嘘って……なあに?」
「うん……。高校に上がって寮に入るって言ったでしょう? あれ……嘘なんだ」
「まゆちゃん……?」
「ホントはね……お母さんが居る北海道に引っ越そうって思ったの」
「そんな……嘘でしょう?」
 正直、そっちの方が嘘だと信じたい……けども、まゆちゃんの表情が嘘を言ってなかった。
「ずっと考えてたの……。お父さんもあんな調子だし、おばさんも……あんまり構ってくれないし。寮に入るって言ったときね、お父さんもおばさんも、ホッとしたような感じだった。だから私……受けようと思ったの、北海道の高校の受験……」
「そうなの……」
 まゆちゃんには申し訳ない気持ちでいっぱいだった。お母さんも私のこと……あんまり構ってくれなかったわね。それに離婚するとき、つい口から出てしまったのだろう……「これで清々したわ」という言葉が、私の前で言い放たれたのだ。身内でもこれだもの……他人の子ならもっと冷たいわよね……。
「だから私……お母さんに手紙を送ったの。住所だけは聞いておいたから。そしたらね、飛行機のチケットを送ってくれるって返事が来たの」
「そうなの?」
「うん。写真もその手紙に入ってて、お母さんねえ……お爺ちゃんとお婆ちゃんの牧場を手伝ってるんだって? その写真を見たとき決心したの、北海道に行こうって」
「そうだったんだ……」
「それで……お姉ちゃんと離ればなれになっちゃうから、寂しいなって思って」
「それで私にイラストを……」
「うん……。ごめんねお姉ちゃん……」
 そっか……今よりずっと幸せに暮らせるのなら、応援しないとね。
「ううん、行っておいで……まゆちゃん。それでまゆちゃんが幸せになるんだったら、私は応援するわ?」
「お姉ちゃん……お姉ちゃん!」
 まゆちゃんは私に抱き着くと、精一杯の声を上げて涙を流した。まゆちゃんの背中を撫で、慰めてやる。ベッドに座り、気が済むまで私の隣で泣かせてあげた。
 その日の夕食は前祝いも兼ねて、凄く奮発した。いつもだったら絶対に行かない高級スーパーまでクルマを走らせ、いつもだったら絶対に買わない国産の高級牛肉を買い、高級なジュースも買う。
 そのお肉ですき焼きをして、ジュースで乾杯。まゆちゃんの新しい人生の始まりを精一杯に祝った。
 そして、ゴールデンウィーク最後の日。まゆちゃんを見送りに新幹線の乗り場まで見送りに行った。
「ごめんねお姉ちゃん……こんなところまで見送りに来てもらって」
「ううん、いいのよ。それよりまゆちゃん、受験……頑張りなよ? 応援してるからね?」
「うん! 頑張る!」
「よし、その意気よ、まゆちゃん!」
 私はまゆちゃんに微笑むと、トートバッグからお弁当を取り出し、それをまゆちゃんに渡した。
「これは?」
「揚げ玉入りの玉子焼きと、おむすびのお弁当。おむすびには桜エビを入れておいたから、きっと美味しいわよ?」
「ありがとうお姉ちゃん!」
 まゆちゃんを抱き締め、背中をポンポンと叩いてやる。やがて発車のベルが鳴り響き、まゆちゃんは新幹線へと乗り込んでいった。
 座席の窓から顔を覗かせて、精一杯の笑顔で手を振るまゆちゃん。私もそれに応え、笑顔で手を振った。
 やがて新幹線はゆっくりと走り出し、それが見えなくなるまで見送ると、大きく溜め息を吐いた。
「さてと、私も帰りますか。その前に……お腹が減ったわね……。何か買っていきますか……」
 人間、どんなときも腹が減る。そういえば……デパ地下ってあんまり行ったことないわね。ああでも人混み嫌いだしな……。でも、こんな時でないと一生行かないと思う。
 今日は私も、新たな一歩を踏み出そう。






これにてこの物語は終わりです。今までお読み下さり、誠にありがとうございました。小説の次回作はいつになるか分かりませんが、イラストの更新をほぼ毎日行っていきますので、そちらの方も宜しくお願い致します。
それでは、また宜しくお願い致します。

 美沙子のメシ

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