名劇SSブログ

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月刊Stella 5周年記念企画 参加作品:ねこねこ森の物語・前編





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月刊Stella 5周年記念企画、参加作品

初参加です、宜しくお願い申し上げます

それでは、どうぞ :)






- ねこねこ森の物語 -




カランカラン カランカラン

ここはラグドール村という場所にある、少し古くて、少し小さい小学校、その学校の鐘の音が鳴り響くと、校舎から一斉に子供たちが出てきました、親の手伝いに行く子供、習い事に行く子供、それぞれがその場所へと向かいました、少し遅れて校舎から出てきた子供が三人、男の子と女の子二人が仲良く歩いてきます

「もうっ、お兄ちゃんってばノロノロと、日直の仕事なんてパパッとやっちゃえばいいのに」

銀色の髪をショートにした元気な女の子が、男の子に口をとがらせます

「ごめんよ…僕どんくさいから…、でもさ、ちゃんとやらないと先生に怒られる…」

同じく銀色の髪をした男の子が、少し長めの髪を揺らしてその女の子に申し訳なさそうに話しました

「いいじゃない、しっかりしたお兄さんで、わたし羨ましい」

もうひとりの女の子が、長く美しい黒髪を揺らしてその二人に話します

「アイちゃんはひとりっ子だからね~、でもこんなお兄ちゃんのどこがいいんだか、わたしには分からないわ?」

「そんなこと…、ユウくんはとても良いお兄さんじゃない、わたしはマナミがうらやましいわ?」

呆れる妹のマナミ、羨ましがる幼馴染のアイ、そして、その二人のあいだで照れる兄のユウタ、この物語は、ラグドール村という小さな村で本当にあった、少し不思議な運命の物語




学校の帰り道、先を歩いていたマナミは二人に振り向くと、笑顔で「わたし野イチゴ摘みに行きたい!」と、満面の笑顔で言いました

「今からかい?遅くなってしまうよ?」

心配する兄をよそに、行く気満々の女の子が二人、仕方ないという微笑みを浮かべるとユウタは二人を連れて野イチゴが採れる森、ねこねこ森へと向かいました

「あまり遠くへ行くんじゃないよ?、この辺は魔物が出るから、まだ明るいからいいけどね」

その言葉に「はーい」と返事をする二人、ユウタもいつしか野イチゴ摘みに夢中になり、辺りが薄暗くなっていることに気付きませんでした

「しまった…もう暗くなり始めている、二人ともどこに…おーい!」

大声で呼びかけるユウタ、しかし返事はなく、ユウタの声だけが森に消えていきました

「どうしよう…僕たちは両親が居ないからいいけど…、アイちゃんが怒られてしまう…」

必死になって呼びかけるユウタ、やがて小さく返事が聞こえてきました、その声に向かって懸命に走ります

「アイちゃん!」「ユウくん!」と抱き合う二人、ユウタはマナミが居ないことに気付き、心配しました

「アイちゃん?…マナミは?」

「それが…向こうの方に行っちゃって…、わたし止めたのよ!?」

「そんな…!、向こうは森の奥だ、魔物が住んでる地域だよ!」

「そ…そんな!…マナミ!!」

二人は懸命にマナミを探しました、奥へと入っていくユウタとアイ、呼びかけながら歩いていくと、やがて草の陰から聞き覚えのある声がしました

「はーい!わたしはここよ!」

ユウタは駆け寄ると「マナミ!」と彼女を抱きしめました、アイもそんな二人を抱きしめ、二人で瞳を潤ませながら無事を確認しました

「もう!心配させるんじゃないの!、僕はもう…心配で心配で…」

「ごめんお兄ちゃん…アイちゃんもごめんね?、心配させたよね?」

「もうっ!マナミなんて知らないんだから!…ぐすっ、よかったよぉ…うえぇぇん…」

学校のカバンに目一杯の野イチゴを摘んで、森から出ようとしたところ、カサカサっと足元から音がしました

「なんだろうね?お兄ちゃん……ひっ!?」

マナミが恐怖に引きつった表情を見せました、ユウタはすかさず二人を庇います

そう、魔物が現れたのです

「こいつは…どうしよう…、小さくてもとんでもない魔物なんだ…」

ユウタが身構えた相手は、20センチぐらいの小柄な植物の魔物でした、村ではドクギリンと呼ばれています、その魔物は野イチゴを食料とし、つるには鋭いトゲがありました、そのトゲには猛毒があり、引っかくと同時に毒を注入し、しかも種を植え付けるのです

それはそれは、とても恐ろしい魔物でした

ユウタは慎重に後ろへ下がると、二人を庇うようにして距離をとります

しかし、ドクギリンのつるがマナミに向かって飛んできました、それを庇うユウタ、左足をつるが捉え、ユウタを引きずっていきます、トゲが食い込み、痛みに叫ぶユウタ、マナミが木に登って枝を折ると、そのつるに向かって渾身の力で振り下ろしました、ドクギリンのつるは千切れたものの、まだ襲いかかってきます、ユウタはマナミから木の枝を受け取ると、ダメージを負ったドクギリンに立ち向かい、ボロボロになりながらも撃退しました

「お兄ちゃん!…お兄ちゃん!!」「ユウくん!大丈夫!?ユウくん!!」

「……が…っこうへ…近いから…し…らせ…」

マナミは力強く頷くと、全力で走りました、辺りはすでに暗く、真っ暗闇の中を懸命に手足を振り抜いて走るマナミ

アイはユウタの体を支えながら森の出口を目指します、やがて一本道に出たところで、マナミが学校の女の先生を連れて走ってきました

先生は村のお医者さんにユウタを診せます、しかし…「もう…手の施しようがない…済まない…」という、絶望的な言葉が、マナミとアイの心を通り過ぎていきました

一応の手当てを受け、薬草を煎じた毒消しの薬を処方されたユウタは、先生に連れられて家に戻ってきました

「それじゃあ…先生はアイちゃんを送っていくからね?また来るからね?」

その言葉が届いたのかは分かりません、マナミは小さく頷くと、野イチゴをカバンから出して、もそもそと食べていました

「お兄ちゃんも食べなよ…美味しいよ?」

「…ぁぁ……」

ぽろぽろと口からこぼれる野イチゴ、マナミの瞳からも、声にならない叫びが、頬を伝ってこぼれていました



それから数日後、懸命の看病で話せるまでに回復したユウタは、療養している自室でマナミから学校での話しを聞いていました

「…それからね?アイちゃんったら給食のプリンを二つも食べたの、もう食いしん坊なのよね?」

「誰がよ!」と部屋の向こうから声が飛んできました

「プリンを二つも食べたのってマナミじゃなかったかしら?、わたしはちゃんとユウくんに持ってきてあげたのに」と、アイはそのプリンを運んでくると「はいっ、ユウくん、あーんして?」と微笑みました

「ずるい!マナミがやるの!」

「はは…もう二人とも、やめてよ…、自分で食べれるから…」

僅かに動く左腕でスプーンを持とうとするも、その手から滑り落ちてしまいます

「……っ!」

声にならない悔しさがユウタの心を傷つけていきます、マナミはスプーンを拾うと少し哀しい表情をして「新しいの持ってくるね」と、台所へと向かいました

「ユウくん…食べさせてあげるね?」アイが微笑みかけるも、ただ黙って首を横に振るだけでした



よく晴れた朝のこと、包帯を取るためにユウタを車いすに乗せ村の診療所へと連れていくマナミ、アイも付き添っていきました、傷の様子を見て、一番重症だった左足を除き、全ての包帯が取られました

先生の話しを聞いたマナミは、ユウタが待つ病室へと戻ります、アイがユウタの話し相手になり、「包帯が取れてよかったね♪」と話していました、マナミの姿に気付き、アイが笑顔を見せます

「どうだった?先生の話し、ユウくんもう治るって?」

「アイちゃん…」

肩を震わせて涙を流すマナミ、アイはその運命を受け入れることができず、首を横に振りながら、その場にへたり込んでしまいました

「種が発芽するまで…どれぐらいなの?…マナミ…」

その声にハッとするマナミ、アイは顔を伏せ、声を殺して泣いていました

マナミは辛い事実を、重苦しく言葉にします…

「そうか……あと一週間…か…」

それを聞いたユウタは噛み締めるようにして言葉にすると、マナミに優しい笑顔を向け、優しく話しかけました

「マナミ、お祭りに行こうよ、そう…あと一週間なら、ねこ神様のお祭り、ねこ祭りに間に合うじゃないか、あさって…だよね、行こうよ…三人で、ね?」

「お兄ちゃん…、な…なにバカなこと言ってんの!?、そんな体で出歩けるの!?、ねえ…お祭りなんかより一生懸命に体を治そうよ、もう傷だって治ってる!もう少しじゃない!」

「マナミ…、僕だって出来れば治りたいよ…でもね?、知ってるだろ?ねこ神様のパレード、伝承によるとそのパレードを見た者は願いが叶うって…、お祭りの夜、天の星に向かって走るパレード…僕は見たいんだ…、ね?…お願いだから連れてってくれるかい…マナミ…」

マナミを探して手を伸ばすユウタ、彼の手を優しく握るアイ、彼女は優しくユウタに微笑みました

「アイ…ちゃん?」

「行きましょう、お祭り、そして…パレードも、絶対見れるよ!、大丈夫…ユウくん、私たちが居るよ?、だから心配しないで、安心してお祭りの日が来るのを待ってて?」

「アイちゃん…うん、僕待ってる…」

僅かな光を感じ取り、一生懸命にアイの微笑みを感じ取ろうと、その瞳を見開くユウタ、マナミもユウタの手を取り、一生懸命に微笑んだのです

そう…ユウタの目はほとんど見えていなかったのです…

家に帰ると、時間はお昼前になっていました、激しい頭痛と吐き気に声を荒げるユウタ、薬でなんとか眠ってもらい、今後どうするかをマナミとアイとで相談しました

縁側で日差しを浴びて話すマナミとアイ、その元気な太陽とは裏腹に二人の表情は曇っていました

「ねえ…アイちゃん、ねこ神様のパレード…なんて本当に見れるの?」

「絶対じゃないけど…見れると思う、ウチのお爺ちゃんがね?子供の頃にお爺さんから聞いたんだって?」

「アイちゃんのお爺さんって…あのモグラじいさん?」

アイのお爺さんは村で評判の元炭鉱夫で、むかし話しを沢山知っていました、誰が最初にそう呼んだのかは分かりませんが、モグラじいさんと呼ばれて子供たちに人気だったのです

「そう、ウチにおいでよ、ユウくん…眠ってるから、朝まで起きないんでしょ?」

「たぶんね?……でも心配ね…起きたら寂しいと思う…」

「そうねぇ…そしたら呼んできてあげる、ちょっと待ってて?」

アイは縁側から駆け出して自宅を目指しました


「遅いなぁ…何してんだろ…」と足をぶらぶらしながら待っていると、庭の向こうから「マナミ!」と呼ぶ声がします、アイがお爺さんを連れてきたのです、そして、もうひとり、お客さんが見えました

「塀のところでウロウロしてるから、捕まえてきたの、さあ、早くこっちいらっしゃい」

「えへへ…どうも」と顔をひょっこり出す男の子がひとり

「マイトくん!」と声を上げるマナミ、この少年はクラスメートで、マナミと仲が良い少年、塀から庭を覗いていたところをアイに見つかり、連れてこられたのでした

「やあ…マナちゃん…、ユウの具合どう?……もう傷は治ったの?」

「その…まだ治ってないの、でも、パレードを見れば治るわ?あんたも手伝うんでしょ?」

「ああ…そのつもりだよ、でもどうするんだよ…パレードったってそうそう見れるもんでもないんでしょう?」

「それを今からモグラじいさんに聞くんじゃない、ねえ?」

うんうんと頷くアイ、モグラじいさんは縁側に「どっこいせ」と座ると、コホンとひとつ、むかし話しを始めました、そのお爺さんの話しでは、むかしのむかし、何百年も前の大むかしに、アマノガワと呼ばれる川沿いでそのパレードを見たという人たちが居ました、その人たちは川沿いを神聖な場所とし、ねこねこ森を挟んで、その川沿いを守るために集落を形成しました、その人たちは自分たちの種族の名を集落に残し、時代が流れるにつれて何処かへと消え去っていったのです

「それがこの、ラグドール村じゃ」

「へ~」という声が重なる縁側、皆はお爺さんが持ってきた水あめやソースせんべい、梅ジャムを楽しみながら聞き入っています

「聞き入ってる場合じゃないわ!」とソースせんべいをバリっと頬張るアイ、マナミは梅ジャムをひと飲みすると「そうね!その川って森の中にあるの?」と捲し立てます

「ああ、ホレ、ねこねこ森の向こう、そこに流れる川がアマノガワじゃて、さてどうするかのぉ…森には魔物が住んでおるでの…」

「ボートを使って川を溯ればいいんじゃない?」と、水あめをひたすら練っているマイトが言いました

「それだ!!」と三人の声が重なります



人の気配がまったくない、村外れにある寂れたボート置き場に行くと、ボートがひとつだけ岸にありました、しかし…

「だめじゃ…これじゃ使えんわい」

モグラじいさんが底に空いた穴や、ひび割れた船体を見て首を振ります

「直さんと無理じゃな…」

「それじゃあ直しましょうよ!」と声を張るマナミ、「そうね!あさってまでに直しましょう!」とアイも張り切る、そして「できた!」と真っ白になった水あめを見て喜ぶマイト

「あ……ごめん」


ボートの修理はその日から始まりました、材料は拾ってきた板切れや捨ててあった木箱を利用しました、皆は力を合わせて一生懸命にボートを直します、しかし陽も傾き始め、長く地面に落ちた影が時間切れを告げました

「さあ、もうみんな帰る時間じゃぞ?」とモグラじいさんが言いました、夕焼けの中、それぞれの家に帰る子供たち、マイトと途中の道でサヨナラし、モグラじいさんに手を引かれて帰る少女が二人、「それじゃあね」と手を振るアイに笑顔でバイバイすると、マナミは自分の家へと駆けていきました

「ただいまー…」

声が響く木造の古い家、薄暗い家に蛍光灯の明かりがパッと輝くと、マナミは少しホッとしました

「お兄ちゃん…ただいま…」声をそっとかけるマナミ、少し暗い、その部屋の向こうから囁くように「おかえり」と声が届きました

「起きてたのね…よく眠れた?」

「うん…ごめんよ?、……僕…」

「そんなこと気にしないでよ、辛いんだもん…明かりつけるわね?」

マナミは部屋の明かりをつけようとスイッチに手を伸ばします、しかし

「だめだよ…つけないで…」

「どうして?暗いじゃない、部屋が暗いままだと気分まで暗くなっちゃう、つけるわよ?」

部屋にパッと明かりがつきました、マナミに瞳にユウタの悲しそうな表情が飛び込んできます

「どうしたのよ…お兄ちゃん?」

「……見てよ…これ…」

ユウタは左足をマナミに見せました、傷口は青黒く変色しており、血管が浮き出ていたのです

「……痛くないんだ…でも…歩けない…」

「お兄ちゃん…」マナミはユウタを抱きしめると「大丈夫!きっと治る!、私たちね?ボートを直してるの、そのボートで、ねこ神様のパレードを見に行きましょうよ!」

「見れる…の?…パレード…」

力強く頷くマナミ、ユウタはマナミの頬に手を当てて表情を読み取ると笑顔を見せました

そして次の日、ユウタを診療所に預けると学校へと向かい、それが終わるとボートの修理に精を出しました、トントンカンカン、みんなは一生懸命にボートを直します

「クラスのみんな…話さなくなっちゃったわね…」

マナミが寂しそうに呟きます、それを聞いたマイトは悔しそうに話しました

「ひどいよみんな…、毒がうつるからって親に止められてるんだってさ…」

マナミは悲しそうに頷きます、アイも言葉を投げかけようとしましたが、言葉を飲み込みました、どんな風に声をかけていいのか分からなかったのです

「さあさあ、お前さんたち、日が暮れてしまうぞい、落ち込んでる暇があったら手を動かす」

モグラじいさんの声に力強く頷くと、マナミたちは作業を進めました、そして、陽が沈みかかった頃、とうとうボートが完成したのです、手を取り合って喜ぶ子供たち、マナミはユウタを迎えに行くとボートが直ったことを話します

「そうなんだ!…良かったね、みんな頑張ったんだね…ありがとう…」

「なに言ってんのよお兄ちゃん、私たちもパレードが見たくてウズウズしてるんだから!ねっ?アイちゃん、マイトくん」

「そうだよ!僕たちだって楽しみにしてるんだ!、それに凄い冒険だぞ~!、川を溯って聖地に行くんだ、今から楽しみだな~、ワクワクするね!」

アイはそんなマイトにクスクスと笑うと、「それじゃあお弁当も用意しなくてはね」とニッコリ微笑みました、皆が笑顔で歩いていると、遠くから太鼓の音が流れてきました

「練習してるんだ…楽しそうだなぁ…」

ユウタはその音に耳を傾けます

「お兄ちゃん太鼓が得意だったもんね?、でも、明日は朝早くからもっと楽しいことが待ってるから、寝坊せずにちゃんと起きるのよ?分かった?お兄ちゃん」

「分かったよぉ…僕そんなネボスケじゃないよ…」

笑顔が夕焼けで染まり、それぞれの家に戻る友達、それを見送りながらマナミはユウタの車いすを押して、家へと帰っていきました

「ねえお兄ちゃん?」

「うん?どうしたの…」

「パレード…見れるかな…」

「見れるさ…きっと…」

「うん…」






後編へ…

 一次創作置き場

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